夜の花

るる

1話完結

いま両手に大量のパンを抱えている私の名前は山田花子!よくいるありきたりの名前の

よくいないめちゃくちゃ元気な女の子!!

読書や勉強なんていらない!毎日笑顔で生きていく!

と、高校生活も中学と変わらず送るつもりだった・・・。

これも全部あの日が原因だ・・・。

ある日私は入学式に寝坊しそうになってしまい全速力で学校に向かっているときに曲がり角で人にぶつかってしまったのだ。

「いてえよ・・・いてえよ・・・」

倒れている男がぼそぼそずっと言っている。

しかも周りには髪色は金髪だったり茶色だったしてピアスはつけており制服は着崩している今までの私とは縁もゆかりもない「ヤンキー」という人たちが4人ほどいる・・・

「お前新入生か?大河さんに手だしておいてただで済むと思ってんのか!」

どうみても下っ端そうな一人がこちらにそう叫んでくる。

よく見れば制服が同じということに気付く。

私はどうすることもできずひたすらに「ごめんなさい。ごめんなさい。」と謝り続けた

途中からは涙も交じっていたように感じる。

なんせはじめてヤンキーに絡まれたのだからしょうがない。

「これだけ反省してるようだし女なんだしもう許してやれよ」

4人の中で一番顔の整った背の高い俗に言う『イケメン』という人がそう言う。

「おいおい拓斗まじかお前こんなぶすかばうのかよw」

下っ端がいきなり煽りだす。

するとそのイケメンの拳が気が付いたら下っ端の顔にめり込んでいた。

「女に向かってぶすとか鏡見て出直せ!!」

とそう下っ端に言っていた。

不覚にも「かっこいい」そう思ってしまった。

「あ、でも俺はかっこいいからいうけどぶすだと思う」

はああああああああああ???????????

さすがに意味が分からない。

わたしの「かっこいい」って気持ちを返せ!

そう思っているとリーダーらしき人がもう起き上がっていて

私に向かって「死ぬか俺らの舎弟になるか選べ」

と、そういってきた。

私はしぶしぶ舎弟になるしかなく

「舎弟になります・・・」

と答えてしまった。

このとき殴られてでもいいから断るべきだったのだ。

こうしてわたしのくらいくらーい学生生活は始まったのだ・・・。

そして舎弟になって一週間たった今日までずっと頼まれたパンを買ってくる作業

をひたすらにしてきた。


今日頼まれたのは~と思いながら授業終わりのチャイムを聞きながら、メモを開くとそこには

「焼きそばパン2個メロンパン3個コロッケパン1個本日限定スペシャルビッグソーセージロール20個」


私は目を疑った。2個を見間違えたかと思って何度も見るが「20」と書いてある。

ゆっくりしてられないと全速力で教室を飛び出し購買まで走る。

何人かを抜き去りながら私は無事にすべてのパンを手に入れることができた。

みんなには申し訳ないが私だって手に入らないとなにされるかわからない、早い者勝ちの世界なのだ。

無事に大河君にパンを渡すと驚いた顔をしていた。

大河君だけじゃなくみんな驚いた顔をしており誰一人買ってこれるなど思っていなかったのだ。

すると拓斗君がいきなり笑い始めた。

「流石は大河さんをブッ飛ばす怪力女だw」

そう言って私に本日限定スペシャルビッグソーセージロールを2つ投げてきた。

「これだけ買ってこれたお礼だ!感謝して食べろよ!」

そういわれたので一口食べたのだがまあびっくりするほどおいしかった。

私にはこんなにおいしいもののためなら頑張れると思うほどだった。

私はそんな感じで最初の1週間を乗り切った。

今日は休日だ。なのに何もやることがない。

しかも家族は泊りがけで遊園地に行くらしい。

私を置いてだ!意味が分からない!!

