第156話 赤ちゃんみたいでかわいい

 しばらく経って、ショタ化とロリ化の効果が切れ、時間差はありながらも皆、もとに戻った。

 特に、進の場合は最後まで効果が切れず、色々弄ばれたので最も疲れている。美冬が阻止していてもなお酷いことになっていたので、もし彼女が居なければ恐らく進は死んでいただろう。


「いやあ、みんなありがとう助かったよ〜若いっていいねえ」

 と言う、おっさんに戻ってしまった教授による温かい締めの一言を貰って、一同解散となった。


 そして夜、夕飯も済ませ、今日は散々な目にあって疲れたから、早く風呂に入って寝よう……と思っていたところだ。


 進がローテーブルにだらけているところ、何となく喉が渇いたなと思ったところで、気が利くことに美冬が目の前に水を置いた。

「ああ、ありがとう」

「いえ」

 そして、進はそれを疑いもせずに一気に飲み干したのだ。

 そう。一気に。


「……え?」


 気付くと、身体が縮んでいた。

 

「まさか、みふ、今の水って──」

 わなわなと、ショタボイスでわかりきったことを確認した。確認せざるを得なかった。

「ごめんなさいだって研究室だとみんな居たから我慢してたんですそしたらいっぱい余ってるからいくらでも持っていって良いって言われて凄く可愛くてどうしてもどうしてもどうしても……」

 異常な早口で釈明する美冬の目は、完全にハート型になっていた。


 まるで狐が獲物を捕らえるときのような跳躍。ショタに食らいついた。

「はァァァァかわいい……、なんて可愛いんでしょう……。お口小さいし、目はくりっとしてて……はぁぁぁあ……」

 普段とは立場を逆転させて、美冬が膝の上に進を座らせ、撫で回している。


「かわいい……」

 いいながら、指を唇に這わせゆっくりと開かせていく。

 そして1度は唇同士をちゅっと合わせるだけにして、2度めからは容赦なく、この小さな口に吸付き、入れ込んで、流し込み、蹂躙する。

 若干の抵抗を感じられるが、これを力で抑え込むことが美冬の快感を更に加速させた。


「んんっ! んんんストップ! 待って待って!!」

 やっと美冬を引き剝がすことに成功し、ショタボイスで制止した。

 それでもなお、ぬいぐるみの如く抱き着かれているのには変わらず。


「なんで嫌がるんですか」

「きゅ、急にこんなことされて驚かないわけ──」

「なら急じゃなければ良いんですね?」

 言葉の意はつまりそういうことだがしかし、美冬の未だ目の色がピンク色にぎらついている。そんな彼女に迫られれば、命の危険を本気で感じざるを得ない。


 †


 背中に、普段は決して有り得ない感触を感じている。

 それは適度に柔らかくも、だが決して豊満ではない。

 

 湯船に、美冬に背後から抱き着かれているという、普段とは真逆の構図だ。つまり、一応Bは有るらしい彼女の胸を背もたれにしている状況。


 いつになったら元に戻れるのだろう。そんなことを虚空を眺めながら考えて、美冬に体中をまさぐられたり、耳と首筋を舐められ噛まれるのを半ば諦めて受け入れた。


「ご主人様のここ、おっきくなってますよ?」

 尻尾で巻き付かれて、わさわさと感触がする。

「そりゃそんだけ弄り回されたら……」

 何が楽しいのか、美冬はころころ笑っている。

 そして首を無理やり回されて、申し訳程度に口を塞がれる。


 湯船のお湯もだんだんとぬるくなってきた。それでも、美冬が飽きる様子はない。

「みふ、ちょっとのぼせてきたんだけど……」

「あとちょっとだけ」

 そんなにショタになったのが面白いのか。

 進も進で慣れてきたら美冬から蹂躙されるのも心地良くなってきた。


「ご主人様は美冬だけのモノですからね?」

「……うん? どうしたの」

「研究室で、みんなにいじり回されててすごく嫌でした。ご主人様に触っていいのは美冬だけです」

「はいはい」

「もおぉそうやって」

 いつものやきもちだと思って、適当に流した。

 

「ご主人様、こっち向いて?」

 先ほどまで後ろから抱き着かれていただけだったが、今度はお互いに向き合うようにして抱き締められる。

 決して豊満とは言えない胸でも、包容力は十二分。

「折角ですから、美冬のこと堪能してください」

 主観では美冬が大きくなって、少し大人らしさがある。今だけは抱き着いても手に余ってしまう。


 普段とは全く違う、下から見上げる美冬は、やけに色気があった。

 いつもは甘えてくる可愛らしい彼女が、すべて受け入れてくれる綺麗な女性に映る。

 頭を優しく支えられて、胸の方まで促された。

 

「……ご主人様、おっぱい好きですものね。赤ちゃんみたいでかわいい」


 美冬の、抱きしめてくる力が強まる。

 水が触れる音だけの、それ以外に何もない空間の様。

 受け止めきれないほどの慈愛で満たされて、むせ返ってしまいそう。

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