子殺し

高城 真言

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「どうしてお姉ちゃんの名前はランジアなの? まるで後からぼくが来るのをわかっていたみたい」

「そうね、きっとお母さんたちはわかっていたのよ。あなたはみんなに呼ばれて、愛されて、生まれてきたのね」


 姉は聡明な人だった。

 伏せ目がちの瞳を縁取る睫毛は長い。いつも朝露に濡れたかのように透き通っていた。睫毛だけじゃあない。腰まで覆う長髪も、そこから覗く細い腕も、瞳も、唇も、全てが透けてしまいそうなほどに淡い。おとぎ話に登場する、妖精のようなひとだった。

 対してぼくは、どこを見てもはっきりとした色素を誇っていて、まるで姉の色を全て吸い上げてしまったかのよう。

 外に出ることの出来ない姉の代わりに、ぼくは森の中を駆け回り、街の人と親しくなり、市場を探索した。

 青い空、深い緑の森、黄色い笑い声、虹色の街並み。拙い言葉で話すぼくに、姉はいつも笑いかけてくれていた。ぼくは姉が大好きだった。


 だから、ぼくは認めたくなかった。姉が消えてしまった事実を。

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