あいうえおのかわず

月白鳥

あいうえおのかわず

あめ降り

の中

うしおの満ちては

えもいわれず香る

おおいなるものの翳


かわずの仰ぐは

綺羅綺羅きらきらしく瞬き

くるおしく飛び交う

化生けしょうの目玉

虚無こむの灯火


五月雨さみだれ

時雨しぐれ

ぎゆく霹靂神はたたがみ

に眼に浴びて

は大海を漕ぐ


縦波たてなみ 横波

千々ちぢ乱れる波間に揺蕩うて

つくもで編んだ舟を漕ぐ

に櫂握り

蕩蕩とうとうたる碧さの先を見る


なにくそ やれこら

にくまれ口を一つまみ

き手を切りて

そべり 転がり

呑気のんきな閑暇も一つまみ


波濤はとうのしぶきに顔洗い

日暮ひぐれの緋色に叫ぶ

風車ふうしゃの唸りに耳澄ませ

へち探る糸を手繰る

ほらは今宵の御宿なり


狸穴まみあなはかくも賑々しく

みなとに夜通し灯が灯る

むじなの酒は火の如し

目回めまわし 目眩に 腰砕け

最早もはやいやはや 降参降参


夜半やはん矢来の間を潜り

ゆうらりふらり 元来た道漕ぐ

ようよう帰って言うことにゃ


われ大海を得たり」

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