第一章 高校バスケット部、入部 一 入学式

 誰かがこちらに来るのが横目に見えた。


 洋は振り向いた。


 彼はTシャツに短パンという姿で、靴は紛れもなくバスケットシューズを履いていた。


「ひょっとして新入生か?バスケ希望か?」


「いえ、自分は……」


「上級生だからと言って、ビビることはねえよ。うちはフレンドリーだぜ」


「あっ、いや……」


「バスケは初めてか?」


「……いえ、中学3年間、バスケ部にいました」


「じゃあ、決まりだな」


「いや、それはちょっと……」


「うちに来れば、日本一を体験できるかもしれないぞ」


「えっ?」


「うちの攻撃陣は間違いなく全国トップクラスだ。ただ……」


 と言うと、彼は黙って洋の顔を見た。


「お前、身長は幾つだ?」


「163・5センチです」


「そうか……どうだ、俺と1ON1をやってみないか?」


「えっ?」


「上履き、持ってるんだろ」


「僕は現役を引退して、ボールなんてもう何ヶ月も触っていませんから」


「じゃあ、ディフェンスだけでいい」


 先輩命令だと言わんばかりに、彼の声が若干きつくなった。


「……分かりました。でも、これが最初で最後です。僕はバスケット部には入りません」


 洋はそう言うと、学生服を脱ぎ、リュックから上履きを取り出した。

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