えろいことするために巨乳美少女奴隷を買ったはずが、お師匠さまと慕われて思った通りにいかなくなる話

煮豆シューター

01.大きいものもまた依然として、良い

 端的に自己紹介をしようと思う。

 私の名前は、ハロ・ハロリ・ハローハロリンネ。

 ハロ多すぎだろうと思うかもしれないが、はなはだ不本意ながら周囲からはすでにこの名前で認知されてしまっているので、今更変えることもできない。


 さて、そんな私には前世の記憶がある。

 前世というか、気がついたら森の真ん中でひとりぼっちで佇んでいたのだが、とりあえず便宜上前世と呼んでいる。

 私は前世では男性だった。しかし、『この世界』に来てからはなぜか年端もいかない少女になってしまっていた。

 加えて人間でもなくなっていたらしく、耳が長く寿命も長く、魔法の扱いに優れる代わりに肉体が打たれ弱い種族、エルフになっている。


 それからなんだかんだ色々あったが、なんか私には類稀なる魔法の才能的なものがあったようで、とりあえず障害は大体魔法でごり押ししてどうにかしてきたおかげで、今はそれなりに優秀な冒険者として名を馳せている。

 ……馳せているわけなのだが、そんな私にはただ一つだけ、この世界に来てからずっと抱えてしまっている深い悩みがあった。


 私の前世は男である。それは心も同様であり、たとえこの体が十代前半くらいの少女のものであろうとも、男を恋愛対象に見るとかありえない。

 おわかりいただけただろうか。

 そう、健全なお付き合いというやつができないのである。


 できることなら女の子といちゃいちゃしたい。

 そんな風に心の奥底で思いながら、ひたすら毎日をこの世界で過ごしてきた。

 初めの頃は魔法への興味で、中頃では冒険者として名をあげることで、そういう気持ちを誤魔化してきた。


 でももう限界だった。

 魔法は大体覚えてしまったし、冒険者のランクは最高のSで打ち止めになってしまったし……。

 そして今日、私は以前から考えていた一つの妄想をついに実行に移すことにした。


 ずばり、可愛い女の子の奴隷を買って、この欲求を満たす……!


 無論、私も今はこんな体だ。健全なお付き合いだとか、そこまで高望みはしない。

 ただ、気が向いた時にちょっと体を好きにさせてくれるような豊満ボディな子さえいれば……それだけで……。


 言ってしまえば性が頭につく奴隷なわけなのだけども、だからと言ってそこまでひどい扱いをするつもりはない。

 衣食住はちゃんと保障するし、我儘だってよほど無茶なことでない限り聞いてあげるつもりだ。

 お小遣いだってあげるし、自由時間だってあげるし、ぶっちゃけそこらの平民よりよほど良い暮らしができるくらいにはちゃんと世話をするつもりでいる。

 それができるだけの稼ぎもある。命を預かる以上、相応のことはするつもりだ。


 ただ、その……ね?

