第2話 生きてた

 八十歳の認知症のあるおばあちゃん。

 食事をしたり、休憩をしたりするテーブルがあるデイルームと呼ばれるテーブルがあるところでのお話しです。

 そのおばあちゃんはとてもかわいらしい穏やかな方でその日も窓の外を見ながらぼんやりと過ごしていました。

ある日の午前中、そのおばあちゃんがふと・・・

「私はもうそろそろお迎えが来ちゃうと思うのよね。今日、夢であの人(旦那)が迎えに来た夢を見たの。そのときあの人は私に手を差し伸べてきたの。私はその時その手を握ることができなかったのだけれど・・・。」

と悲しそうな嬉しそうな表情を浮かべた。

 私はこの時、旦那さんが亡くなってしまっているのだな、夢の中で旦那さんに会うことができたのだなと思いました。すると、午後に

「よう、会いに来たぞ!」

とおばあちゃんの旦那登場。

その場にいた私を含めたすべての人が


 生きてんじゃん!!!!

 

と心の中で思ったに違いない!けれど、私は看護師。一呼吸おいて、

「旦那さんが会いに来てくれてよかったですね。」

と笑顔でお伝えした。すると

「あらやだ、まだ生きてたわ。うふふ。」

と笑ってニコニコと過ごすおばあちゃんに笑う私。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る