第154話 自分の不甲斐なさに泣きそうになるので!!
「もおおお納得いきませんよー! 正木を捕まえられたのも美冬達の手柄なのに、全部持っていかれて、こっちには何もないじゃないですかー! 治療費くらい請求させろーっですよ!」
あの後、花燐や後で到着した魔導庁の職員に「お前らは部外者だから帰れ」と追い返されたのだ。
「まあまあ、でも照憐君と満里奈がお礼言ってたし」
「お礼言われただけじゃ大して嬉しくないですよー」
美冬は文句を言いつつ、本日3本目のちゅーるを吸い、進の膝の上でゴロゴロと転がった。
「でも今回、みふだけでかなり大手柄だよね。新宿のときは一人で沢山倒したし、今回は人脈のおかげで戦わずに済んだし」
「そんなことで褒められても嬉しくないですよー。それにもう新宿のことは思い出したくありません。自分の不甲斐なさに泣きそうになるので!!」
寝返りをうって、天井と主の顔を見上げる。手探りで彼の腕を探しだしたら、それを掴んで頭に乗せた。こうすれば、自動的に頭が撫でられる仕組みになっている。
「まったく、魔導庁をやめて穏やかな日常を謳歌していると思ったらまさかの逆戻りですよ。二度とゴメンです。今回ので確信しましたっ。美冬は魔法を使って戦うより、ご主人様のお世話をするほうが断然向いてます」
「こんな姿でちゅーる吸ってたら説得力無いけど」
「明日のご飯、ちゅーるだけでいいですか」
「いつもお世話になってますっ」
進は決して美冬に逆らえない。
美冬は撫でられて気分が良くなって、更にもう一本のちゅーるに手を伸ばした。
夕飯は食べたのに、やけに口寂しいというか、小腹が減っている、という感じだ。
「ねえみふ、ちゅーる食べ過ぎじゃない?」
「そんなことないですよ。そもそも猫用なんですから健康に悪いはずがないんですよ。塩分も控えめですし。ポテチより何倍もマシです」
「そう言われればそうかも知れない……けど。それで、ハマるほど美味しいのそれ」
「美味しいっていうか、ヤミツキになると言いますか。食べてみればわかりますよ?」
美冬は口から袋を離し、指先にちゅーるを乗せる。
「マグロ味です。食えっ」
「いや要らない要らない要らない」
「何でですか。良いから食べてみればいいじゃないですか」
チュールを載せた指を口に突っ込もうとするも、進は腕を掴んで阻止し、必死に拒んだ。
「いいから!」
「要らないってホントに!」
「だから食わず嫌いしないで食べればいいじゃないですかっ」
「逆になんでそんな食べさせたいんだよっ」
「だって、美冬が食べてるものなら、ご主人様にも食べて欲しいじゃないですか!」
「わけわからんっ、ほんとわけわからん!」
暫く攻防した後「じゃあもういいです!」と美冬は諦めた。
諦めて、指についたちゅーるを舐めとり、また袋に残ったちゅーるを一気に吸った。
そして、空いた両手で進の両手を掴み拘束し、新たなる手段に打って出る。
ちゅーるを口の中に含んだまま、進の上に覆いかぶさって、口で口を塞ぐ。そして舌でちゅーるを流し込むのだ。
暴れて逃れようとするのも抑え込み、ちゅーると同時に甘ったるい唾液も流し込む。
進が全て飲み込むまで離さない。
触れ合った舌で、口の中からちゅーるが無くなったことを確認し、やっと解放してやった。
「はぁ、はぁ、どうですか、ちゅーるのちゅーの味はっ」
馬乗りになったまま、美冬は問いただした。
そして、虚無を見つめ色々流し込まれた進は、枯れそうな声で答えたのだ。
「めっちゃ出汁の味……」
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