第19話~戦いの終結~
主犯格と手下のディーアブルは無力化し、ベルゼブルはサクラさんの魔法で消えた。その代償なのかサクラさんはその場に倒れて動かない。
「サクラ、サクラ!!」
フウさんが必死にサクラさんを呼ぶ声が響く。抱き起こされ、揺さぶられても、サクラさんは起きない。
「サクラ、なんで…、なんで、こんな、無茶して…!?」
「畜生!!俺が、俺がもっと強ければ!」
アスカさんはその場に泣き崩れ、カエデさんは床に拳を打ち付けた。
「ごめん、サクラ。ごめん…。」
皆さん、自分を責める。
その時だった。フウさんから涙が溢れる。そして、それが床に落ちた。
「…なんだ、これ?」
そして、そこに大きな魔法陣が広がる。不思議な結界が私とフウさんたちを包んだ。
「…っ!」
「そら!!」
その中に、何故か引きずり込まれる。でも、嫌な感じはしない。
「これ…。」
中から見ると、とてもきれいな空間。回復魔法とか、支援魔法で疲れた身体が癒やされる感覚。
「あ…!」
そうか、サクラさんはそれで倒れたんだ。回復魔法は多用すると命に関わる。しかも、あんな大規模なものを継続したんだ。身体への負担は底知れない。
「サクラ…。」
同じ事を考えたフウさんがサクラさんを見る。でも、これは。
「フウさん、この魔法知ってたんですか?」
「…いや、知らない。こんな魔法、俺は、昔の俺も使ったことないはず。」
知ってて使ったわけじゃない。でも、この魔法はフウさんの魔法だ。きっと、サクラさんを助けるために、無意識に使ったんだ。
「サクラ、助かるかな?」
弱気なフウさんの目。結構長くいるけど、サクラさんが起きる気配はない。でも、息をしてるのは分かった。
「…待ちましょう。それしか、私たちには出来ないと思います。」
「うん。そうだね。」
そう言うと私たちを覆っていた結界が消える。
「そら!!」
「あ、ワタルくん。」
ワタルくんはすぐ近くにいた。きっと心配で、結界に張り付いてたのかもしれない。
「良かった。中で何があったの?」
「えっと、回復魔法でかかった身体的負担の回復が出来て、サクラさんも、助かるかもしれなくて…。」
「それ、本当!?」
私がそう言うと、アスカさんは顔を上げてこっちを見た。カエデさんも期待するように私を見る。
「は、はい。確信はないですけど、多分大丈夫だと思います。今も、息はしてますし…。」
「なら、早く帰ろうぜ!とりあえず、身体横にしよう!」
「そうね!フウ、サクラの事抱えられる?」
「もちろん!」
「よし、なら行くよ!」
アスカさんがそう言って、転移が始まる。あの人たちも一緒に転移した。
本部に戻って、アスカさんたちと一緒あの人たちの事を職員の人に引き継ぎをして、本部長に報告をした。
「そうか。」
「そして、サクラは今、意識はなく。ただ息をしている状態です。かなり回復はしていますが、目を覚ます気配はありません。」
アスカさんとカエデさんがほとんどの報告をしてくれた。
「ふむ、なるほど。状況は分かった。サクラは部屋で休ませよう。サクラが目を覚ますまでは心配だろうから非番扱いにしておくよ。全員ね。そらさんたちも疲れただろう。ゆっくりしていきなさい。」
「で、でも、五艦は…。」
「大丈夫、私から話しておこう。」
「ありがとうございます。」
そう言ってもらえるなら、お言葉に甘えよう。
「それじゃあ、各々部屋に戻っていいよ。フウに明日顔を出すようにと伝えてくれるかい?」
「はい、分かりました。」
サクラさんの部屋に行くと。ベッドの前にはフウさんが俯いて座ってた。
「フウ。」
カエデさんに声をかけられて、ビクッとした。
「ああ、カエデか。どうしたの?」
「本部長が、明日は顔出せって。」
「そっか。今日はいいの?」
「ああ。あと、サクラが起きるまでは非番扱いにしてくれるそうだ。」
「ん、分かった。」
そう言ってる間もサクラさんの手を放さない。そうだよね。普通、心配だよね。
「サクラ、どんな感じ?」
アスカさんにそう聞かれて、少し困ったように笑う。
「どうなんだろう?ずっと寝てる。」
そう言って少し暗い顔をする。
「なんかさ、さっきから、嫌な事しか考えられないんだ。このまま起きなかったらどうしよう、とか、また記憶がなくなってたらどうしよう、とか…。」
「何言ってんの!」
フウさんの言葉にアスカさんは怒る。そんなアスカさんにフウさんは涙声で返す。
「俺だって信じたくないよ。でも、怖いんだ。俺はまた…っ!」
そこまで言ったフウさんの胸倉を、カエデさんが掴む。少しカエデさんの方が身長が高いから、フウさんはつま先立ちになる。
「だったらそれ以上の事言うなよ!信じたくないなら信じないでいいから、今はサクラが起きる事だけ考えろ!!」
「カエデ!!」
アスカさんが止めに入って、カエデさんはフウさんを降ろす。みんな、悪気はないのに、どうして…。
「悪い、俺、部屋で休んでるわ。」
「ん、私もそうする。そらさんたちも、いいところで休んでね。」
「あ、はい。」
そう言ってアスカさんたちは出ていった。フウさんは、未だに暗い顔。どうしよう。
「フウさん、これ、別に聞いても聞かなくてもいいんですけど、話させてください。」
ワタルくんはそう言って話し始めた。フウさんは、こっちを向かない。
「前に一回、そらが倒れた事あったんですよ。初めて支援魔法使って。その時は、そら3日くらい寝てたんですけど、すごい不安で、正直苦しかったんです。」
あ、あの時だ。お父様たちに襲われて、怖くて仕方なかった時。
「その時、フウさんと同じ事考えてました。もう、目を覚まさないかもしれないって。そんな時に、バドが言ったんです。『考えてもいいけど、飯食ってしっかり寝ろ。そして、ちゃんと元気でいろ。そしたら、きっと目を覚ます』って。」
そんな事言ってたんだ。なんか、バドさんらしいな。
「だから、ちゃんと食べて、ちゃんと寝て、明日からはフウさんと顔を合わせられたらいいなって…。すいません、話長くて。」
ワタルくんはそう言って話を終わらせる。ワタルくんの話は、フウさんに届いたのかな?分からないけど、届いてたらいいな。
「そら、俺たちも行こう。」
「うん、そうだね。フウさん、おやすみなさい。」
そう言って私たちは部屋を出た。
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