12.夢見人

道なりに歩く事が不得手な私は 道の上に何か自慢できるものが落ちていないか探しながら歩いている

私の中にはそういったものがないから 夜の目も寝ずに 心して探している

それでも死なない為に眠る私だから 意図して死ぬ事から逃げたこの私としては 夢の住人となった時ぐらいは得意になっていたい――


何光年も先にある星にしか咲いていない花を摘んで 人に自慢したい

話にしか出てこない死んだ人を蘇らせるという石を拾って 人に自慢したい

朝日や夕日 木漏れ日や星の瞬き それら道を照らす光を束ねて 人に自慢したい


覚めた目を開ける前 一瞬躊躇してしまうのは どうしてだろう・・・


きっと私は探すのも不得手だ 自分の中には自慢できるものがないと決め込んで あるはずのないものばかり探している

いつしか道を歩く事もやめてしまった

道なりには歩けずとも 歩き続ければそれだけで意味があったかもしれないのに・・・


そのうちに雲の中に何か自慢できるものがないか探し始めるようになった私は

自分が飛べないことも忘れて 自分が鳥や星になる夢を見ながら 得意満面になっていた


私の手には 花も石も光さえも握られていて

にもかかわらず 私がその中の一つでも自慢することはなかった

なんと私はそれらをすべて自分のものにしてしまおうと考えたのだ

その所為で 花は枯れ 石は砕け散り 光を束ねていたリボンは解けてしまった


覚めた目を開けた後 すぐに手の平を眺め入るのは どうしてだろう・・・

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