グロータシャイン

千咒 久済也

グロータシャイン


こんな仕事ょ引き受けたのは拙者の定めとでもいうのであろうか。例の、いや、霊がいると愚直な民が噂している封鎖されたトンネルに向かうロケ車に乗り込む前に、どうしても逃げ出しておくべきだったのであろうか。たしかに拙者は霊能者だが、それ以前に要要要で決めポイント一日24時間、違法ダウンロードしたアニメ、違法アニメは日本製のアニメでありながら海外ファンによってつけられたスペイン語字幕アニメょ見るのが至高。ここに生き、ここに死す。プルルン共和国のチィーちゃんはもはや神。チィーちゃんの抱き枕ょ祭壇に捧げて一日数回祈りょ捧げる。そしてこのアニメょ製作してくれた神プロダクション、スタジオズブリンチョがある方角に向かって額ょ床に擦り付け祈りょささげる。それもまさに至高。至高の極みヘヴン。たまに母親に踏まれるけどな。それで満足でござる。それ以外に何も望んでいないはずだったの巻。んが、引きこもる以前の唯一の三次元リア友、上京してテレビ局に就職したとは聞いていた飯田がある日突然電話してきて「お前まだ霊とか見えるのか」そうだといった拙者がまさかの致死エリア、娑婆の極み三次元に出てくれたらチィーちゃんの声優にも合わせてくれると言葉巧みに丸め込まれた拙者が駄目だったでござる。否、しっかしわざわざ三次元にまで降り立ちては御神体を拝むか拝まざるべきか判断に困ったでござる。見てはならぬとの決め事死守すべきか、霊能力があるだけ、浄霊なんてできないのは秘密でござるからしてそんな秘密コクろうもんなら声優衣笠The sweetとは絶対に顔を合わせることはないでござる。おぉふ金玉の小ささでビビり確定要素マックス。んが、今日は成人用紙おむつょはいてきた、準備万端ぶひひ。漏らす。チィーちゃん衣笠っち、拙者漏らす覚悟でござるぞ。そして三次元リニューアル俺氏レジェンド、誕生す。


「スタジオの皆さん、今回はわたくし、霊能力者の保田吉男さんとともに、アメリカにまで来ています。今回はミステリースポットの墓地にて目撃多数の女性霊を保田さんに見てもらおうと思っています、保田さん、どうでしょうか、確認できますか」


ドュフフフフ、見えたとしても拙者に何ょ世界が期待しているのであろうかと。浄霊マジビックリ無理無理の助。だめだ、だめだにょ。僕チンに垣間見えるのはチィーちゃんThe声優、衣笠っち。こんなときは自分ょ勇気付けてくれるチィーちゃんょ思い出そう思い出して俺はやれる元気玉みなぎる声優の衣笠っちにも会える確定!今確定!ここはさすが外国、外人しかいねぇでござる。チィーちゃん音頭は俺のアンサーソング。よし、チィーちゃん、見守っててくれ。拙者はやれる。今なら歌える。


「握って開いてポロリンパ、右手でニギニギ左手モミモミ。とってもとってもたくましいですぅ~、はにゃーん、お兄ちゃんすごいですぅ~」


「スタジオの皆さん、憑依です。安田さんが憑依されました。わたくしの質問に答えるどころではないようです」


「ちょwwwおまwww」


どゅふふふふふ何ょ言っているふざけんな喋るな危険、喋るとヲタ鬼畜ブタの俺氏が白日の下に晒される。晒されるのは10ちゃんだけ勘弁ンゴねぇ。拙者は拙者ょ奮い立たせてるんだマジカルみなぎりパワー!


「俺氏……いや、自分は、自分は大丈夫です。ちょっとの隙に体内に入り込まれました。やりますね、やつも」


「ほんとに大丈夫ですか?!」


「は、はい」


大丈夫大丈夫。俺氏、画面のチィーちゃん以外にも喋りは可能。アイキャントーク、アイキャントーク。


「そうだ、できる。大丈夫、再度霊視します、あそこの墓石のところに、何か……いますね」


確かに何かいる。でまかせで言った先に何かいるンゴ。


「わたくしには姿は見えませんが、確かに、声がきこえますね。しかも、悲鳴だ」


「悲鳴……、長い間隠蔽されつづけた時代の犠牲者……、閉じ込められた闇に潜む心の叫び」


「はい?」


どうした俺氏、もっとちゃんと喋れ。


「どうしました」


「すみません、ちょっと前世を思い出しました」


「そうですか、うわさではここで女性達の笑い声や、興味本位でひやかしに来る若人達をあざ笑うような声が聞こえてくるとうわさなんですが。ではなぜさっきは悲鳴なんでしょうね」


俺氏、喋る。チィーちゃん見ててくれ、三次元でも、俺っち、やれる。日本人の共通語、喋る。俺氏、喋る。けれどあいや待たれい、誰も入りこめない心で復唱。いっちにーさんしー、握って開いてポロリンパ、右手で……。


―ノォォォォ! リーヴミーアローン!セーラームーンビーム!