それでもあいつらにこき使われなくて済むってことを考えたら幸せだ。

最近あいつらのとこにいるせいで友達と遊べていない。

むしろあいつらに絡まれているせいで友達ができていない・・・。

そんなことを考えていると携帯が鳴った。

もしかしてあいつらじゃ・・・とおそるおそる開いてみると、中学時代の友達からのメールだった。

内容を見ると『さっきかわいい男の娘に話しかけられたの!迷ってたみたいだから道教えてあげたの!それだけ!』とわけのわからないものだった。

そんなこともあるんだなあ・・・と思っているとメールの下のほうに『あ!聞かれたの花子の家だから!』と書いてありその瞬間インターホンが鳴った。

嫌な予感がしてドア窓から向こうを覗くとうちのグループで一番かわいい真冬くんがそこに立っていた。

その時私はなぜここに真冬君がいるのかわからなかった。

真冬くんはめちゃくちゃかわいい。制服を着ていなければ男か女かなんてわからないし、なんなら女としてもトップクラスにかわいい。

そのかわいさあってのことか学校ではファンクラブが結成されるレベルだ。

が、しかし真冬くんの本性はえげつないくらいのドS野郎だ。

ひどい時などごみを扱うかのように私に対応してくる。

そんな天使風悪魔系男子の真冬くんがなぜここに。

私がこうして考えている間にも真冬くんはずっとインターホンをならしてくる。

こいつには「留守」とか「諦める」という文字はないのだろうか。

私はしょうがないと思いながらもドアを開けると

なにか言葉を発する前に真冬くんがダッシュで家の中に入ってきた。

私はおどろいて「なんなの!?」と叫んでしまった。

すると真冬くんは天使のような笑顔で「かくまって」と言ってきた。

「どうしてなんですか?」

「君も知っての通り僕にはファンクラブがあるよね」

「はい」

「そのファンクラブの子たちに家がばれてしまってね」

まあそんな気はしてましたよ。

「つまりそういうことだよかくまってくれ」

なんなんだこの人は。いきなり嫌に決まってるじゃん。

「いやです」

「なんでだい?」

説明するまでもないだろなんでわからないんだこの人は。

「いや、それって拓斗先輩とか大河さんの家行けばいいんじゃ・・・?」

「彼らの家ももうばれているから張り込みがいるだろう」

「だから花子!君しかいない!君にかくまってもらいたいんだ」

よりによって家族のいない日に来たのでかくまうことはできる。

ここで断るとこの悪魔は後が怖い。しょうがないかと思い、

「わかりました、じゃあ夜までには帰ってくださいね」

「はーい」

そう、けだるげに答える真冬くんは少し笑っていた。

もう夕飯の時間になろうとしていたので私はキッチンになにか夕飯の食材があるか確認したがまあ何もない。

あの親は私に餓死させるつもりだろうか。

しょうがないので真冬くんに買い出しに行ってくることを告げ私は買い出しに向かったのだった。



花子が出かけた頃家の中の真冬は……


僕は今花子ちゃんの家にいる。

しかも一人で。

心臓ばくばくでもうどうしたらいいかわからない。

僕は花子ちゃんが好きだ

だから花子ちゃんにかくまってもらいに来た。

わけのわからない理由が通って家にいれることになってのはいいけど、家族はいないし一人にされるしもうわけわからない。

無理やり押しかけてしまって迷惑かけてないかな。

花子ちゃんには優しくしよって思ってるのになぜか花子ちゃんにだけ優しくできない。

なんて考えていると『HANAKO』と書かれた看板のある部屋を見つけてしまった。

少しだけでも花子ちゃんに慣れたくて花子ちゃんの部屋を覗こうと決めた。

まるで犯罪者にでもなったかのような気分でドアを開けるとそこには女っ気が溢れた空間が広がっていた。

「わあ・・・」とおもっているとドアの開く音が聞こえた!

