第194話 火竜ブランガス召喚
おおっ! 想像以上の美女だ! タッパも有るし、胸も有る! やったー!!
「なんじゃ、泣いたり喜んだり、情緒不安定な奴め。」
いや、なんかね、ブランガスが来たからもう安心、みたいな感覚になっちゃった。
それにしたって、なんか変だよね、私。
オリジナルのソピアの人格は泣いているんだけど、その他の人格の幾つかは喜んでいるんだよね。特に日本人のオタク連中が! こいつらにはあんまり表に出て来て欲しくない。
魂の人数が増えてきたので、複数人格を表に出してると、制御が困難になって来たので、人格は深い所に纏めて沈めて、適宜知識にだけアクセス出来るようにしてるんだけど、ちょっとの拍子に浮かんでくる奴らが居る。
さっきのピラミッドの中で何人か喰われちゃった人も居るんだけど、知識はアカシックレコード経由なので無事みたいだ。て事は、魂の人格、要らなくね?
あ、魂の奥の方からブーイングが聞こえる。
ブランガス姉さんが、ススっと寄って来て抱きつこうとしたので、その腕をするりと回避する。
「あら~ん、いけずぅ~。」
おうふ! 姿は美女なのに、声はおっさんとかこれいかに!
それよりも、その硫酸で濡れた身体で抱きつくんじゃねー!
私は、雪の上に大量に溜まっている水を呼び寄せ、ブランガスを丸洗いしてやった。
「あぶぶぶぶぶぶるう! ひど~い、ソピアちゃん!」
「硫酸を洗い流したんだよ。そこら中に飛び散っているのも洗わないと!」
「じゃあ、もう抱きついても良いのね~。つーかまえた。」
「むー。」
「ん~~、やわらかい!」
スリスリスリスリ……
グリグリグリグリ……
カミカミカミ……
イタタタタ、甘噛するんじゃない!
ブランガスにすっごいスリスリグリグリカミカミされた。されまくった。私が四神の中でブランガスだけ避けてたからか? こいつだけ何だかスキンシップ過剰なんだけど。
私は、腕を伸ばしてつっかえ棒をして、ブランガスを遠ざけた。
「それはもういいから、早くイブリスを助けたいの!」
「ん~、ケチね~。」
「これがソピアの言っていた、ブランガスの性格なのか。」
「竜の姿でテレパシーを聞いていた時とは大違いですわ。」
テレパシーだと、相手の脳の思考を自動翻訳される都合上、魂の格の上下によるのか、こちらが相手に感じているイメージに引っ張られてしまうのか、それは分からないけれど、翻訳されるニュアンスが、人によって違って来ちゃうみたいなんだよね。だから皆、ブランガスの事を凄いおっかない竜だと思っていたみたいなんだ。
私だけ、眷属の繋がりで(当時はユーシュコルパス経由だったけど)、魂が繋がっていたせいで、比較的正確にブランガスの性格も含めて微妙な意味合いも伝わって来ていたのだろう。
今は、人竜化して、口で言葉を喋っているので、お師匠達は、テレパシーで受けたイメージとの乖離に困惑しているみたい。
そんな事はどうでもいいんだ!
イブリスをブランガスに診てもらいたいんだ!
私は謎空間の扉を開き、全員を中に入れた。
「お邪魔しま~す。ふ~ん、これがソピアちゃんの
ブランガスは、初めて友達の部屋に遊びに来た時みたいにはしゃいでいた。
「ブランガス。イブリスの身体の分解が止まらないの!」
「どれどれ、ん~、これは、魂のエネルギーが大量に奪われてしまったせいで、魂の構造を保てなくなってしまったのね……」
「どうすればいいの? じゃあ、もう1回私の魂を食べさせればいいの?」
「それだとね、今までの記憶も人格も失われて、ゼロからになってしまうわ。それだったら、このイフリートは諦めて、私が新しいのをあげますけど、どうする?」
「そんな! そんな壊れた玩具を捨てて新しく買うみたいな真似出来る訳無いじゃん! 酷いよ!! イブリスには心が有るんだよ! 替えなんて効かない、たった一人の存在なんだ! ブランガスのバカー!!」
「バカ!? 私がバカ!! ああ、私、ソピアちゃんに嫌われちゃったの!? ショックで倒れてしまいそう~。」
「ブランガスよ、お前はもう少し人間の心を学んだ方が良いかも知れぬな。」
ユーシュコルパスがブランガスを嗜めている。ユーシュコルパスも大概だと思うけどね。
「この子の魂を失わない、たった一つの方法が有るけど、聞く気ある?」
「それを早く教えてよ! ブランガスのバカー!」
「あああっ! 悲しみで気を失いそう~。でもいい!!」
なんか、ヤバい感じに背筋がゾクッとした。
「魂のエネルギーを外から充填しても、全て初期値に戻ってしまいます。なので、この子の方をソピアちゃん、あなたの魂の方へ結合させます。」
恐らく、ブランガスの言っている事は、こういう事だろう。
パソコンに例えると、OSの壊れたパソコンに新しくOSを再インストールすると、真っ更な新しいパソコンに成ってしまう。だったら、その壊れた古いパソコンは廃棄して新しいパソコンを買ってあげようかと提案したら、ソピアに罵られてしまった。
たった一つの方法というのは、他のパソコンに外部ストレージとして接続すれば、取り敢えずはデータだけは救出する事が出来るかもしれないという様な事を言っているのだろう。多分。 by京介。
パソコンなんかに例えるな!
でも、分かり安かっただろう? by京介
「解ったよ! そうすれば、イブリスの心と魂は失われないんだよね? 直ぐにやって!」
「ソピア! だめよ! そんな事をしたら、私の時みたいに……」
私は、止めるケイティーを手で制して、ブランガスにその方法をしてくれる様に即した。
ケイティーの懸念も分かる。あの時、ケイティーは生死の境を彷徨ったのだから。私にあの状態が耐えられるのだろうか。しかし、今は迷っている暇は、無い。
「やって! ブランガス。」
「覚悟は良いわね、ソピアちゃん。」
分解して光の粒子となって消えて行こうとしているイブリスの身体が、光の玉と成って私の胸に飛び込んで来た。
次の瞬間、私の全身から炎が吹き出す。
「うああああああああ!!!」
「ソピア!」
「ソピアちゃん!」
全身が熱い! 痛い! ケイティーは、こんな苦しみを負ってまで、あの時私を助けてくれたのか。
私だって、耐えきってみせる! イブリス! 意識を私と合わせて!
「ぐあああああ!!!」
『--お母様! 止めて! 早く僕を体の外へ捨てて!!--』
私を気遣うイブリスの思念が頭の中に響く。だけど、諦めるもんか!
私は、よろよろと立ち上がり、謎空間から飛び出して、少しでもこの熱を和らげ様と、氷の壁に手を着いた。しかし、あまりもの熱により、氷は一瞬で溶け、沸騰し、蒸発して行く。
お師匠やヴィヴィさん、神竜達が、回復術を一所懸命に掛けてくれている。
ケイティーの時は、どの位の時間が掛かっただろう? おそらく、丸一昼夜は戦っていた様に思う。でも、魔力操作に関しては、ケイティーは私なんかよりもずっとずっと上手いのだ。私はどれほどの時間を掛ければイブリスを制御出来るのか、見当も付かない。
………………
…………
……
どれ程時間が経ったのだろう?
意識が途切れていた。
物凄く長い時間が経った様な気もするし、未だほんの短い時間しか経っていない様な気もする……
いつの間にか、気を失って居たのだろう、私は、意識を取り戻した。
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