この世界で
勝利だギューちゃん
第1話 加奈ちゃん
俺は社会人1年生。
1人暮らしをしている。
何かと大変だが、それなりに満喫している。
1LDKのアパートだが、この空間だけは俺の物だ。
誰にも、邪魔はさせない。
・・・と、思っていたのだが・・・
俺は2月から、既に勤め始めた。
その為に、今は4月だ。
世間では、この時期が入社式や、入学式だろう。
そんな4月に入った頃、ベルが鳴った。
まだ、俺がこのアパートに住んでいる事は、家族しかしらない。
何も、注文していない。
となると、勧誘か・・・
無視したがベルは鳴りやまない。
仕方なく俺は、ドアを開けた。
「お兄ちゃん、久しぶり」
女の子が、そこに立っていた。
高校生くらいか・・・
俺には、女兄弟はいない。
「あの・・・どちらさまですか?」
分からないのなら、訊くのが当然だろう。
「やはり、わからないか・・・私よ、加奈。覚えてない?」
「かな・・・加奈ちゃん?いとこの加奈ちゃんか!」
「うん、思い出してくれた、お兄ちゃん」
細田(さいた)加奈。俺のいとこ。
「久しぶりだね。加奈ちゃん、最後に会ったのは、まだ小学生の時だね」
「うん、お兄ちゃんも、大きくなったね」
「それは、こっちのセリフだよ」
加奈ちゃんなら、安心していいだろう。
俺は部屋に上げた。
「どうしたの?加奈ちゃん」
「じつは、今度こっちの高校に入学ことになったの?」
「どうして?まさかタレントを目指すとか?」
「違うよ。パパとママが海外に転勤になったの」
「うん」
「でね、私は1人暮らしを提案したんだけど、却下されて・・・」
確かにそうだろう。
少なくとも、小学生の頃の加奈ちゃんなら、無理だ。
「地元の高校には、寮はないし、だから、ここ来たの」
「俺の両親は、知っているのか?」
「もちろん、聞いてない?」
「聞いてないけど・・・」
その時、電話が鳴った。
「もしもし、あっ母さん、どうした?」
「あっ、勝かい?今日から、いとこの加奈ちゃんが行くから、面倒見るんだよ」
「もう、来てるよ」
「おや、入れ違いだね。悪い悪い。とにかく頼んだよ」
電話が切れた。
「おばさんから?」
「うん」
「お兄ちゃん」
「どうした?」
「私、ここにいたら迷惑・・・」
加奈ちゃんは、涙ぐむ。
迷惑だ・・・嫌いではないが・・・
でも、追いだせない。
「そんなことないよ。加奈ちゃんなら、大歓迎だよ」
「ありがとう。お兄ちゃん」
加奈ちゃんは、満面の笑みを浮かべる。
女の武器は、涙か笑顔の、どっちが最強だろう。
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