 代わりにちょっと体を好きにさせてくれれば……うん。

 それだけ。それだけさせてくれれば……。


「クックック。本日はどのような奴隷をお探しで?」


 奴隷商。

 そう聞くと危ない店に思えるかもしれないが、奴隷制度は国に認可されているものであり、奴隷に落ちる者は大体が犯罪者とかである。

 科学があまり発展していないこの世界で人材は貴重な資源の一種だ。下手な刑など下すくらいなら、奴隷として働いてもらった方が国としてもうまく回るとかなんとか。

 もちろん、人攫いなどの違法な手段で奴隷に落とすことは禁止されている。あるいは隠れてやっている奴隷商もいるかもしれないが、バレれば関係者はすべて奴隷一直線だ。

 関係者全員なので、違法だと知っていて手を出していた者も全員奴隷行きになる。

 なお、違法だと知らなくても罪に問われたりもする。裁かれる際はマジで見境なしである。

 しかしここは国も利用している大きな奴隷商なので、誤って違法な奴隷を買ってしまう心配はない。


「クックック。本日はどのような奴隷をお探しで?」

「すべての権利が私に委ねられる奴隷だ」

「クックック。ほう、労働奴隷や戦闘奴隷ではないと。どのような用途でお買いになられるつもりで?」

「……なぜそんなことを聞く?」

「クックック。お客さまのお買い求めになる傾向を統合、分析し、今後の商売に役立てるためですよ」


 思ってたよりまともな回答だった。


「……魔法を。そう、魔法を教えるためだ」


 素直に本当のことを言ってしまうと変態扱いがまぬがれない。

 いや、実際にそれに当てはまってしまうのだろうけども……あ、この人そういう人なんだ的な目を向けられるのはちょっと辛い。

 なので、その場で考えた適当な建前を述べる。


「クックック。魔法ですか。お弟子さんをお探しということで?」

「ああ。私の魔法のすべてを授けるに値する者を探している」

「クックック。なるほどなるほど。では、魔力が高い者をお探しということで?」

「あー……」

「ク?」


 この話の流れだとそうなってしまうのか。

 いやしかし、そこまで問題はないか。修正はきく。


「いや、それでいい。それからできれば、私と同じくらいの年頃の少女をお願いしたい」

「クックック」

「その、あれだ。性別が違うといろいろ面倒な部分があるからな。それに歳が行き過ぎていたら弟子にするという目的が本末転倒になってしまう」


 完全に思いつきだったがそれっぽいことが言えた。


「クックック。なるほどなるほど。了解いたしました。では今から条件に合った奴隷を使いのものに連れてこさせますので、今しばらくお待ちください」

「ああ」


 心臓がドキドキと高鳴る。

 はやる気持ちを抑えるようにして沈黙していると、やがて一人の少女が連れられてきた。


 背丈は私より少し高いくらいだろうか。

 奴隷だけあって、あまり綺麗な生活をしていなかったはずだ。

 少し全身の肌が煤けていて、身なりも粗雑な服で綺麗とは言い難くて、けれど、そんな汚れを意に介さないような魅力が彼女にはあった。

 例えるなら荒野に咲く一輪の花。暗く冷たい場所でも、決して明るさを絶やさないような。

 そんな第一印象を与える明るい色合いの髪と、青空と同じ色をした瞳。

 初めはただ暗く沈んでいたその眼が、私を捉えてすぐ、呆けたように見開かれる。


 おそらく、自分の購入を検討している人物が自分よりちょっと下くらいの見た目の女の子で驚いたんだろう。

 そんな顔をしている。


「クックック。このお方はご自身の魔法を授けるに値するお弟子さんをお探しとのことです。失礼のないようにしなさい」


 と、連れられてきた女の子に奴隷商の人が言う。


 違うんだけどな。まあ帰った後で訂正しておけばいいか。


「クックック。誠に申しわけありませんが、お客さまの条件ですと、該当する奴隷は一人しか見つかりませんでした」

「それが、この子だと?」

「クックック。はい。資料をご覧になりますか?」

「いや」


 彼女を一目見た瞬間から、私はすでにどうするか決めていた。


「この子を買おう」

「クックック。ほほう。即決ですな。おめがねにかないましたか?」

「ああ。この子にはとてつもない魔法の才を感じる」


 と言いながら、私の視線は彼女の首の下からお腹の上の辺りに向いていた。


 こちらをちらちらと見てきたりと言った、ふとした仕草で、ぽよんと揺れる。

 服の隙間から見える谷間はもう一種の芸術の粋だ。

 服が粗雑であることが、むしろその魅力を危険なまでに引き出している。


「うむ、とてつもない……本当にとてつもない……」


 ちょっと自分のものを見下ろしてみる。

 ぺったんこってほどではないが、あまりない。

 いや、揉めるくらいにはあるけれども、今目の前にいる少女とは比べるべくもなかった。


 大きければいいというものではないと言う者もいるだろう。

 小さいものにも価値があると言う者もいるだろう。

 それには同意する。

 しかし、しかしだ。


 大きいものもまた依然として、良い。


 不変の真理とでも言おうか。

 まさしくそれは、動かざること山の如し。

 いや、この豊かな御本山さまはきっと激しくお動きになられるんだけどね?


「クックック。お値段はこちらになります」

「……高いな」


 Sランク冒険者としてこれまで貯蓄してきたお金が半分以上すっ飛んでしまう。

 普通の奴隷の何千倍という値段だ。仮に貴族でも簡単には手が出ない。

 さすがに一瞬躊躇しかけたが……。


「クックック。完全奴隷であることに加え、若く容姿に優れた女性であり、教養があり、魔力が高いなどなど、さまざまな好条件が揃った最上級の奴隷ですので。いかがなさいますか?」


 もう一度、ちらりと少女を盗み見る。

 今にもこぼれ落ちそうな、双つの丘――。


「買おう。値段など些細な問題だ。この子にはこの子にしかない、揺るぎない価値がある」


 と、揺れ動くものを見ながら力説する。


「クックック。ご満足いただけたようでなによりです。お買い上げありがとうございます」


 諸々の手続きを済ませていくと、隷属契約を結ぶ段階になる。


 やることは簡単だ。特殊な魔法陣の上で、奴隷となる者が主人となる者の血を飲み込む。その後、奴隷が簡単な詠唱を唱える。

 それだけで、人は人を完全に隷属させることができてしまう。奴隷はあらゆる命令に逆らえなくなり、主人は絶対的な執行権を持つ。


 まあ、そこそこ魔法が得意だと自負している私から見たら、この隷属契約の術式とかいうやつは穴だらけすぎるのだが……。

 ちょっと工夫したら隷属側からでも余裕で解除できてしまいそうだ。むしろ隷属側からの方が解きやすいまである。

 要の術式がこんなんでよく今まで無事に奴隷制度が機能してきたなって感じだ。


「……血を」


 かっこつけて手首辺りを風魔法で斬ってみたら結構血が溢れてきてやばかった。正直めっちゃ痛い。かっこつけるんじゃなかった。

 メロンの少女はどばどばとこぼれ落ちる私の血を慌てて両手ですくい上げる。


 それを確認して、すぐに傷を回復魔法で治した。

 メロン少女は私の血を口に含むと、魔法の完了のため、詠唱を唱え始める。


「今……今この時より、我が命、我が心、我が運命、汝の手の内に」


 少女の首の後ろ、うなじ辺りに、鳥をかたどった紋が浮かび上がる。

 これで隷属契約は完了だ。


 メロンの少女は、ただ言われるがまま隷属契約を結んだというだけで、どこか呆然と、あるいはふわふわと。

 まだ現実を受け入れ切れていないような印象を受けた。


 声をかけても、「はい」だとか「わかりました」だとか簡素な返事しかしてくれない。


「……この子はまだ奴隷になって間もなかったりする?」

「クックック。買い手がつかないまま、ちょうど半年くらいでしょうか」


 半年か。

 それだけの間、自分がこの先どうなるかもわからない環境にいて、突然買われたのだ。

 まだ現実を受け止め切れないのも無理はないかもしれない。


「……しかしやはり……とてつもないな……」


 メロン少女を横目で覗き見つつ、奴隷商を去る。

 ひとまず、適当に服でも買って帰ろうか。

 なにせこのメロンサイズだと私の服は絶対に合わないからな。

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