叶わぬ恋だと知っていても

多田野 怜

第1話 それは悲しい物語

僕はいつもみていた

あいつをみている彼女をみていた

それは彼女にとって悲しい恋なんだろう

僕にとってもそれは悲しい恋だった


あいつは僕の好きな人の好きな人だけど

嫌いにはなれなかった

あいつは損な性格をしてる

自分より他人を優先してしまう

そんなやつだった

そんな性格だから彼女からの想いに対して分かっていながら彼女が傷つくのが嫌で中々踏み出せない

僕はあいつが彼女を選べないことを知ってる

だから僕は彼女とあいつの関係についてホッとしている

大丈夫、彼女の恋は叶わない

そんなことを思っている自分が一番嫌いだった

でも許してほしい

そうでもしないと僕の心が耐えられそうにないから

そうやって自分を守ってるんだ

そんな自分が僕は嫌いだ


僕が彼女と出会ったのは一年前ぐらいだったか高校2年の始めだった気がする

元々そんなアウトドア派でもない僕は部活も文学部とは名ばかりの読書をするだけしかすることがない部活に入っていた

当然部員もほとんどいないし、いたとしても幽霊部員なのでいないも同然だ

しかしこの日は珍しく活動内容があった

顧問の先生曰く新しく届いた本が学校裏にあるのでそれを図書室に運んでほしいのだそうだ

正直な話かなりの量があったし

本当なら断りたかったが僕は断れなかった

お願いされたらどうしても断れない

自分でも損な性格だなと思う

でも、昔からなのでしょうがないともう諦めている


それから学校裏から本を運ぶ作業を始めた

図書室は二階にあるので階段を上り下りするのが一番大変だ

それを一人で黙々と運ぶ

外では部活をやっているであろう活気のある声がする

そんな声に気を取られたいたら階段でつまづいてしまった

とっさに手をついたため本が階段から落ちる

やってしまった…そう思った時だった

彼女と出会ったのは

「大丈夫ですか?」と彼女は言ってくれて

心配そうに僕をみていた

今更になって思ったがこの時にはもう彼女に一目惚れしていたのだと思う


彼女は優しかった

怪我はないですか?とか捻ったりしてませんか?とかいろいろ聞かれた

そんな彼女に僕は大丈夫です、大丈夫ですとしか言えなかった

それから僕は急いで本を拾い始めた

多分恥ずかしかったのだ

そんな姿を彼女にみられたのが

すると彼女はこの本ってどこに運ぶんですか?と聞いた

僕は正直に図書室に運ぶと言ったら彼女は私も運びますと言って僕の持っていた本を半分持って二階に上がっていった

それからすぐに僕は彼女の後を追ってありがとうと言った。

だが、部活は大丈夫なのかと聞くと今日は休みらしい

ちなみになんの部活かというとサッカー部のマネージャーをやっているらしい

それを聞いて僕は一人の友達を思い浮かべた

そういえばサッカー部だったなと


それからたまに彼女は手伝いに来てくれるようになった

部活が休みだったり、部活が始まるまでなど空いた時間で来てくれるのはありがたかったし僕も彼女に会いたいと思っていたのでほんとに嬉しかった


ある日いつもの通り放課後に本を運んでいると彼女の後ろ姿が見えた

これから部活だろうかそれとも休みなのだろうか聞いてみようと声をかけようとした時ふと横を見た。

すると見たことのあるやつがいた

昔、中学までは関わりのあった友達だった

そういえば高校からサッカー部に入ってから会わなくなりすっかり疎遠になってしまったのだ。そこで僕はなんとなく気になり彼女達の方に近づいた

すると彼女が僕に気づいて振り返った。そこであいつも僕のことに気づいたのか遅れて振り返って僕に話しかけた

ひさしぶりだね、って

それに僕は「うん、そうだね」としか言えなかった。

彼女はそんな僕とあいつとの会話を聞き2人は知り合いだったんだねと言ったので

僕は「うん、中学の時ね」といつもより控えめに言った。するとあいつがそろそろ行かないとと言って僕にあいさつをして歩き出した。それに続いて彼女もまたねと言って後を追って行った。僕はまた、としか言えなかった

それからふと僕は思った

さっきあいつと話している時の彼女の顔は見たことがなかったなと

そのことを考えたら何故か胸がチクりと痛んだ気がしたのだが別になんともないし気のせいみたいだった





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