ヤンデレ狐っ娘により一方的に開始される甘々な同棲生活

竜田川高架線

プロローグ

 銀色の長い髪の毛。少しだけあどけなさが残る顔つきの中、黄色い目には少し大人な風格。華奢な体躯に相応しい凹凸の少ない体つき。

 そして特徴的なのが、頭部からピンと生えた黒っぽいケモ耳と、ふさふさと生えた、髪とおなじ色のもふもふ尻尾。

 そんな、愛くるしい少女。

 美冬みふゆ。見た目にぴったりな言葉が、彼女の名前。

 狐の妖怪と言うか、怪異と言うか、そんな感じのオカルトチックな存在。月岡つきおか家という由緒正しき妖怪の名家に生まれ育ったお嬢様。

 

 そんな彼女は、とある魔法使いの使であり

 日戸ひのとすすむと言う、昔から続く魔法使いの家の生まれの高校生だ。

 

「ご主人様、行ってきますのちゅー」

 きっぱりと。

 進が学校に行こうとして玄関で靴を履くと、銀髪ケモミミ狐っ娘がこう言ってせがむのだ。

 愛情表現か、求愛行動か。彼は従者のそれをなんとかして拒みつつ「わかったわかった、またこんど」と、腕時計を見て電車の時間を気にした。

 一方、美冬は不満そうな顔をしたが、代わりにと言わんばかりに、抱きついて匂いを堪能する。

「ああ、それと……」

 抱きついて、決して逃さぬようにしてから、進の顔を見上げた。

 黒く、そこに光はなく、ありとあらゆるを孕んだ目で、覗き込む。

「他の女と会ったら、呪いますから」


 二人がこの様な状況になったのは、進が一人暮らしをしていた頃、そこに美冬が押しかけ女房よろしく一方的に同棲生活を開始した、ある夏の日まで遡る……。

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