【σσ 22本】魔王軍残党!

魔王には直属の私兵が二組織あった。

魔王即位前からの組織で、プライドの高い魔人重騎士近衛隊と勇者討伐の為に各魔族から選ばれた精鋭部隊、進化奇兵団だ。


進化奇兵団は個々の戦闘能力では他の兵団を凌駕していたのだが、短期間で動員された寄せ集めのため集団戦闘の練度が低かった。魔王軍が人間界に攻め入り、決戦を挑んだ、ボルドフ大平野での第一次人魔大戦において先陣の栄誉を賜り、初手敵の本陣近くまで襲いかかる大活躍を見せたのだか。


そこまで引き付けたのは、聖ファストユナ王国とサマルト清王国の連合軍の魔導師部隊、紅蓮の旅団の戦略であった。ぎりぎりまで敵軍を引き付け密集地域に集団連結魔法『レッドアロウ無限連擊』でスコールのような無数の炎の弓矢によりカウンター攻撃をし半数が壊滅した。そして混乱状態に陥った所を勇者のパーティー他機動力に優れた冒険者達の小隊に、ことこどく討ち取られて、団は全滅した。


よって、第二次人魔大戦、人間から魔界への進撃に迎え撃ったのは、魔人重騎士近衛隊が主軸となる、魔族各部族連合軍だった。


一年前の大戦の大勝利により、勢い付く、聖ファストユナ王国とサマルト清王国の連合軍は魔王が支配していた魔界と呼ばれた北の大陸に攻め入り領地の七割をあっという間に占領し、勢いに飲み込まれそうになった魔王軍は北部ガレス山脈に囲まれた天然の要塞魔王城に撤退し、籠城戦の策を取った。この戦いに勇者のパーティーは参加していない。魔王軍兵器部門の幹部バルガルーが開発中の、巨大戦艦を破壊する為に別行動を取っていたのだ。


人間側の連戦連勝で、この戦いは呆気なく終結するかに思われたがしかし、功を焦って魔王城鮮血の回廊に誘き寄せられた聖ファストユナ王国とサマルト清王国の連合の兵士や冒険者達は死ぬまで躍り続けたあの赤い靴を履いた少女のように魔王の幻術に、二重の意味て踊ろされ、回廊で待ち構えていた魔王軍の伏兵に突入した三分の二が壊滅させられた。


それから一年半 の長期間、籠城戦が続き双方終わりが見えない戦いに疲弊し、混迷を極めた。


それを打破したのは、別行動を取っていた勇者達であった。最後の力を振り絞り全軍での総攻撃をかける聖ファストユナ王国とサマルト清王国の連合軍その先陣に立った勇者のパーティーは死力を尽くして闘いついに魔王を滅ぼした。しかしそのパーティーで生き残ったのは一人の戦士のみであった。


こうして魔王は倒され、魔界各地の魔族長達も次々降服し、魔界は人間の統治下に置かれる事になる。


悪の花の根は完全に切り落とされたかに思われたが、魔王を狂信的に崇拝していた旧魔人重騎士近衛隊 の一部残党が魔界から脱出し新な火種となるのであった――

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