やばいと思いとっさに部屋の机の下に隠れてしまった。

ばれたら確実に変態扱いされてしまう・・・。

そう思っていると足音がだんだんこちらに近づいてくる。

部屋のドアが開き終わったと思ったその瞬間見えたのは土足の男の足だった。

僕はとっさに男を蹴飛ばしていた。

男はふらつき、ベットに足をぶつけ転倒してしまった。

その瞬間男の顔がちらりと見えた。

その男の人はサングラスにマスクをしており僕を見るや否や一目散に家から飛び出していった。

いきなりのことに理解できず、ぼーっとしていると花子ちゃんが帰ってきた。



なんなんだこの状況は。


私はスーパーに行って晩御飯になりそうな惣菜を買って帰ってきただけのはずなのに、なんで部屋まで泥だらけで家具が散乱してるんだ。

真冬くんは半泣きで何言ってるかわからないし。

なんなら真冬くんが少しいつもと違って見えた。

真冬くんは半泣きになりながら説明してくれた。

どうやら空き巣らしきものに入られたらしい。

そういえば鍵をかけた覚えがない。

私のせいじゃないか・・・。

真冬くんがいてくれて本当に助かった。

真冬くんがいなかったら今頃どうなっていたかわからない。

そんなことに再度恐怖を感じ私は真冬くんに「帰らないで」と言ってしまった。

しかし真冬くんの答えは意外で戸締りにだけ気を付けるように告げるとそそくさと帰ってしまった。

かくまうとかそういうのはもういいのだろうか。

そう思ったが冷静になると男といるのもどうかなとおもったので中学時代の友達に電話をかけそのまま寝落ちしてしまった。


朝目が覚め新聞を取りに玄関先のポストに向かうと、ポストの下でだれかが寝ている。

おそるおそる顔を確かめに行くと

それは昨日帰ったはずの真冬くんだった。

真冬くんを起こして問い詰めるとどうやらポストの前で一晩中あの空き巣が戻ってこないか見張っていてたようだ。

私は真冬くんにお礼を言うと何も言わずに真冬くんは帰ってしまった。

それから2ヶ月経ったが私は今も何事もなかったかのように大河君や真冬くん拓斗君の良い言いなりになっている。

しかし前のようにパシリにされているわけではなく最近では「一緒に昼飯を食べる」など

すっかりヤンキーグループの一員になってしまった。

そしていつものように昼ご飯を食べていると少し遠くで誰かの叫ぶ声が聞こえた。

その声に驚き私たちは走って現場に向かうと

初めて私がこの人たちとぶつかったときにいた下っ端と、拓斗君が言い争っていた。

「お前今なんて言った」

拓斗君が見たことない表情で下っ端の胸ぐらをつかんでいた。

「だから花子とお前らはお友達かよって言ったんだよ!!」

「このくそが・・・」

拓斗君はボソッとそう呟くと叫び声に集まってきた群衆をかき分けどこかへ行ってしまった。

「今の話本当か」

大河君が下っ端に近寄り問う。

私もそれについて行く。

「そうっすよ大河さん。だって最近おかしいじゃないですか!そいつは俺らの舎弟っすよ!?なのに大河さんも拓斗も真冬くんもまるで友達のように接して、俺は認めてないんすよ!」

下っ端の言うこともわかる。元々私はこいつらの舎弟だ。

私はそれを思い出して少し胸が痛んだ。

「頭冷やせ!!」

大河君が叫ぶと下っ端はそっといつのまにか私たちの前から消えていた。


「ごめんな花子」大河君が頭を下げる。

「光輝はそんな悪いやつじゃなくてつい感情高まって言ってしまっただけだと思うんだ。どうか許してやってほしい」

まあ本当のことなので私は怒ってるわけでもないので普通に許す?ことにした。


「いや、こないだは、ほんと、すまなかった」

後日光輝君が頭を下げて来た。

どうなら大河君にめちゃくちゃしごかれたようだ。

「そんなことないです!本当のことしか言ってないので何も気にしないでください」

とニッコリ答えた。

そういうといきなり光輝君は私の手を握り

「俺はいまドキッとした。なんだその天使ような笑顔は!俺はいま花子に惚れた!花子!俺と付き合ってくれ!」

なんなんだこの人は。

いきなり惚れたなどわけがわからない。

私はパニックになり

自分の顔が火照っているのが自分でもわかった。

「す、少し考えさせてください!」

私はそう言ってその場を去ってしまった。


次の日学校に行くと門のところに険しい顔の大河君とこちらに手を振っている光輝君がいた。

「なんでここに俺たちがいるかわかるよな?」

そう大河君が険しい顔のまんま口を開く。

「いやわからないです…」

「こいつがお前に惚れてお前と付き合うって言い出したんだ。

それについてリーダーとしてお前の気持ちを聞こうと思ってな」

そう言いながら大河君は光輝君の顔を力強く握る。

「んご、んごごぉ、んごぉ」

「ごめん光輝君それはなんて言ってるかわからない。それといまの私には光輝君の気持ちに答える整理がついてないからもう少し待ってください」

「ぷはぁ!ってことはもう少し待てば付き合えるってこと!?!?」

大河君の手を振りほどいた光輝君が笑顔でこっちを見てくる。

「いや、そんなことないです」

とはっきり断ると大河君も少し笑顔になり、そのまんま教室にみんなで向かった。


その後3年生の教室では大河が1人で考える。


そういえばあいつ花子のこと嫌ってたんじゃなかったかなあ…。


そんなことを思い出し、確認がしたく、大河は1人で2年の教室に向かい、光輝を引っ張り出す。

「お前花子のこと嫌ってたんじゃないのかよ」

大河が詰め寄る。

「嫌ってません!花子ちゃんがだいすきです!」

「じゃあなんであの時お友達かよとか言ったんだよ」

ついに光輝の胸ぐらを掴む。

「あれは、みんなが花子ちゃんと仲良くしてるのが羨ましかったんです!」

「はあ…」

大河の力が抜ける。

「そ、それでお前はあんな大ごとにしてたのか…?」

「だって羨ましいんすもん!拓斗さんはめっちゃ花子さんのこと裏で話してくるし真冬くんなんて家行ったことあるんすよ!?大河さんだって仲良く喋ってるとこよく見るし負けてるみたいで悔しかったんすもん!」

「それならそういえばいいだろ。なんなんだお前は」

「すいません…」

「とりあえずまた放課後な。呼び出してすまなかった」

「はい…」

そう言ってしょんぼりした様子で光輝は教室に戻って行った…。


私は久しぶりに、パンを買いに行かされている。

こんなパシリとして使われるのはいつ振りだろうか。

最近は友達のように接してもらっていたからつい友達感覚でいた。

そういえば私はパシリだ完全に忘れていたのを光輝君との一件で完全に思い出した。

いつものように両手にパンをかかえてると、曲がり角で誰かにぶつかった。

「すいません!」

そう謝った後ぶつかったであろう男子生徒の顔を見るとそれはよく見知った拓人君であった。

「ん?ああ、ちょうどよかったお前を探してたんだ」

拓人君がそう言って私に近づいてくる。

「はい…?なんですか…?」

「一緒に隅田川の夏祭り行こう!」

「はあ…いいですよ…?」

「いいのか!?ありがとう!それじゃ明日夜7時に家に迎えに行くから!それじゃあまた明日!」

そう言って拓人君は目の前から颯爽と走り去って行った。

しかし夏祭り一緒に行こうって…。

しかも隅田川の夏祭りは花火がたくさん上がるかなり大きなお祭りだ。

これはいわゆる『デート』というやつじゃ無いのか?

学年…いや、学校1のイケメンである拓人君とデートなんて拓人君のクラスの女子に知れたらどうなるだろうか。

八つ裂きにされる。間違いない。

校門での一件以来、光輝君と一緒に遊ぶことはあっても2人ではなく拓人君や真冬くんが付いてきており2人で遊ぶことなんてなかった。

なのに今回いきなり拓人君と2人でデートなのだから胸がドキドキする。

どんな風に接すればいいのだろうか…。

まず拓人君はなぜ家を知っているのだろう?

真冬くんに聞いたのだろうか。

そんなことを考えるうちに祭り当日の放課後を迎えてしまった。

私は急いで家に帰り、着くなり私は大慌てで、母に「お母さん浴衣貸して!!着付けて!!」と頼み、自分で言うのもあれだけどそれなり可愛い浴衣少女になれたような気はする。

浴衣なんて着たの小学生ぶりで少し照れくさいが、せっかくのデートなのだからちょっとくらいおしゃれしてもいいかなと思い、普段しないような化粧も母に教えてもらい、薄化粧をして、家に迎えに来ると言っていた拓人君を待っていた。

