第77話 4人パーティー

 「私の修行と言っても、何をするの?」


 「そうねー……」



 考えて無かったんかーい。

 とはいえ、ケイティーは対人戦闘は結構良い線行ってるんだよね。

 私の魔力操作の高速剣術を100%捌けるし、隣国での追っかけっこでもいい動きしてた。

 オークとの戦闘だって難無くこなせる。


 だけど……、攻撃の決定打が無い。

 避けるのは上手いのだけど、必殺技的な物が無いんだよね。



 「そうなんだよねー……」


 「円月殺法とか、変移抜刀霞斬りみたいな?」


 「「なにそれ?」」



 うーん、架空の必殺技だしなー……十文字霞崩し!



 「あんまりトリッキーな技よりも、普通に剣術を磨いて強くなった方が良い気がするんだけど……」


 「まあ、ああいうのって戦いの中で自分の持っているスキルが組み合わさって偶然に生まれたりする物だからね。だからこそ他人が真似出来ない、自分しか使えない、唯一無二ユニークな技になるんだ。」



 とはいえ、ケイティーに攻撃の決め手が無いのは事実なので、場数を踏む意味でもこれから3人で狩りに出かけようという話になった。

 ヴィヴィさんは魔導師のローブ姿だし、私達は部屋着のままなので、一旦屋敷に帰って動きやすい服装に着替える事にした。






 屋敷に取って返すと、3人はハンターの装備に着替えて玄関に集合した。

 ヴィヴィさんのパンツ姿は初めて見たかも。

 おばさんのくせに、結構スタイルが良いな、この人。



 「まあ、失礼ねー。」



 あ、また口に出して言ってた?

 横を見ると、ケイティーが頷いていた。

 さあ、出かけるぞという所で、ウルスラさんに見つかってしまった。



 「あのー、これから皆さんでどちらへ?」


 「これから、ケイティーの特訓のために、3人で狩りに出かけようって事になったの。」


 「まあ、それでは、私もお供させてくださいまし。」



 3人は顔を見合わせた。

 え? この人戦えるの? とは思ったのだけど、折角うちに来て仲間外れは可愛そうだし、宮廷魔術師なら戦闘力はそれなりにありそうなので、4人パーティーにしてみようという事になった。

 ウルスラさんも戦闘服に着替えて来た。

 おばさん2人、若者2人のへんてこパーティーが出来上がった。



 「どうせ行くなら、ハンターズに行って、適当なクエストが無いか見てみましょうよ。」


 「そうだね! そうしよう! お金も稼げるし!」



 ハンターズまでは、ウルスラさんをヴィヴィさんが、ケイティーを私が運んだ。

 採集がいいかとか、いや、せっかくだから修行も兼ねて討伐にしようとか、和気藹々だ。

 依頼ボードを眺めてみると、採集依頼は、Bランクの初心者や子供の生活の糧となっていたりするので、流石にハンターランク2と5の私達が取ってしまうのは躊躇われた。



 「あ、でも、正式ランク推奨の採集クエストがあるよ?」


 「本当だ。何々、マンドレイクの採集? 危険度は中-大、報酬は重量1リブラル(450グラム)あたり大金貨2枚。」


 「報酬いいね。マンドレイクの採集って、そんなに危険なの?」


 「まあ、採り方知っていればそれ程だけど、生えている場所がちょっとねー。」


 「どこ?」


 「浅い所とはいえ、魔物領域なのよね。」



 魔物領域とは、以前にバシリスコスの足跡を追跡した時に、お師匠が此処から先は危険領域だと言った所だ。

 ドリュアデスの守っている森の更に奥の原生林になる。



 「でも、その広大な原生林からマンドレイクを探すのって、難しくはないのですか?」


 「うーん、ドリュアデスに聞けばわからないかな?」


 「えっ? ドドドドリュアデスですって!?」



 ウルスラさん、びっくりしている。

 そりゃそうだよね、森を荒らす人間は大嫌いってイメージあるよね。

 いや、嫌いなんだろうけど、私にはそんな素振りは見せてないかな。

 まずは、クエスト受注だ。


 依頼書を持ってカウンターへ行くと、お姉さんが怪訝そうな顔をした。

 孫を連れて山へ山菜かキノコでも取りに行くおばさん達に見えたのかな?



 「「失礼しちゃうわ、もう!」」



 おばさん2人はおかんむりである。

 お姉さんに、この4人パーティーで行くと告げると、ハンターズライセンスを提示させられた。

 私とケイティーは常連だから良いとして、この2人はハンター証なんて持ってたっけ?

 そういえば、ヴィヴィさんは昔、ハンターやってたって言ってたっけ。

 私とケイティーは、水晶のハンター証を提示して、クエスト内容を内部に記録された。

 ヴィヴィさんとウルスラさんは、金属プレートを出していた。



 「あらー、これは、ずいぶんと骨董品のハンター証ですねー……」


 「「悪かったわね!」」


 「いえ、大丈夫ですよー。新型のにアップグレードしますね。少しお時間を頂きます。」



 おねえさんは、金属製のハンター証を持って奥へ引っ込んでいった。

 私達は、それが出来上がるまでラウンジでガールズトークだ。



 「ここのケーキと紅茶が、意外と美味しいんだよ。」


 「あら本等ね、貴族区のパティスリーにも引けをとらないわ。」


 「私の国のハンターズギルドは、もっと暗くてむさ苦しい感じですけど、ここは結構明るくて清潔な感じなのね、羨ましいわ。」


 「こっちは、サントラム学園のお蔭で、女子でもハンターに成る人が多いからだと思いますよ。女子でも男子をぶちのめせる人が結構いるんですよ。」


 「私は強いので、男子どころか竜人にだって負けないけどね。」


 「「「あなたは特別よ。」」」



 うーん、ガールズトークって何だろう?

 そうこうしている内に、ハンター証のアップグレードが完了したみたいだ。



 「はい、こちらがヴィヴィさんの。びっくりしました。ヴィヴィさんって、あの宮廷魔導師のヴィヴィさんなんですね。それから、こちらはウルスラさんの。こちらもまた、隣国の宮廷魔術師だなんて。この面子ならこのクエストも楽勝かもしれないわ。」



 うーん、ハンター証預ければ、職員には個人情報は筒抜けだよね。

 ヴィヴィさんは、この事は内密にと、口に人差し指を当てていた。


 それにしても、そのハンターズライセンスの色は何だ!

 ハンターランク15だとう!

 ウルスラさんも、8だと!

 最高が10じゃなかったのか? 化物ですか? 二人共私達よりも強いですか、そうですか。

 この間やっと2に上がったばかりのケイティーの魂が抜けかかっているよ。



 「大丈夫よ、いざ戦闘になったら私達は支援に回りますから。」



 そうだった。これはケイティーの修行でもあるのだった。

 戦闘時に回復職が居るのは心強い。


 さて、建物の前から飛び立とうとしたら、ヴィヴィさんに止められた。



 「このまえ叱られたばかりでしょう?」



 でした。ちゃんと門から出ます。






 門に着いてハンター証を見せたら、また入出の数が合わないと叱られてしまった。

 どっちにしろ叱られるんじゃん。

 私とケイティーだけかと思ったら、ヴィヴィさんも叱られてた。

 そういえば、飛行シャトルで帰った時に門で手続きしなかったよねー。うひひ。


 さて、ウルスラさん以外一通り叱られて、と。門の外で再び飛行開始。



 「クエストから帰ったら、ウルスラさんも飛行術の適正があるかどうか調べてみようね。」


 「有難うございます。あの、ウルスラとお呼び捨て……」


 「駄目です。私は年長者は敬いたいたちなんです! 私は女神では無いので、そういう事言うのは止めて下さい。」


 「はあ……」



 本当に納得してくれたのかなぁ……

 先が思いやられるなー。


 鉱山地区を越え、深い森の上空へ行くと、木々の上空に浮かぶ巨大な円環が見えて来た。

 うん、結構工事は進んでいるみたいね。

 エウリケートさん居るかなー?



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