★★高砂・飛遊午、戦場に駆り出される★★
第3話:あとはルーティにお任せ下さい
「ルーティ、ヒューゴさん。そろそろ戦闘準備に入って下さい。あと2分ほどで会敵すると思われます」
ココミ・コロネ・ドラコットからの通信。
ディスプレイには敵影らしき情報は何も表示されていないが…。
ココミはどうやって会敵時間を算出したのだろうか?
「こちらヒューゴ。了解した。その前にコイツの操縦方法を教えてくれないか?」
「えっ?」
「何を驚いているの?ココミちゃん。操縦方法が解らないとタカサゴ戦えないヨ」
意外な反応を示すココミに、思わずクレハは口を挟んでしまった。
「そ、操縦ですか。操縦ですよね。えへへ」
何故そこで苦笑いをする!?「そうよ!早くしないと敵が襲ってくるでしょ!」
焦るあまり、つい声を荒げてしまう。この状況でテヘペロされると、さらに腹が立つ。
「ヒューゴさんは戦わなくて結構ですよ。あとはルーティにお任せ下さい」
思いも寄らぬココミの言葉に、クレハ、ヒューゴ共に我が耳を疑った。
「え?俺たちにこのロボットと契約してくれと頼んでおきながら『戦わなくてもいい』とはどういう事だ?」
「言葉の通りですよ。ヒューゴさん。私たちに足りなかったのは、
「それって、つまりあのロボットを動かす乾電池が欲しかったって事?」
「うーん。乾電池であれほどの大きさのモノを動かすという発想はいかがなものかと思いますが、内容としては遠からずと言ったところでしょうか」
素直に正解と言え!「だったら何故タカサゴだったの!?電池の役なら誰でも良かったんじゃないの!?」
「まあ、それがですねぇ。誰でも良かったという訳でも無いんですよ。ほら、私たちは本が示した、より強い霊力の持ち主を探す必要があったのです」
(あら?これはどういう事なのでしょう?)
本をくるりと回してみても、依然矢印はクレハを示したまま。
「ま、まあ霊力が強ければ出力も上がるという事です。単純に」
だから何故、そこで苦笑いをして見せる?「で、あの子で大丈夫なの?」
「あの子を見た目で判断してはいけませんよ。彼女はドラゴンの中でも最強の種であるレッドドラゴンなのです。まだ、あなた達よりも年を重ねていませんが」
ホントに大丈夫なのかよ?今は種族のスゴさよりも戦歴を語って欲しいのよ。
時同じくして、同じ疑問をヒューゴも抱いていた。
「パイロットではなく、エネルギータンク役とは少々ショックだが、お前に任せて本当に大丈夫なんだろうな?」
「失礼ブチかましてくれるのは解らんでもないで。でも、お前、戦ったこと有るんか?今朝のケンカやったら、あんなもん、ただのガキ同士の戯れやで。“戦い”ちゅうのはな、“命のやり取り”の事や。どちらかが死なん争いは戦いとは言わんのやで」
それを言われると何も反論できない。が、彼女がそのようは血生臭い経験を重ねているように見えないのもまた事実。
「それにウチ知っとるで。オリンピックとかいう世界の
『生温い』という事を言いたいのは十分理解できる。
だが、メダラーなる単語は存在しないぞ。
この事件をきっかけに、護身を真剣に追求した格闘技を“実戦格闘技”と呼び、従来の格闘技を“スポーツ格闘技”と揶揄、差別化するようになった。しかし、日本国内における格闘技・剣術・その他のスポーツは、勝敗よりも“精神鍛錬”に重きを置いている点では何ら差異は見受けられない。
運営の都合上、今でも勝敗に執着している団体は決して少なくはない…。
ヒューゴの通う道場も竹刀ではなく木刀を用いて練習する実戦剣道を
「それにな。これはウチらの戦いや。アンタら人間同士がわざわざ殺し合う道理も無いやろ?せやから人殺しはウチに任せとき」
告げてルーティは正面へと顔を戻した。
考えてみれば、これで良かったのだ。
画面構成はフライトシュミレーターゲームそのもので馴染みはあるものの、ココミに操縦方法を口頭で教えてもらったとしても、果たして実戦に耐え得る操作ができるかどうか?疑問を抱くよりも明らかにそれは無謀に他ならない。
ここは素直にルーティに任せるしかない。
「この状況でなんだが、この機体の事を知りたいんだが」
「そやったら、これでも見とき」と操縦桿ボックスの前のパネルを取り外して渡された。
画面が点いた。
「は?これタブレットだったのか?」「そやで」
てっきりカーナビと同じく幾つものファンクションキーを設けたタッチパネル式のサブディスプレイだと思っていた。
画面にベルタの外観が映し出された。
(これは!?)
コイツは、日曜朝に放映が始まったばかりの特撮ヒーロー番組に出ていたカニ型敵キャラではないか!
第1話の敵は、その番組の顔となるデザインであり気合の入ったものなので印象に残り易い。
関節部分は着ぐるみにスーツアクターが入る都合上で異なるが、形そのものは全くと言って良いほどよく似ている。違いを探せば、
「ココミ様に問いたい。そもそも何でロボットなんかで戦っているんだ?」
「あら?
何て事だと空を仰いだ。クレハも同じリアクションを取っていた。
特撮番組を、ものの見事にこの世界の現実だと勘違いしてくれている。
「あれはお芝居なの!作り物なの!この世界ではロボットで戦うなんて空想でしかないの!」
「へぇー」どうやらココミにとって、それはどうでもいい事のようだ。
レーダーに反応あり。
敵の
「そんじゃ行きますよって。ベルタはん!」「了解した」
この声は、先ほど契約時に電話の向こうで聞えた中年男性の声。
「なっ!?今、このロボット、喋ったのか?」
「ロボット言うな!ベルタはん、
ルーティの説明に頷き、早速上方へと顔を向けて「よろしくです。ベルタさん」挨拶をした。
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