第7話~儚い約束~

 本部長から、ワタルさんの事を聞いて、少し不安だけど、あの二人なら大丈夫と思って、二人の部屋には行かず、代わりにもう一つの目的地に向かう。それは、フウくんと一緒に特訓した場所。思い出の、場所。

 でもそこには先客がいた。

「あれ?サクラ、どうしたの?」

 フウくんは私を見るなりそう言った。

「フウくんこそ、珍しいね。」

「俺は別に、ただの鍛錬。」

「私も。」

 そう言って、お互いに少し個人で鍛錬をした。

「ねえ、久し振りに手合わせしない?」

 しばらくしてフウくんがそう言うから、びっくりして矢を一本外しちゃった。

 前はよく特訓の後に手合わせをしていた。一度も勝ったことはないけど、楽しかった。

「手合わせって、そういえば全然してないね。」

「そうそう。特に、サクラが記憶を取り戻してからはね。でもやっぱ、二人揃ったし、久しぶりにやりたくない?」

 そう言ってフウくんは真剣から光剣に持ち替える。これなら、相手を傷つけずに済む。

「いいよ、やろう!」

 そう言って私も矢をしまった。光の矢だけで勝負する。

「よし、じゃあ、はじめ!!」

 フウくんがそう言うのと同時に距離を詰めてくる。私も弓を構え、しっかり迎撃する。

「…っ!」

 全部外れたけど、想定内。次に使えるように早く矢を出すと、今度はフウくんからの反撃。

 けど、それは身のこなしで避けて間合いを取る。

「当たれ!!」

 そう言って今度はかなりの数を射るけど、全然当たんない。う〜、やっぱフウくん身のこなしきれいすぎるよ…。

「当たんないよ!」

 笑いながらそう言って矢を一つ壊してまで避けきるから、多分読まれてるんだと思う。でも、これなら!

「それ!!」

 矢も何もつがえない状態で弓を射る。

「何して…まさか!!」

 周りにはさっきから避けられまくった大量の光の矢。そう、最近習得した光の矢の『リサイクル』。本物の矢では出来ないけど、偽物でなら簡単にできてしまう。

「うわ!!」

 フウくんめがけてその全てを放つ。もちろん!フウくんは避けきれるわけもなく。

「ま、まいった!!」

「やった!!」

 フウくんに結構当てることが出来た。今まで当たったことがないからすごく嬉しい。

「わーい!初めて勝ったー!」

 素直に喜んでる私を、フウくんはまん丸い目で見ていた。

「サクラ、あれいつの間に習得したの?誰かから教わった?」

「私よ!」

 そう言ってアスカちゃんが入って来る。カエデも手を叩いて歩いて来て、全員集合って感じ!

「アスカちゃんにアドバイスもらったの。この前は使えなかったけど、ここまでスムーズに出来たら実戦でつかえるかな?」

「使えるだろ。なんせ、この中で一番回避能力が高いフウが避け切れなかったんだし、次使ってみろよ。」

 そう言ってカエデはフウくんを見た。フウくんは少し悔しそうだけど納得してるみたいだった。

「ほんと!?ありがとうカエデ!」

「で?サクラのあの集中攻撃、どんな感じ?」

 アスカちゃんがフウくんにそう聞くと、フウくんは真剣な顔で頷いた。

「うん、結構痛いし、まともに当たれば相手が行動不能になるんじゃないかな?あれって、もっと多く出来ないの?」

「う〜ん、気付かれるリスクを考えるとあれくらいが妥当だと思うよ。」

「そっか、ならもうちょっと離れた所に待機させて…。」

 そんな感じでフウくんたちが盛り上がったおかげで、色んな改良ができた。何回か試してみたりもした。

「なるほど、いいね!」

 最終形が完成した時、丁度お昼のチャイムがなった。もうそんな時間なんだ。

「あれ?思ってたよりも白熱してた?」

「かなりな。とりあえず、飯食いに行かね?腹減った。」

 その時、私のお腹が「ぐぅ〜」と恥ずかしい音を立てた。いつかみたいにフウくんが笑う。

「…聞こえた?」

「ん?可愛い音だなって思っただけだよ。」

 うう~、やっぱり聞こえてるんじゃん。

「さ、早く行きましょ!私もお腹空いた!」

 そう言ってアスカちゃんを先頭に、みんなで食堂に向かった。


 お昼が終わると、アスカちゃんとカエデは行く所があるらしく、すぐに出掛けてしまった。私たちは二人でこれからについて話してた。

「多分、次が最後だよね。」

「多分ね。むしろ、最後にしたい。」

「うん。」

 次が最後。主犯格の人間が予想外の人物で、少し戸惑ったけど、これでやっと終わるんだ。

「ねえ、サクラ。」

「何?」

「この事件が終わっても、俺と一緒にいてくれる?」

 フウくんは不安そうに聞いてきた。フウくんも、あの争いの結末を、知っているから。

「当たり前だよ。今度は、離れたくないから。」

 でも、本当はどうなるか分からない。護りたい人がいて、それと同時に、一緒にいたい人もいる。そして、それはそらさんも、皆も一緒なんだ。

「なら、約束して。最後の戦いが始まったとしても、俺から離れないって。」

 フウくんはそう言って身を乗り出す。あの争いで、命を落とす事を決めたのはサクラ姫で、でも、それ以上に、本当は生きたいと願っていた。なら今度は生きていたいと、私も思う。

「うん、分かった。約束ね。絶対に離れない。」

 私がそう言うと、フウくんは優しく笑う。あったかい、そんな笑顔。

 今度は約束するよ。何があったとしても、絶対にそばにいる。そして、そのあとも、一緒にいるって…。

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