29.傷

知ったふうな口を利くのは 何も知らないから

何もかも知っていたら きっと どんな口も利かないで済む


もし 話してくれたら 力になろう

もし 言ってくれたら 親身になろう


そんなふうに思っていても 何も知らないから 口に出せない


何もかも話してくれなくていい

でも 何かしらでも知れたらと思っていて・・・ 


手を差しのべても 掴んではくれないだろう


それは さっと隠した右手に握られていた物の所為?

それは さっき隠した左手首に付いていた傷の所為?


手を取ってと 掴んでと いくらでも願うけど

口には出せないから 思うしかない


何か話してと 言ってと そう思っているけど

何も言えないから 願うしかない


知ったふうな口を利いてもいいのなら 何を言えるだろう

せめてもの言葉として 何と言ってあげられるのだろう


掛けられたい言葉などないかもしれない でも・・・

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