第17話~決別~
サクラさんが、フウさんと話してる間にみんな完全回復してた。これで、戦える。
「そらさん、ワタルさん!こっち!」
サクラさんに呼ばれて行くと、フウさんの表情はなんだか暗かった。どうしたんだろう?
「これから、それぞれの相手に集中して戦闘。どこかがピンチそうな時は状況に応じてサポートする感じで。」
アスカさんはその後も作戦をみんなに伝える。きっと、サクラさんたちが話してる間にカエデさんと考えてたんだろうな。
「みんな分かった?」
「はい!!」
基本的には最初の作戦と変更なし。ただ、気掛かりが一つ。
「あの、サクラさん。体調は大丈夫ですか?」
サクラさんはあれだけ大規模な魔法を使って、みんなを回復したなら、かなり身体的に苦痛が来てるはずなのに…。
「うん、大丈夫だよ。」
そう言われても、安心出来ない。なんでだろう、胸騒ぎがして仕方ない。
「それじゃみんな、行くよ!!」
アスカさんがそう言うと、サクラさんは結界を解く。その瞬間、女の人の黒い球が飛んできた。
「はっ!」
それにアスカさんが応戦する。その爆発を利用して、フウさんとカエデさん、ワタルくんが飛び出す。それを私たちは援護する。
「…っ!」
私はあの人を狙って光に球を放つ。全然当たらないけど、あの人の支援魔法を邪魔する事が出来る。それが一番の支援になる。
「ワタル、俺が分からないのか?」
不意にそう言われて、ワタルくんが立ち止まる。
「俺はお前の親だぞ!親に向かって剣を向けるとは何事だ!!」
その声にワタルくんが怯える。小さい頃、育てられてた頃の事は憶えてなくても、親に怒鳴られればそうなるよね。
「ワタル、こっちにおいで。大丈夫、恐がらなくていいんだ。」
そう言ってあの人がワタルくんに向かって手を出す。その瞬間、ワタルくんはフラフラとあの人に向かって歩き出した。まるで、操られてるみたいに。
「ワタルくん?」
「そう、それでいい。」
おかしい、明らかにワタルくんの意志じゃない。そう思いながら私はワタルくんを呼ぶ。
「ワタルくん!!」
大声を出しても、ワタルくんは止まらない。基本的に私たちは動いちゃいけないけど、我慢出来なかった。
「そらさん!!」
サクラさんの止める声が聞こえたけど、私はワタルくんに駆け寄った。
「ワタルくん!待って!」
私が腕を揺さぶっても止まらない。なんで、どうして!
「ワタルくん!負けないで!ワタルくん!!」
そう言うと一瞬だけ止まってくれる。でも、その後も動き続ける。どうしよう…。
「邪魔だ。」
あの人がそう言うと剣が光る。そして、黒い球が飛んでくる。
「ワタルくん!!」
それがワタルくんを狙っているように見えて、急いでワタルくんの前に出る。なのに、ワタルくんは私の腕を掴んで、背中に隠した。
パーン!!と破裂音が聞こえて前を見ると、ワタルくんが球を斬った音だと分かった。
「なっ!!」
あの人がワタルくんを見る。ワタルくんは足を止め、私が前に出ないように空いてる手で制していた。
「ワタルくん?」
「なぜだ!!そいつの父親が危険な力を見つけ、そいつはその力をその身に宿した。そして世界中に広まり、サクラ姫も力を付けた。だから、あの争いが生まれたんだぞ!?なら、そいつらを殺せば、戦いは終わる、そうだろう!?なのになぜ!!」
「そんなのは、関係ない。」
ワタルくんはきっぱりとそう言う。それから、私を少し振り返って頷いた。
「俺は、この子がいればそれでいい。」
「ワタルくん…。」
「ありがとうね、そら。おかげで正気に戻れた。」
そう言ってワタルくんは微笑んだ。良かった。役に立てたんだ。
「ふざけるな!!」
あの人はそう怒鳴る。それでも、ワタルくんは動じない。
「そいつを、そいつを殺せばこの世界は平和になる!そしたら、私たちはまた、親子に戻れる!また二人で暮らそうとは思わないのか!?」
「聴こえなかったか?」
ワタルくんは、低い声でそう言う。焦ってるわけじゃない。怒ってるんだ。
「俺には、この子さえいればいいんだ。だから、この子を殺そうとする人間は、必要ない。」
それを聞いた時に、何かが頭をよぎる。記憶とは、言えないかもしれない。なのに、懐かしいもの。
『俺には、ヒメさえいればそれでいいんだ。』
そう言った男の人と、前に見た夢の男の子、そしてワタルくんか重なって見えた。
ああ、そうか。御先祖様の記憶がなくても、残ってる物があったんだ。ワタルくんは、あの男の子なんだ。いつも、昔からいつも側にいてくれたんだ。
「ワタルくん…。」
「ごめんね、そら。手伝ってくれる?」
私が呼ぶと、肩越しに振り向いてそう言ってくれる。もちろんだよ。私たちはパートナー同士なんだから。
「うん、一緒に戦おう!!」
私がそう言うと、しっかり頷いて前を向く。
その時、頭の上に違和感を感じて上を向いた。
「これ…?」
そこには、私の真上を中心に、青空があった。これ、どういう事?
「そら?何したの?力が湧いてくるよ!」
「え?」
ワタルくんが困ったようにそう言った。え?これ、私の力?
『祈りを…。』
どこからな女性の声が聞こえる。でも、怖くなかった。何となくだけど、悪いものではないことを知ってるような気がした私は、手を組んで祈った。
「力を…。」
見てはいない。でも、確実に空から光が降ってきたのが分かった。
「はあ!!」
ワタルくんがあの人に向かって走り出す。でも、私はひたすら祈った。ワタルくんが強くなれるように、勝てるように。
それから、皆さんの事も考えた。サクラさんたち、アスカさんたちが勝てるように。
「…くっ!」
ワタルくんが戦ってる。私は、それを支援出来てるかな?分からないけど、大丈夫なのかもしれないって思う。
そして、前方での戦闘音が消えた。
「…っ!!」
気になって、前を見るとワタルくんがあの人の喉元に剣を突き付けてた。私は、急いでワタルくんの横に並んだ。
「あんたを親とは認めない。」
「そうだろうな…。」
檻の代わりの結界に入れる。
「ワタルくん…。」
私の言葉にワタルくんは少し寂しげに笑った。
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