第13話 お茶会にやってきました


 あぁ、なんでこんな事になってしまったのでしょう。



「わたくしは、未来の婚約者様の隣に相応しくいる為に様々な事に挑戦しているのですわ」



 只今『百合のお茶会』に来ておりますが、好機のご夫人方の視線がビシバシとこちらに飛んできます。非常に、えぇ、実に居心地が悪くて去ってしまいたくなります。

 一番ネックなのがフリージア=グラシエ様。

『未来の婚約者』と言いながら殿下をガン見していましたし、冷笑を浮かべて私を睨んできます。こうなることは、フリージア様が参加されると聞いた時から分かっていました。


 でも一つだけ言い訳をさせて下さい。





 ……断れなかったんです。


 しかも、『百合のお茶会』前、ジルフォード殿下はシフォンドレスと綺麗な髪飾りを、「これを着てきてね」と直筆のメッセージカードと共に贈ってくださいました。


 ……のドレスと、の髪飾りを。


 これを見た両親と兄様は、笑顔のまま「焼却処分で」と言っていました。それは流石にまずいので止めたものの、私も内心クローゼットの肥やしにしたい気持ちでいっぱいでした。


 これを身に着けて、殿下のエスコートを受けた私はどんな目で見られるか。

 ……もうしかないでしょう。


 あぁ!フリージア様!殿下という魔の手から私を救うことが出来るのは貴方しかいないのです!どうか!



「リズちゃんはいかが?」



 王妃様に話を振られました。『リズちゃん』と王妃様が呼んだことでご婦人方はひっそりと視線を交わして頷かれました。何、こわい。



「……わたくしは、ウェリス侯爵家の者として魔法を最も力を入れて勉強しております。上級魔法となると成功率がまだまだで……」



 ざわっ。

 え、なにかまずい事でも……?



「ジ、ジゼルさん……貴方上級魔法が扱えるの?」



 辺境伯夫人がおそるおそる聞いてきました。

 もしかして、上級魔法が使えることは問題だったりするのでしょうか。でも父様も母様も兄様も誰も何も言いませんでしたし、寧ろ「順調だ」とおっしゃっていたので大丈夫だと思ったのですが。



「……完全に出来る様に、とはいきませんが……」


「あら、素晴らしいわ」


「流石ね。お勉強頑張っていらっしゃるのね」


「えぇ、殿下もこのような方とご縁があってよろしゅうございました」


「はい。リズと会えたこと運命のように感じます」


「「「「「「まあ!」」」」」」


「うふふっ、皆さん。リズちゃんは渡さないわよ?」



 ご婦人方と王妃様は盛り上がっていらっしゃいますが、私とフリージア様はおいてけぼりです。だからといって彼女と共有は出来ません。かなりの眼光でぎろりと注視してくるのですから。


 そして殿下。どさくさに紛れて変な事言わないで下さい。私は全く、これっぽっちも、天地がひっくり返ったとしてもあり得ないと思っていますから、ご安心ください。私が都合がいいからって外壁から囲むのは勘弁してもらいたいところですが、どうやら無理そうなので、内側から壊して抜け出すしかなさそうです。


 取り敢えず、乗り切りましたし、殿下対策をすれば平穏が……!













 やってきませんでした。


 後日、ウェリス侯爵家に、フリージア様からお屋敷に招待状が届きました。絶対に、確実に、100%、殿下の事ですよ。只えさえとろけるプリンメンタルの私です。そろそろ心臓が止まるかもしれません。


 でも逆を言えばフリージア様への弁明のチャンスが与えられたことになります。これで上手く私は違いますと納得してもらえたら、私は殿下を諦めさせる巨大なダイナマイトを手に入れることが出来るのです。なんて素敵な!


 どうかジルフォード殿下に見つかりませんように……。



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