第3話〜戦いと休息〜
良かった、アンジェロ王国の人たちは合流出来たんだ。そう思いながら戦闘をつづける。実のところ、状況はあまり良くなかった。
「くっ…!」
相手は主犯格の人間からの支援魔法もあって今までよりも強くなってる。一方こっちは今まで通りだから、押されてしまう。このままじゃ危ないけど、撤退の準備も出来ない。どうしよう…。
その時、今まで支援しかしていなかった主犯格が動き出した。その人が持っている剣が光ったと思ったら―
「サクラ!!」
「きゃあ!」
フウくんがそう叫ぶと同時に何かが飛んできて、それによって私は壁まで飛ばされた。
「…っ!!」
壁に激突して、そのまま倒れ込む。痛い。でも、立たなきゃ。そう思っても力が入んない。どうしよう…。
「サクラ!目を開けてて!!」
フウくんの声がして、そっちを向くと、フウくんは必死にベルゼブルを押さえ込んでた。アスカちゃんとカエデがこっちに来ようとしてるのに、ディーアブルに押されて来れないのも見えた。
目を閉じれば向こうに持っていかれる。それだけは分かってるのに、まぶたが重くなってく。
「サクラさん!!」
その時、誰も来れないと思っていたのに来てくれる人がいた。
「そら、さん…。」
そらさんが私に触れると、体の痛みやまぶたの重みが消えていく。ヒンメロ姫の得意分野。それは今も変わらないんだね。
「あの、大丈夫ですか?」
不安そうに聞いてくる。私は体を起こした。
「うん、ありがとう。心配をかけてごめんね。」
「いえ、そんな!でも、良かったです。お役に立てて。」
そう言って、本当に安心したように笑う。
「サクラさん!」
見ると、結界の中に居た人全員がこっちに走って来る。その時、もう一度あの人の剣が光った。
「危ない!!」
今度は私の番。走ってくる人たちの前に大きな板状の結界を張る。それと、私たちの周りにもドーム状のものを一つ。あの頃同じならあの人は、基本的に私たちしか狙わない。だから、この方法であってるはず。
「きゃあ!」
近くで悲鳴が聞こえる。私たちの結界が壊れたんだ。でも、同時に何が飛んできてるのか見えた。ワタルさんたちはなんとかこっちに来てくれた。撤退するなら、今だ。
「そらさん、防御用の結界を張れる?」
「は、はい!」
「じゃあ、アンジェロ王国の方々の周りにそれを張って。今から撤退の準備するから。」
「分かりました!」
そらさんはそう言って早速結界を張ってくれる。私はそこから出ると、フウくんたちへ通信を始めた。通信なら、相手には聞こえなくなる。
『フウくん、アスカちゃん、カエデ。出来るか分かんないけど、これから退路を開きます。戦闘は続けて、合図を出したら相手から離れて!』
『分かった。』
『OK!』
『サクラ、無理しないでね。』
『フウくん、ありがとう。そらさんのおかげでかなり回復したよ。それじゃはじめるね。合図は私が矢をつがえたら。お願いします!』
『了解!!』
それで通信は切れる。きっと上手くいく。だから、大丈夫。
「ほう、私の相手は姫か。」
「はい。」
そして、矢をつがえる。今度は、実物一本だけ。それを見て相手は笑った。
「そんな細い矢一本で私をどうにか出来ると思ってるのか?」
でも、そんなのは関係ない。みんなは充分に距離を取ってくれた。チャンスは一度だけ。
向こうの剣が光った。
「はっ!」
私は飛んでくる物めがけて矢を射る。命中して砕けたそれは禍々しい黒い球だった。
「な…!」
相手は急いで同じものを作ろうとする。でも、作るにはかなり時間がかかる。それを、私は見逃さない。すぐに光の矢を作り、相手全員に向かって射る。悲しいくらい当たらないけど、それで充分だった。
「撤退します!!」
それを合図にみんな走り出す。フウくんは私の手を引きながら誘導をしてくれた。
そのまま転移魔法で本部に戻る。町の人たちはみんなここに避難していて、町長の話だと殺された人はいないらしい。良かった。
「…っ!」
そう思った途端、全身の力が抜ける。慌ててフウくんが支えてくれた。
「まあ、あんな攻撃くらって、あんだけ魔力使ったら、そりゃこうなるよね。」
そう言って抱きかかえてくれる。
「ごめん…。」
「いいよ。」
フウくんはそう言うとアスカちゃんの方を振り返った。
「アスカ、ごめん。報告お願いしてもいいかな?」
「了解。一応、そらさんたちも来てもらった方が良いかな。」
「はい!分かりました!」
「よろしく。サクラと一緒に部屋にいるから、何かあったら連絡して。」
「はーい。じゃ、行こうか。」
そう言ってアスカちゃんたちは本部長室へ行った。
「俺たちも行こうか。」
「うん。」
抱きかかえられたまま私たちも部屋に向かった。
部屋に着くとベッドに寝かされてしまう。いつもの事ながらスムーズなんだよね。
「少し眠りなよ。最近色んな事あって疲れたでしょ?」
「でも…。」
寝たくない。寝て起きたらフウくんがいなくなってる気がして、怖い。
「…フウくん、どこにも行かない?」
「え…?」
な!わ、私何聞いて…!
そう思って訂正しようとしたら、フウくんは私の頭を撫でながら言った。
「大丈夫。どこにも行かないよ。サクラが起きた時、ここにいなかったら怒っていいよ。」
そう言って笑ってくれた。
「そっか、なら、いいや…。」
フウくんの言葉に安心して、眠気が襲ってくる。フウくんがいてくれるなら、それだけでいい。
「うん、だからおやすみ。いい夢見てね。」
「うん、おやすみ。」
フウくんが握ってくれる手がすごく暖かくて、私は眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます