再会
少し驚き、次の言葉を発せないでいると
「まぁ、言いたい事もあるだろうがとりあえずあってくれないか?」
僕は、伊藤さんの言葉に首をかたむける。
ワンボックスカーの、後部座席のドアが開く。
僕は、そのドアへとまだ収まりきらない感情のまま目をむける。
「あ!君はあの時の!」
そこには、夏最後の全国大会の時声をかけてくれた子がいた。
「こんにちは!お久しぶりです秀太さん!」
続けて少女は、
「この前は自己紹介もせず、すみませんでした。
私、新井楓っていいます!」
新井?もしかして新井って…まさか!
「もしかして君って…」
楓ちゃんは察したように
「はいっ!新井渚の娘です!」
「えーーーーーーーーーーー!!」
「うるさいぞ秀太」
「だって、新井渚さんっていったら日本の短距離女子のレジェンドじゃないですか!!」
僕が陸上を始めた当時、全国の陸上ファンに「日本短距離界のトップは?」等の質問をすると、男子短距離のトップが僕の師匠伊藤さんで、女子短距離のトップは新井さんと殆どの人が答えるほど絶対的な存在だった。
しかし、陸上競技引退後彼女は、表舞台から姿を消した。
だけどなぜその娘さんが?と疑問に思う。
「でも今日は一体どうしたの?」
気になったので聞いてみると
「秀太さん覚えてます?私に走りを教えてくれるって言ったこと」
「うん、勿論覚えてたよ。だけど僕よりお母さんに教えてもらった方がいいんじゃない?」
渚さんの方が僕なんかより技術的なことなど、多くのことを知っていると思うし、親子ということでいい雰囲気で練習できると思うのだが
するとなぜか楓ちゃんは少し焦ったように
「あっ!えーっと私お母さんより、秀太さんに教えてもらいたいなーって。私が陸上をしたいと思ったキッカケの人ですから!」
「そうなんだ、そう言ってもらえて嬉しいよ!だけど、楓ちゃん陸上経験ないんだよね?」
お母さんに一度も教えてもらったりしなかったのかなと、僕は思う。
「…もう隠せないか。」
何か決心したような表情でそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます