第6話



 目を覚ますと、私は泣いていた。


「なんで…、泣いてるの……?」


 …リュウリィは、どうなったの?『私』は、何をしていたの?

「あれは…」


 …私の記憶……?


「…っ、でもっ」

 私は布団を掴み、がばっと起き上がる。

「私は『来』だ。鳴上…来…。なのに、でも…っ!」

 …あれっ⁈

「私は…『ライラック』…」


 …どういうこと?私は私で、日本人の高校生で…でも、夢だと思ってたあの世界のライラックも、私…?

「頭が…痛いよ…」

 私はバフッと後ろに倒れる。


 一緒に戦っていたのは、幼馴染のリュウリィ。優しくて、料理がとても上手で、私が大好きだった人。

 …あの時私は、ポーションも切らして、回復の魔法を使う魔力も残ってなくて…。

 だから、…小さい頃に絵本で読んだ伝説の勇者の物語に出てくる、あの魔法を、姫が勇者と再び逢えますようにと願い、祈り、掛けた魔法を…。…私は…


 リュウリィと、…私自身に、…掛けた。


「それじゃこれは…」


 成功…したってこと?


 …物語の、それもハッピーエンドのための、存在するかもわからない『魂を転生させる』魔法。でも…縋りたかった。…もう一度、どんな姿でも、あの人と…逢えるなら。

「けど…」


 自分の両の掌をじっと見つめる。

「まさか…本当に、転生できるとはね…」

 正直、まだちょっと信じられない。だってさっきまで、普通の、16歳の、日本人の、高校生だったんだ。

「まだちょっと混乱してるよ…」


 取り敢えず、


「身体、治さなくっちゃね」


 あの人を探すのは、元気になってからにしよう。

 私は布団を手繰り寄せ、再び潜り込む。遠い記憶の彼の笑顔を思い出す。


 ああ、リュウリィ。早く貴方に逢いたい。



 伝えたいことが、沢山あるんだ。

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