第138話 初めての指名依頼
何か、勉強しなくてもこういう風に知識が増えていく仕組みなのかな?
何で私だけそんな事になっているのだろう?
最初は、転生だと思ってたんだけどな。まあ、一種の転生なのかも知れないけど。私の想像していたのとちょっと違う。
『--(ヴェラヴェラよ、また神格がでかくなったな。)--』
『--(そうだねー。皆気が付かないのかなー。)--』
『!--(こちらからでも分かるぞ。ところで、これは他の人間には秘密なのか?)--!』
『--(いえ、そういう訳では無いのですが……悪意有る者に害されぬ様に守っております。人間は、個体毎により善悪の振れ幅の大きな生き物故。大賢者ロルフの元に保護されているのは幸運です。)--』
『!--(確かに、我も注意を払っておこう。)--!』
『--(ヴェラヴェラもよろしく頼む。)--』
『--(了解だよー。)--』
なんか、竜達が内緒話している様な気がするんだけど。
意識を集中すれば、盗み聞き出来るのかな? しないけどね。
私に言わないって事は、なんか有るんでしょうね、きっと。
「ところでさ、何もしないと成ると、暇すぎるんだけど、何か無い?」
「そうねー……、ああ、丁度プロークの宝物の選別が終わってそうな頃だから、ソピアちゃんの分を出してもらおうかしら?」
「おっけー! じゃあ、すぐ行こう。」
……
…………
………………
王城の2階にある、ダンスパーティー用の大ホールに入ってみると、価値の有る物と殆ど無い物との分別が大体終わっていた。
大体、三分の一位は、黄鉄鉱、赤鉄鉱とか、黄銅鉱とか、黒曜石とか陶器のかけらみたいなガラクタっぽい。
アンダラクリスタルなんかも価値無しの方に分類されているけど、これ、磨くと綺麗なんだよね。天然ガラスなんだっけ。
テレビ石とか方解石とか電気石とか水晶なんかも、価値無しの方に分類されているけど、ものによっては微妙だなー。
天然石は、加工して磨けば、パワーストーンとして売れるような気もしなくもない。こっちの人は買わないかな? うーん、買わないような気がして来た。
「じゃあ、価値無しに分類されている物は、私が貰っちゃっていい?」
「まだ、ソピアちゃんから見て価値の有る物が混じってたりするの?」
「うーん……、有るっちゃ有るし、無いっちゃ無い、微妙な感じなので、取り合えず謎空間に保管しておこうかなって思ったの。」
「良いわ。一応目録は作ってあるから、後々必要な事が、もしも有ったら、その時に売って頂戴。」
「竜が喜ぶから、竜に会った時にあげちゃうかも知れないけど?」
「その時はその時で、諦めるわ。そんな感じなので、どうぞ、持って行って。」
じゃあ、という事で、価値無し分類の物を謎空間へ収納し、改めて倉庫に入っていた分を取り出して積んだ。
分類作業をしていたお役人さん達が、やっと終わったと思っていた所に新たに積まれたので、皆膝と手を床に着いて、がっくりのポーズをしていた。御免ね。
3階と4階のホールの、お師匠とケイティーが出した分も同じ様に分類されていたので、要らない方を貰って来た。
他の神竜に挨拶に行く時に、お土産として持って行こう。
最後の竜が量が少なく成るかも知れないけど。
そう思った時に、ザワッとした思念がどっかから来たけど、うん、気のせいだろう。
………………
…………
……
屋敷に戻ったら、ケイティーとヴェラヴェラが走って来た。
プロークの脱皮が始まったんだって。
中庭に出てみると、竜形態に戻ったプロークが、蹲る様に丸まって、体全体が白っぽく成って来ていた。
飛竜のフリーダに聞いてみると、心配は無いとの事。お師匠も竜の脱皮を見るのは初めてなんだって。とってもレアな場面に立ち会ってしまっているらしい。
フリーダよると、20日前後で出て来るとの事。それまでは無防備なので、寝ずの番で守るつもりだという。
うちにはプロークを害する者は誰も居ないよと言ったのだけど、野生のカラスとかネズミとかが近寄るかも知れないからと言っていた。私達も出来る限り協力するよと言っておいた。
真夜中にふと目が覚めて、プロークの様子が気になったので、燭台を片手に中庭に出てみたら、お師匠とヴィヴィさんが居た。
賢者は何にでも興味を持つんだね。
飛竜のフリーダに、寝なくても大丈夫なのかと聞いてみたら、短時間睡眠を、脳の半球毎に交互に行う事が出来るので、大丈夫なのだそうだ。確か、地球にもそんな動物居たよね。キリンだっけ? イルカだったかな?
寒くないかと聞いたら、それも大丈夫だって。そういえば、元々裸で山の中で寝ていた様なものだもんね。人間とは肌感覚が違うのかも知れない。寒くなったりお腹空いたら遠慮無く言ってと言い置いて、私はベッドへ戻った。
翌朝、朝食時に聞いたら、皆夜中に様子を見に行っていたらしい。ケイティーも、クーマイルマも私が戻った後に来て、飛竜達と話していたんだって。もうちょっと粘っていれば会えたのにな。今夜に賭けてみよう。
クーマイルマは、勉強は順調だって。実はあの時間にはまだ勉強していたそうだ。
やばくね? なんか、既に学力で抜かれている気がするんだけど、まさかねえ……
さて、今日は何しようか。
飛竜達はプロークの見張りだし、クーマイルマは勉強。お師匠は、エピスティーニ行っちゃうし、ヴィヴィさんは王宮でお仕事、ウルスラさんもマンドレイクちゃんのお世話に王宮へ行っちゃうので、私とケイティーとヴェラヴェラしか残らない。
「むむむ、これは、逆にあぶれているのが私達3人だけという事なのでは……」
「うーん、ぶっちゃけると、そういう事よねー。」
「久しぶりに冒険は楽しいぞー。」
「取り敢えず、ハンターズへ顔を出してみましょう。」
やって来ましたハンターズ。
建物に入り、依頼ボードへ直行。
うーん、パッとしたのが無いなー。と思って見ていたら、私やケイティーよりも背の高いヴェラヴェラが、上の方から一枚の紙を剥がして来て私達に見せた。
身長差でアイレベルが違うっていうの? 私とヴェラヴェラとでは、見ている所が違うんだよね。大人の目線と子供の目線が違うみたいな? 誰が子供でチビだ!
ヴェラヴェラが見せて来た紙に書かれていたのは、討伐クエスト。
討伐対象は……イフリート? アラビアンナイトに出てくるあいつ?
炎の精霊とかそんな感じだっけ? ランプの精霊は、イフリートだとかジンだとか言われているよね。
大体、精霊は魔物じゃないんだから、討伐対象に成るのはおかしくない?
まあ、ヴェラヴェラの時の例も有るから、一概には言えないけどさ。
ハンターランクは、5が2人以上推奨。うん、まるで私達を狙い撃ちしたかの様な依頼だね。怪しいね。
私達は、その依頼書を持って、カウンターへ行って説明を聞く事にした。
おねえさんにその依頼書を手渡すと、分厚い帳面を取り出して、パラパラと捲って行く。
「えーと、依頼ナンバーは、Kの……て、∪じゃない! またこれ調査依頼じゃないの、もうっ。」
誰だよ依頼書書いているのは、また書き間違いだよ。何回目だよ。
書いた奴はきっと、ギルド長と書いてアホとルビが打ってある奴に違い無いよ。
「だーれがアホだ、この野郎! またお前らか!」
「ギルド長、依頼書の調査と討伐、また書き間違ってますよ! いい加減にして下さい! 次やったらギルド長と書いてアホと呼びますよ!」
「なっ、お前まで……くそう、くそう!」
地団駄踏む位なら、書き間違うなよ。似た単語なんだから、良く確認しろよ。
「忙しいんだよ! 一日何枚依頼書書いてると思ってんだ!」
シラネーヨ。だからってミスして良い言い訳にはならねーよ。
「ソピアちゃん? 言葉遣い。」
おっといけない、わたくしとした事が、おほほほ。
ところで、イフリートの調査依頼とは、どういう事なのさ。
「うむ、村の近くでイフリートが目撃されてな。その調査依頼だ。意思の疎通が出来るなら、退去願うか、襲って来る様なら退治も止むを得ない。」
「だって、精霊でしょう? 退治はマズイでしょう。っていうか、この依頼、ほぼ私達名指しだよね? だったら、何故指名で依頼くれないのさー。」
「だって、指名すると高く付くじゃねーか。お前達、こういうの得意だろ? 魔族とかドリュアデスと仲が良いみたいじゃねーか。」
んー? 何か色々情報が漏れている気がするぞ?
まあ、魔族は…………クーマイルマをここに連れて来たか。
ドリュアデスは、コボルドの討伐依頼の件からバレてるのかな?
「お前等なら、人外と話が通じるっぽいからな。頼んだぞ。」
「いや、この依頼は受けるの止めます。精霊と敵対したくないしー。」
席を立って、出口へ向かおうとしたら、後ろから慌てた感じで声を賭けられた。
「ちょっ! おまっ! まて! まてって! まってー!!」
何、結構切羽詰まってる感じなの?
指名依頼にしてくれるなら、ちょっと様子を見に行ってやってもいいよ?
「くっ! ちくしょう。お前ら、足元見やがって!」
「ズルい事しようとするからでしょ。」
指名料は、通常依頼の倍額が相場だ。
ランク5以上が2名以上の依頼という事で、一人大金貨8枚だから、その倍の16枚、二人で32枚だ。ヴェラヴェラはランク2なので、受注出来無い。
地球の金額に換算すると、320万円にもなるが、イフリートと戦闘になった場合の危険手当も含んでいる。
嫌なら、他にやってくれそうな人が現れるのを待てば良いんだ。
「あのね、私達にやらせたかったのなら、依頼書はもっと低い位置に貼って置いてくれないと、私見逃しちゃうよ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます