激動の赤色と黒い僕。

遠藤 九

激動の赤との出会い


「今日からお前はグリーンだ!」


そう唐突に言われたのは僕の両親がとある事件に巻き込まれ、この世から消えてしまった日の事だった。


両親が死ぬのを間近で目撃したと言うのに取り乱さず、これ程までに冷静でいられたのは、僕をグリーンと呼んだ彼女のお陰だろうか。


それとも…あの非現実的な光景に僕の思考回路が停止してしまっているからなのだろうか。

どちらにせよ、僕の理解が追いつかない事は確かだ。


両親の死体の向こう側に悠然と立つ彼女はその場に似つかわしくない程の笑顔を浮かべ、僕の方に手を伸ばしていた。


それはそれは、なんの曇りも淀みも疑念も裏もない残酷なまでに純粋で無垢な笑顔だった。


そしてその笑顔を含め、2つの死体が横たわる異常なあの空間で、細身のスーツを着こなしている長身の彼女がより一層、異様で異質だった。


赤い。とてつもなく赤い。


膝まで伸びた赤い髪

ワインレッドのスリムスーツ

髪と同色のヒール

頭の上に乗せられている赤いサングラス


隙のない赤。燃えるような赤。激しい赤。怒りの赤。


どれをどう取っても赤く

どこをどう見ても赤い。


目が眩み、霞むような赤。


僕の頭はもうオーバーヒートしていて、完全に動作不良を起こしていたのだろう。


でなければ絶対に有り得ない。


こんなにも救いの無い絶望的な状況で

こんなにも美しく異色な赤色の手を取るなんて。

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