第7話
そろそろ約束の13時だと思い、ポットで湯を沸かしお茶とジュースの用意をしておく。
本当はやかんで沸かしたいのだが、神社に行っていたので予定が狂ってしまっている。
玄関先に立ち、門を開けて車が入れるようにしておく。
下宿人は免許は持っているが車は持ってはいない。1台車があるので、それをみんなで使っている状態だ。
使うのも、下宿に関係ある時にしか使わないので、それ程いい車でもないが、ワゴンにしてあるので、荷物もたくさん乗るし、病気の時でも寝かせて連れていくことが出来る。
門から右奥が家なので、左側の端に車が止めてあり、1台自転車も置いてある。
紺色の軽自動車が入ってきたので、入口前に止めてもらい出迎えると、子供が二人に増えている。
「電話した早乙女と申します」
「下宿屋の主、冬弥と申します。中へどうぞ」と招き入れる。
お茶とジュースを二つ出し、話を聞くと、下の子供を置いてくることが出来なかったのでとの事だった。
「あの、受験結果はまだ出ていないんですが、この近くの公立も受けることになっていまして……」と長い説明を笑顔で聞き、子供の様子を見る。
「家は基本、子供たちに何でもやらせています。ここの客間の横の板間が食堂。朝は学校があるので片付けは私が。ですが、お茶碗や汁椀に箸など自分で用意し、洗うまでが食事としています。
共有部分は大学生も含め交代で掃除当番があり、各部屋の掃除と洗濯は自分で。乾燥機もありますが、梅雨時期くらいしか使いません。それに建物も古いので……これが家賃の安い理由の一つです。
後、親御さんと同じようにルールを守らなければ叱りますし、手伝いを頼むこともあります。私もすべて出来る訳では無いので、お休みとして、日曜の夕方はカレーやハヤシライスを作っておくので、昼と夜は子供達で食事を取ってもらい、お休みをいただいております。それでも宜しいでしょうか?」
「はい。今部屋は空いてますか?」
「まだ掃除が済んでいませんが、空いた部屋が一つ。こちらです」と案内する。
「南向きなので、日当たりはいいです。学習机もありますので。入ってすぐがミニキッチンとトイレ。4畳ですが、ほとんどの子がここで休みの日は食事などしているようです。奥の8畳に机と押し入れがあります」
「思っていたよりも広いですね。部屋も綺麗だし」
「布団の子もいますが、箪笥やベッド等置いてもらって構いません。それと、この下宿ではみんなが他人ではなく、家族として暮らしています。勉強なども大学生が見てくれたりします」
「雪ちゃん、ここに決めたら?」
「うん……」
「お小遣いなどは家庭から。土曜や日曜の食費など少し生活費がいりますが、金額はそれぞれ家庭によって違います。なので一年生の子はアルバイトをする子が少ないので、毎月のお小遣いと生活費を少し仕送りされている家が多いですね」
「分かりました。でも、来週には引越しでして……」
「構いませんよ。この部屋でしたら用意できますが」
「お願いします。卒業式は迎えに来ますが、学校はもう休んでも構わないそうなので」
「えーっと、
「はい。宜しくお願いします。自転車とかは……」
「歩いても2.30分だし、坂道が嫌だとみんな乗らないんだよねぇ。もってきてもいいけど」
「やめておきます……」
そのまま契約が済み、日割りのぶんと一緒に敷金礼金も受け取り、印を押す。
引越しは家族の引越しと同じ日なので一人で来る事になったが、親は心配していないらしい。
子供達に手を振り、来週を楽しみに自室へ一度戻り着替え、影を戻す。
軽トラックが荷物を運んできてくれたので、中まで運んでもらうが、今風邪が流行っているから、気をつけなよと、酒屋から貰ったからと請求書と共に、スポーツドリンクを貰う。
「月末に集金に来るって言ってたから」と日用品店の主人から請求書を受け取りお礼を言って中に入り分けてしまっていく。
昨日までが豪華だったので今日から普通の食事だと、材料を見て献立を考える。
夜は出ていかなければいけないので、米を研ぎ、鍋に湯を沸かし、米のとぎ汁で大根を炊く。
その間にブリの粗を適度な大きさに切り、鍋でさっと湯通ししてから冷水で締め、炊けた大根とブリを入れて茹で、灰汁を取ってから、醤油、みりん、酒、出汁で味をつけて炊く。
もう一品中鉢用にと、小松菜と厚揚げをさっと湯通しして、白だし醤油で味付けし、器にいれてラップをかけておく。
あとは味噌汁と漬物があればいいだろうと、土間のテーブルに料理を置き、メモを残す。
_____
本日は急用の為、温めて食べてください。
酒屋さんからスポーツドリンクを頂いたので、飲みすぎないように!
冷蔵庫の中の漬物も忘れずに。
冬弥
_____
これで、今から仮眠して夜にでかければ問題ないだろう。
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