第30話 希望の世界11 旅の目的

カナヘビは細かく足を動かし、街を囲う塀にもぺったりと張り付き難なく越え、広がる草原へとたどり着いた。速度を緩めて4人と1匹は夕日を浴びながら再び歩き始めた。


「喉乾いたでしょ。これ、どうぞ」


「ありがとう」


ケイから差し出された水筒の水をえぬは一口だけ口に含んだ。


「しかし、あんな力を持っていたなんて、早く言ってくれればいいのに」


横に並んだアンナが言った。


「ごめんね。でも、わたしも初めて使ったの。そしてたぶん」


「もう使えない」


色を失ったブローチをちらりと見てえぬは小さくため息をついた。


「ねえ、街の外はいつもあんな危険な生き物だらけなの」


「まあ、そうだな。大小あれど人間を襲うやつがうようよしている」


前を向いたままでショウが答えた。


「ホルプの街の外に住んでいる人は、大丈夫なの」


えぬの問いにケイは一旦カナヘビを止めた。そしてしばらく考えたあとに口を開いた。


「うん、そうだね。一旦、住みかによってこうか」


アンナはしかめっ面をして「つれていってもいいんだけど、なんか切なくなっちゃうから乗り気にはなれない」と言った。ショウは黙ってバットをくるくると回していた。


「うん、えぬもこの辺りのことを知りたいようだしね。見聞を広めにきたのか、どこかへの通過点なのかはわからないけど、世界の影を見るのも後学のためにはなるんじゃないかな」


えぬは自分が旅人であることを久し振りに思い出した。膜のはったような頭もようやくすっきりしてきた。


「そういえば、えぬは何のためにここを訪れたんだい?」


「みんなにまた会うため!」


なぜか反射的に言葉が出た。



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