第15話sideカーティス
初めて会った従妹。ダリアは叔母のフローレンスと瓜二つだった。燃えるような赤い髪、意志の強い翡翠の瞳。雪のように白い肌。あどけなさは残るものの叔母と同じで、将来は確実に美人になるだろうと思わせる風貌だ。
しかし、ベッドに寝かされている今は健康的なところは一切見られず、そのまま儚く消えてしまいそうな印象を与える。
まるであっさりと全ての者の手からすり抜け、消えてしまったフローレンス叔母上と同じように。
彼女の身に何があったのかは全て報告が上がっている。
抱き上げる際には背中の傷に触れないように気を付けた。
女性を抱き上げるのは初めてだった。それでもこんなに軽いものなのかと疑ってしまう程彼女は軽かった。
足には幾つも豆が潰れ、血が滲んだ後があった。見た目からも分かるように治療の類いは一切されてはいない。
彼女はその足を醜いと言った。醜いものか。この傷は、痛みと苦しみに耐えながらも決して屈することのない。王族の高貴さの証。
なぜもっと早く、彼女を迎えに行けなかったのかと。悔やまれてならない。
隣国の王族の血を引くものを蔑ろにするなどという愚行が許されているとは思わなかった。その考えの甘さが今回のような悲惨な状況を作り上げたのだ。
ダリアを残して国に帰ってきた使用人は全員、クビにした。王族に忠誠を誓うのは悪いことじゃない。けれど、一人にしか忠誠を誓えず、あまつさえ主の子を蔑ろにする。そんな使用人は必要ない。
あのバカ親子はダリアの作法がダメだと言っていた。だが、他の令嬢よりも作法ができている。
ダンス同様、かなり厳しく(憂さ晴らしの為の)教育をさせられたんだろう。おかげで、どこに出しても恥ずかしくない令嬢にダリアはなっていた。
ダリアを教育する前に自分と自分の娘をすればいいのに。まぁ、頭のできが違うので無理だろうが。
ダリアは表情の乏しい子供だった。感情の起伏もあまりないようだ。これまでの環境が影響しているのだろう。可哀想なことだ。
このエストレアで人間らしい表現を取り戻せることを切に願う。
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