クッチョロ!!4

沙魚人

第1話 ファーザー

日曜日の昼下がり、昼寝中の美生は夢を見ていた。


祖父のバイクに2人乗りで、バイク屋に行く夢。美生は祖父につかまって、祖父の顔は見えないが、嬉しそうだったのに違いない。


目が覚めて、スマホを見るとバイク屋の店主からメールが来ていた。虫の知らせかなと思って、メールを読む。


「おじいさんのバイクがネットオークションに出ています。」


美生は電話をかけた。


「もしもし、美生です。これから行ってもいいですか?」


美生はガレージからクッチョロを出して、バイク屋に向かった。


しばらく後、バイク屋で美生と店主はパソコンのモニターを覗き込んでいた。それは確かにあの時の3台のうちの1台だった。灰色がかった深い緑色のバイク。仔鹿のバッジがついている。あの時は気付かなかったが、普通鉄の丸パイプで作られているフレームが鉄の薄板をプレスしたもので作られている。


「このバイクは3台のうちで1番コンディションが悪くて、修理に手間取りました。修理が終わって、すぐに売れたんです。今回何かの理由でオークションに出されたみたいですね。」


「クッチョロとヴェスパもありますし、なぜ連絡してくれたんですか?」


「あの時、コンディションが良ければ、このバイクをお勧めするつもりでした。」


店主は美生を探るように見た。少しためらった後、言う。


「このバイクの元々の持ち主は、美生さんのお父さんなんです。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る