世界を越えて、時間も越えて。
書き物うさぎ
プロローグ
レンガ造りの建物。人のざわめき。
コツコツとテンポ良く響く靴音。
遠くから聞こえる、夕刻を知らせる鐘の音。
どこか異国情緒溢れる大きな都市の街中を、鮮やかな紫色の髪を揺らして少女が歩いている。
少女は片手には買ったものが入った紙袋を抱え、空いた手には赤い果物を持ち、それを見せながら隣を歩く少年へと話し掛ける。
「ねぇねぇ、さっき貰ったこれ、どうしよっか?」
少年は彼女の方へ顔を向けつつ答える。歩く時の振動で、彼の綺麗な金色の前髪がピョコピョコと弾む。
「うーん…そうだね。そのままでも良いと思うけど…バターと砂糖、スパイスを少し効かせて、焼きリンゴなんてのはどうかな?」
「っ!焼きリンゴ⁈美味しそう!」
少女の顔がパッと華やぐ。
「決まりねっ!作ってね!…ふふふっ、楽しみっ!」
少女は走りながら、その喜びを全身で表しくるくると回る。
嬉しくて堪らないらしいその様子を見て、少年からも思わず笑顔が溢れた。
「………」
…ああ。また、あの夢か…
私はむくりと重い身体を起こし、うーんと背筋と腕を伸ばし伸びをする。
首を回すと、カーテンの向こう、ベランダに面した大きな窓からは、何時ものような朝の光が差し込んでいた。
朝だ。現実だ。…けど
「はぁ…」
…私の頭の中は、いまいちはっきりとしていなかった。
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