10分ほどするとインターホンが鳴った。

夜7時ちょうどだ。

少し恥ずかしく下を向きながらドアを開けると、

「かわいい〜〜!!!!」

と明るい声が聞こえた。

しかしこの声は拓人君の声では無い。

拓人君を押しのけ私の前に立っていたのは

光輝君だった…。

「あれ…?なんでいるんですか…?」

私は拓人君だけだと思っていたので驚き、口を滑らしてしまった。

「なんでそんなこと言うの?聞いてなかった?今日は僕たち5人で遊びにいきまーす」

そう軽々しく光輝が口にする。

その時横でニヤニヤしてる真冬くんと、

『ごめん』って顔してる拓人君と、

奥の方で全てを察した顔をしている大河君。

デートなんかじゃなく普通にこの5人で遊びに行くだけか…。

デートだと思って気合入れた自分がばかみたいに思えて来る。

もうここまで来たら楽しむしか無い。

「さあ夏祭りに向かいましょう!」

と元気に声を出して私達一行は夏祭りに向かった。


夏祭りに着くといきなり光輝君が目を輝かせ走り出した。

それを見かねたかのように大河君が「おい待てばか」と言いながら光輝君についていった。


「あの2人元気ですね…。」

私はもうここに来るのにたくさんの人混みに飲まれてヘロヘロだ。

「大丈夫か?」

そう言ってくる拓人君の手にはどこで買ったであろうかお茶を持っていて。

お茶を手渡された。

なんなんだろうかこの人は見た目だけじゃなく中身もイケメンじゃないか。

そう思っているとこちらを見てヒソヒソ言っている女の子の軍団があった。


どうやら私達2人ではなく真冬くんを見ているようだ。


それを真冬君に告げようとすると女の子と大軍がいきなりこちらに向かってきた!


真冬くんはそれにいち早く気づき反対側に全力疾走した。

女の子の軍団はそれを追いかけるかのように私と拓人君の横を走り去っていった。


気がつくと私は拓人君と2人になっていて

実質デートだと思いクラスの女子にビクビクしながら歩いているとりんご飴を見つけて。

「りんご飴だ…」

と呟くと、

「ちょっと待ってて」

と言って拓人君がりんご飴を買ってきてくれた。

そしてりんご飴を渡す時、

「そんなに俺と2人楽しくない?」

と真剣な顔で言ってきた。

「え?いやそんなことないけど…」

「じゃあなんでそんな楽しくなさそうなの?」

どうやら私が周りに怯えてるのを楽しくなさそうと思ったらしい。

「いやでもほらクラスの子に見られたら勘違いされるかなって…。拓人君イケメンだし!」

「別に俺は勘違いされていいんだけど…」

拓人君がボソッと呟く。

「え?それってどう言う…?」

「いやだから俺はお前のことが…!」

『ドーーーーーン!!!!』

いつのまにか花火が上がる時間になっており

空一面に花火が咲いていた。

「え?拓人君今なにか言った?」

私がそう聞き返す。

拓人君は頰を赤らめて、

「何もねえよバーカ」

そういうと、木の陰から、

「そうそう何もないよ〜〜」

と光輝君の声が聞こえた。

「ちょ、お前いつからそこに!?」

拓人君の顔が余計赤くなる。

「いや?なんか『楽しくない?』の所から」

「だいぶ最初じゃねえか…大河はどうしたんだよ…」

「ここにいる」

と光輝君の横の木からひょっこり出てきた。

「僕もいるよ!」

その声は私の後ろから聞こえ振り向くと

そこには先程の女の子軍団から逃げたため木屑や葉っぱが服にたくさんついている真冬くんが居た。

「ファンクラブの子達やっぱり怖い」

と真冬くんが呟く。

それを見て私はつい、笑ってしまった。

笑ってる私につられたのか、

大河君も拓人君も光輝君も真冬くんまでみんなで笑っていた。


何だかんだパシリと言ってもほとんど友達のように接してくれてこの人たちは優しい。

そんな風に思いながら感謝の気持ちを込めて

「皆さんほんとありがとうございます!私皆さんのこと大好きです!!」

そういうとみんな驚いた顔をした跡

笑顔で「「「「俺たちも好きだよ」」」」

そう言ってくれて照れ隠しで

「今後ともよろしくお願いします!」


夜空には満開の一輪の花が咲いた。

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