エピローグ
エピローグ
エピローグ~
気がつくと、わたしとヴェドラナとミティアくんは、漁船に乗って浮かんでいた。
「ノギク。ここ、海、海だよな! 何でだろう。懐かしい感じがする」
ミティアくんはちょっとはしゃいじゃってる感じ。
大ケガしてるんだから、安静にしてた方がイイぞーう。
寄せては引く波に揺られている。
知っている潮の香り。ここ、気仙沼の海だわ。
「お兄ちゃーん。お姉ちゃーん。聖女様~」
ちょっと離れたところの船に、イナちゃんも確認。
船、船、船、リュヴドレニヤの人たち、みんないるわ。
少しだけ、不安がよぎったわ。
これからわたしたち、どうするの? って。
でも、
わたしは、すぐに天空に
来て、くれた。
機械の音。プロペラが旋回する音。わたしが子どもの時に聴いたことがある音。
今回は一つではなく、
ヴェドラナが眩しそうに天に輝くたくさんの救助ヘリを見上げた。
「国連の救助隊。こんなにも、たくさん……」
「ピンクの、手帳……」
ヘリコプターには国旗が塗装されていてね。日本の救助ヘリだけじゃない、
「ミティアさん」
ヴェドラナが口を開いた。
「この世界には、
「わたしも、もっと防災のこととか研究するわ」
世界中に息づいていた、善意の雨が降る。
わたしたちの世界は、あまりに大きな破綻的な出来事があったからこそ、防災と救助に関してはこの十年がんばったんだ。
二万人の、負傷した者や火傷を負った者をふくめた避難民が、船に乗って気仙沼沖に突如として現れるなんて空想めいた話を、世界は信じてくれた。
ヘリコプターからロープで降りてくる人たちはみんなこういう時のために
救急隊員、医師、看護士、あまたの「あの人」が舞い降りてくる。
ただ、困ってる人を助けたいっていうフツウの
救急医療のネットワークが通信で瞬時に世界中に広がっていく。大丈夫、すぐに病院が受け入れてくれる。ケガをしている人も、やけどを負っている人も、もうちょっとだけ安静にね。大丈夫だからね。
海上には、皇帝さんも、王様もいるわ。
さらには、ドラゴンも、モンスターたちも、何だか不思議な生き物とかもやってきちゃったけれど、あんまり気にしないことにするわ。きっと、なんとかなるでしょう。
まずは、傷ついた人たちの手当てをしなくっちゃね。きっと色々忙しくなるわ。
できるだけ余裕を大事にしながら、丁寧にやっていきましょう。
ここは。
「究極の魔法」がないのに、戦争が、災害が、貧困が、病気が、悲しいことがたくさんある世界だけれど。
それでも。
この日降った慈しみの雨は優しかったから、わたしとヴェドラナは、この時だけは胸を張りましょうって思ったの。
陽が昇る。
光の中で。
前を向いて。
さあ。
いっしょに、顔をあげよう。
わたしとヴェドラナは、ミティアくんたちに手をさしのべた。
「「この世界へ、ようこそ!」」
/『少女輪廻協奏曲 ノギクとヴェドラナの愛』・完
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