都市伝説都市
湖城マコト
プロローグ
プロローグ 不死の館
『
都市伝説の話題を中心に扱う「不死の館」なるサイトにて、ハンドルネーム『ベニクラゲ』がそう切り出した。
夜光市という街では度々不可思議な現象が起こっているとされ、オカルトマニア達の間でその名が話題に上る機会は多い。そういった理由から、「都市伝説都市」という別称が用いられることもある。
『儂が注目しているのは、最近起こっている若い女性の連続失踪事件じゃな。公表はされていないようじゃが、どうにも不可解な点があるらしいのう』
サイトの古参メンバーである『センニン』が、『ベニクラゲ』の書き込みにすぐさま反応した。
『どう不可解なんですか?』
『何でも、全ての現場に共通して甘い香りが残されていたそうじゃ。どこまで本当かは分からぬが、この世のものとは思えない不思議な香りじゃったとか何とか』
『失踪現場に残される不思議な香りですか。確かにそれはミステリアスで気になりますね』
『ベニクラゲ』と『センニン』のやり取りがひと段落したところで、今度はハンドルネーム『ヤオビクニ』が『ベニクラゲ』へと情報を提供する。
『私は夜光市の
『何かオカルトっぽい要素があるんですか?』
『まだ未確定の情報ですが、近くで猛獣の唸り声のようなものを聞いたという証言があるそうです。その猛獣がペットを襲っているのではと考えている人もいるとか何とか』
『猛獣ですか、確かに穏やかじゃないですね。ですがそれは、オカルトというよりは普通に警察沙汰の事件では?』
『ごもっともな意見です』
『僕からも一つよろしいですか?』
遅れてやってきたハンドルネーム『サンジェルマン』が名乗りを上げる。
『こんばんわ、サンジェルマンさん。是非ともお願いします』
『今し方仕入れて来たばかりの情報なのですが、また目撃されたようですよ。レイブンが』
『いいですね。レイブンの話題は大好きです』
『儂もじゃ』
『興味深いです』
ベニクラゲに続いてセンニン、ヤオビクニも興奮気味に書き込んだ。
夜光市で巻き起こる不可思議な事件を秘密裏に解決し、時には異形の怪物と交戦しているとも噂される謎めいた存在。
『レイブン』
レイブンという名は、
ミステリアスさとヒーロ性が共存したレイブンの姿にロマンを感じる者は多く、夜光市に関係した都市伝説の中でも特に人気の高い話題である。
レイブンの存在はあくまでも噂。実際に目撃者がいたのか、ネット上の完全なる創作なのか定かではないが、そこを指摘するのは野暮というものだろう。何よりも大切なのは都市伝説を楽しもうという心意気だ。
『それで今回のレイブンはどんな活躍を?』
『それはですね』
この日も、夜光市に
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