二度目の訪問者
まーくんの行動は早かった。私がバイスに「はいはいちょっと待って」と返事をした瞬間に頭には慣れてきた音とお姉さんの強制回線接続を伝える声が響いた。ベットに座っていたまーくんを見遣れば姿が消えている。カップやお茶菓子等と一緒に。
驚いて目を見開くとまーくんが頭に話しかけてきてくれた。
『大丈夫、俺いるよ。心配ならいっしーに半透明で見えるように出来るけど気が散るかな~と。もう結界解除してあるから俺にリアル話し掛けしちゃいや~ん』
一気に気が抜けた。ゆるい、ゆるいぞ、まーくん! だがそこが素敵!!
はっはっはっ、惚れろ! 俺に惚れるがいい! 等と相変わらずの会話をしてから私はドアノブをひねり、扉を開けた。そしてそのノリのままバイスに爆弾を投下してみる。
「バイス坊ちゃん、その言い方だと私が夜のお客さんを取るお姉さんみたいに聞こえるんでもう少し言葉を選んで下さいね?」
まーくんの「うっわ、セクハライクナイ!」の発言はスルー。バイス坊ちゃんに年上である事の意思表示に最も適した対応がセクハラ発言なのだから仕方ない。うん、仕方ない。
爆弾を落っことされたバイスは見事直撃したのか顔が凄い……真っ赤です。なんだろうこの快感は、見た目高校生の純情少年が赤面して……可愛い……だと?!
ニマニマしながら沈黙中のバイス鑑賞に勤しんでいると、ふっと影が私を覆う。原因を確認しようと自然と目線が持ち上がる。バイスの後ろに長身の男、この首が痛くなる感覚は覚えがある。
「……ご無沙汰致しております、レッス」
「久しぶり、イシーダ。元気そうでよかった……ここではなんだからお邪魔してもいいかい?」
本日二人目の男性入室ですか……別にいいですけどね。
どうぞとドアの前から下がり、進路を譲る。けどそこに待ったの声を掛けてくるバイス坊ちゃん。あらやだこの子が一番常識的だわ、おばちゃん感激!
「おいおっさん! こんな奴でも一応女だぞ、夜に部屋に入るとか常識ねぇのかよ! 下のリビングで話せ」
いいぞ、もっと言え! バイスに心中で声援を送り、その提案に乗った! と言わんばかりにドアの前に立ち、また進路を塞ぐ。……塞いだはずだった。
私の意図をくみ取ったバイスが、着いてこいとドアの前から少し体をずらした。その隙を突かれた。一瞬出来たその隙間をレッスは易々と抜け、室内に入り私の背後に立つ。腕をお腹に回され、後ろに身体ごと引かれた。呆然とした顔をしているバイス、私も同じ顔をしているはずだ、それくらいほんの一瞬の出来事だった。
「失礼なのは分かってるけど、二人きりでしたい大人の話しがあるんだ。案内してくれてありがとう、おやすみ」
バイスに向けられた言葉。
一方的に言い終わるとレッスがドアを閉めた、勝手に。
私の断りも無く。
一言、言いたい。
紛らわしい言い方すんじゃねええええ!!!!!!
どこから見ても聞いても誤解しか生まれないレッスの行動に殺意が湧いた。
ついでに「お~、やるね~!」とのんき発言した勇者まーくんにも殺意が湧いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます