忘れない事

第1話

「ここはどこ？」

「目を開けてみて」

「うん」

目を開ける。

「あっ、君は？」

「うん、思い出してくれた？」

「いつも会ってるよね」

「うん、君の夢の中でね」

目の前にいる一人の女の子。

夢の中では、いつでも会っている。

「ならここは、夢の中」

「違うよ。ここは現実の世界」

「現実の？」

「うん、でも君の住んでいる世界とは、違うけどね」

少女は微笑む。

「で、君は一体何者なの？」

「私、いつも会ってるけどね」

「夢の中でだと？」

「違うよ、他の所でしょっちゅう会ってるよ」

「どこで？」

彼女は、出窓を指差す。

そこには、僕がコレクションしている美少女フィギュアが並んでいる。

「なら、君は？」

「そう、秋山美和よ、雅士くん・・・だったよね」

「そうだけど・・・」

驚いた・・・２次元の世界が、平行しているのか？

でも、立体化になっているから、２次元ではないか・・・

「実は君を迎えに来たの」

「僕を」

「君は今、疲れきっている。違う？」

「確かにそうだけど・・・」

どこへ連れて行く気だ？

「私たちの世界よ。そこで、君を癒してあげる」

「僕を」

「うん、もちろん永久にではないけどね」

「でも、そしたら・・・」

ここの時間軸はどうなるのか？

「大丈夫、ここの時間は止めておくわ。

アニメのキャラは歳を取らない。なので、私たちの世界では、君は今のままよ」

「僕のまま？」

美和と名乗る少女はうなずく。

「さあ、行きましょ。但し条件があるわ」

「恋愛感情は持つな？」

美和は、首を横に振る。

「必ず帰れ？」

また美和は、首を横に振る。

「じゃあ、何？」

美和は言う。

「私たちの事を、忘れないこと」