そして二人は回想する。
御薗定嘉
一 二人の男
誰もが寝静まる深夜、とあるスタジアム会場のフィールドで二人、男がいた。互いに向かい合うように立つ男たちは、片方は憎悪を顔ににじませながら銃を突きつけ、もう片方は困惑と憐みを笑顔で隠して立っている。
「これは一体どういうことだ?」
笑顔のまま男は胸ポケットから一枚の厚紙を取り出した。『招待状』と印字された裏には今彼らが立つこの場所の住所がボールペンで走り書きされている。それを向かい側の男に見えるように提示すれば、突き付けた銃のグリップを握りしめる音がした。
「書いてある通りだ。黙って死んでくれ」
「やっぱりそうか。もしかしたらと思って来てみたが、死ぬわけにはいかないんだ。かといって、このまま帰らせてくれるわけでもなさそうだ」
さしずめ死への招待状というべき厚紙を、彼は手首のスナップで自分たちの間、中央へ投げた。それはさながらダーツのように地面に刺さり、境界線とでもいうように二人を分ける。
「もう終わりにしよう」言いだしたのはどちらであったか。どちらともなく紡がれた言葉は、二人の間につむじ風のように回って消えてしまった。
そして二人は回想する。なぜこうなってしまったのか。どこから狂っていたのか。
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