第53話
片付けを終えて自宅へと戻ろうと庭に出ると、雪翔が紫狐と庭で月を見ていた。
「冷えますよ?」
「あ……」
「どうしたんです?」
「月が綺麗だなーって見てました。しーちゃんは、出てきてもみんなから見えないって言ってたから……」
「構いませんよ?ただ、話してると、変な独り言になりますけど」
「あの、家なんですけど」
「はい?」
「あのお金で建ててください」
「嫌です」
「でも、家って高いんですよね?」
「元々、この神社のある敷地全ての持ち主は私なんですよ。特に文化財でもないので、城でも何でも建てれるんですけど、裏手とはいえ景観は壊したくなくて古い家のまま住んでました。
本来は建て替えてもいい時期なんですよねぇ」
「昔の家は頑丈だって聞いてます」
「なので今も使ってます。私のところが母屋になるので、風呂も台所もついてますし、冷蔵庫もあります。離れにするか、増築にするかどちらがいいですか?」
「冬弥さんが嫌でないなら、増築?のほうで。部屋を増やすってことですよね?」
「そうなります」
「離れだと……下宿と変わらないかなって。いつも、家でも一人だったから」
「これからは私がいます。紫狐も雪翔に付けたままでいいでしょう。私の影は雪翔にも従います」
「どうして?」
「雪翔に自分の影ができるまで、親は子を守るのに貸せるんですよ。親の子は影の守る範囲と言えばいいでしょうか?決まりもあるんです」
「しーちゃんは離れてても大丈夫なんですか?」
「はい。ここに住む限り。長く離れる時は私の影に戻ってもらうしかないですけど。後、敬語やめましょう。よそよそしいです」
「が、頑張ります。あ!そう言えば、今日漆様と琥珀様が姿を見せてくれました」
「様ぁ?」
「そう呼べって……」
「からかわれてますねぇ。何か言われました?」
「階段はできるのかと」
「へえ。気にしてくれてるんですねぇ。祭りも近いですし、そろそろ出来てないととは思ってますが」
「あの、出来てます」
「え?」
「出来たんです今日。試しにやってみたら、ちゃんと言われた通りに。栞さんの狐ちゃんたちも沢山来てくれて、全部名前覚えられなかったけど……」
「ちょっと来てください」
手を引いて神社の鳥居の前まで雪翔を連れていき、作ってもらう。
一人でも十分によく出来ている。長く維持出来ないのを狐が補っておるだけだろうと思い、階段に足をかける。
「いいですねぇ。登ると下から消えていく階段ならば、上に上にと作れます」
もういいですよと言って、ふわりと地面に降り立つ。
「当日まで、その力は使わないように。これで大丈夫です。飛ぶ時間は、夜。祭りの神輿が戻ってきて、屋台が開かれ、一番活気のある夜19:00に最大まで大きくなります」
「僕はどうしたら?」
「栞さんが守ってくれますよ。他の社の方々も来ます。雑魚はあの三人が暴れてくれるでしょう。さ、もう寝なさい。まだ夜は冷えますからねぇ」
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