2018年11月16日(二度寝)

 移動するにあたり、伊勢のあたりに向かうローカル鉄道を利用しようかと思った。

 ルートは2つある。一方は20年前から風景が変わっていないような住宅地に終着駅があり、なかなかエモいが見るものはとくにない。もう一方はどうだったろうか。手持ちの金を考えて決めなければ。そもそも利用すべきか?

 改札を抜け、ホームに入った。ローカル鉄道で二面三線というのはなかなかの規模ではないだろうか。起点駅なので線路はドン詰まりだ。

 少なからぬ人々が行き交う中、2番線、つまりは真ん中の線路に近鉄の22600系電車が入線してきた。見慣れたオレンジを基調とした塗装ではなく、高級感のある渋いゴールドに塗られている。どうやら近鉄から譲渡された車体を塗り替えたらしい。車内には小型のシャンデリアが設置されているのが窓から見え、内装にも手を加えたのかと感心した。

 これに乗ろうか、と思った。特急券を買わねばと思いあたりを見回してみると、ホームにふくよかな男性駅員がいて、ストラップつきの黒い箱を首から提げ抱え、特急券はこちらです、と声高に叫んでいた。

 しかし、駅員の周りは5、6歳くらいの子どもらが十数名取り巻いており、あれをかき分けてまで特急券を買うのは億劫だ。他に売っている駅員はいないかと視線を巡らすと、旧国鉄の通勤車両と見える鈍行が改札側の線路に停まっているのを見つけた。白と空色で塗装されている。乗り心地の悪そうなクロスシートだが、今日はあれに乗ってもいいかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る