シナリオ

@ktanaka1111111

ソルト

うす暗い部屋で一人の少年が食事をしていた。

少年は食が進まないらしく、ゆっくりともたつきながら食べている。

テーブルには肉とポテトサラダ、スープ、コップに入った水が並べられ、

少年はナイフとフォークを使って肉と格闘している。

少年は味がいまいちだったようで、そばに置いてある塩の小瓶に手を伸ばした。

するとその時、ぼんやりとした意識のせいか、取り損ね小瓶を横倒しにしてしまった。

少年はギクリとした。刹那小瓶がテーブルから落下するのを防ごうと手を伸ばそうとした。

しかし幸いにも小瓶は横倒しになっただけで落下しなかった。

ホッと一息つき、のろのろと倒れた小瓶を元に戻そうとすると、ピィピィと下から音がした。

なんだこの音は?いやこれは、鳴き声?まさか?なぜ?

なぜこんなところから鳴き声が?どこかから鳥の雛でも迷い込んだか?

ゆっくりとテーブルから床を覗き込むと、そこには、予想もしないものがあった。

そこには小さな竜の子がいた。いや少年は竜などみたことがなかった。いやそもそもこの世に存在するなんて思ってもみなかったので、これが竜かどうかも定かではなかったのだが、確かに竜の子のような生き物が床でピィピィとこちらを向いて鳴いている。

竜の子はパッと見るとワニとトカゲのあいの子のようにみえた。

しかしその背中には小さいながら翼が生えている。

竜とは言ってもまだ小さく愛くるしい表情をして盛んに走り回りながらピィピィと鳴いている。

少年は考えた。なぜこんなところに竜の子が?それも突然に。

そこでハッと思った。そうだ、小瓶を倒した後だ。倒した後に鳴き声が聞こえた。

とすると、この小瓶のせいではないか?

少年は床を見た。するとわずかだが先ほど小瓶が倒れた際に少量の塩が溢れたらしく、砂つぶ大の白い粒が無数にある。

もしや、、、と少年は思い、恐る恐ると塩の入った小瓶を手に取り、そして床に一振り塩を振って見た。

するとボワンと白い煙が小さくたった後、もくもくと昇り立つ煙からうっすらと同じような小さな竜の子が姿を表した。

しかし先ほどとは色が違うようだ。先ほどの竜は緑色。今度のは黄色がかった色をしている。

再度少年は床に塩を振りまいて見た。今度はオレンジ色の竜の子が姿を現した。

なんということか、この塩が竜の子を生み出していたのだ。

少年は面白くなって、2度3度床に塩を振りまいて見た。

その度に竜の子が生まれ、最後の竜は頭が二つある双頭の竜の子だった。

さらに少年の興味が加速し、塩を振る腕に勢いがついた。

しかし塩が詰まったのだろうか。一向に塩が出てくる気配がない。

少年はなんども手をふり、塩を出そうとした。しかしなかなか出てこない。

少年の腕が最大速度に達した時に、思いがけないことが起こった。

衝撃で塩の蓋が外れ、中身がどさどさと音を立て大量の塩が落下したのだ。

少年は衝撃を受けた。しかし無情に残りの塩は全て床に落下していく。

少年は慌ててその場を離れ物陰に隠れ縮こまった。

今まで一振りであの小さな竜が誕生していた。

しかしあの大量の塩であれば、一体、どんなものが生まれるのか。

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