「保田さん!今確実に絶叫が!」


今、俺氏。聞き間違いをしでかしたのかもしれない、せーらーむーんびーむ? 眉間に潜む瞼が開く。前世の龍族だったころの俺、今覚the醒、まさか……、まさかまさか!コヤツ、同士か。日本ヲタクがブランドとして確立されるのと同時、世界中の自分という存在に不安を抱えた同士達に居場所を与えた。そしてここでも、アメリカのアニヲタに陽を当てたのだ。今の悲鳴は居場所を与えられてしまったアメリカンヲタクか。さすが神文化大国、日本。コンコンガチャリ、俺氏おにゃのこの心に突撃真夜中の不法進入。


―オーマイガーッ


「スタジオの皆さん、わたしには見えませんが、保田さんとともに確実に聞こえました、音声さん、その声、VTRに入ってるかな? あとで確認を」


―ノォォォォ……、ノォォォォ……


すごいンゴねぇ、暴風のように叫んでいるンゴねぇ。


「ドュフ、いや、抵抗を始めてますね。何があったんでしょうかね……ンゴ。どゅふふふふ俺氏の力に恐れょなして霊がびびっている、アメリカンヲタクガール、ドントウォーリー、ミィーイズガッドヲタク」


もぅ駄目ンゴ。ヲタっぷりがついつい出るンゴ。


―オーシェット。オター……ァァァァァァァァァァ!


「保田さん!更に悲鳴がすごいです!」


落ち着け俺氏。人として認められるチャンスが目前だ。さんはいッ、握って開いてポロリンパ、右手で……。よし、いける、俺っち日本人の共通語。喋れる。憧れのMiss声優衣笠The CUTE。握って開いてポロリンパ、衣笠ツンツンどゅふふふふふふ。


―ノォォォ!


「たたた確かに、これは、悲鳴がすごいですねぇ……ンゴ」


―シェット!ノォォォォォォォォォォォ!


「保田さん、更に悲鳴が……、わたくしひざが笑い始めました、こわい」


今、まさに俺氏の力が、覚醒しようとしている。見えざる世界が動き出す。キーパーソンは、The、俺。


「どゅふ、いやいや。悲鳴が聞こえますね、悲鳴悲鳴、そうそうアレは悲鳴。よし俺氏共通語喋れてる」


―ノォォォォ、ヘルプミ……


「そうそう、俺氏が、助けてあける……ンゴ」


「すさまじい悲鳴、助けてって聞こえました。保田さん、生前彼女に何があったんでしょうか。スタジオの皆さん、霊との対話が続いていますが、保田さんにもたびたび憑依現象が見受けられます。これは緊迫した状況です、保田さんは体を乗っ取られながらも懸命に会話を試みています」


さあさあどれどれ、君のハートにインサート。今からおタッチok? お兄ちゃんっていってごらん? 俺氏が触れようとご予約のその先に、何かがビクリとわなないたンゴ。


「キー!モー!オー!ター!」


わななきながら、そのフレーズ? え? 何ンゴ? なんつったンゴ? 突如、確実に俺氏の耳に、そしてリポーターの耳に、確実に聞こえたンゴ。確実に日本語だったンゴ。


「保田さん、今、日本語らしきフレーズが聞こえたようなきがしましたが?」


(キモオタ! キモオタ通り越してもぅグロオタよ! )


わが耳を疑うとはまさにこのこと。コイツ、直接、脳内に、感情を。伝えてきやがった、しかもキモオタ。キモオタ。聞きたくなかったンゴ。良心の呵責は無いンゴか。


「いや、何も自分には聞こえてないですよ……?ンゴ」


霊が、阿鼻叫喚のスタイリング。両手が震えているンゴねぇ。そしてどうしてこっちを見ているの。そしてどうして涙を見せているの。


(グロいのよ!もう地上にしがみ付くのは止めておきます皆さんさようなら)


グロヲタていいやがったンゴ。ひどいンゴ。そしてコヤツ、泳ぐ姿勢を見せているンゴ。


「安田さん? 顔つきが変わりましたがどうしました」


「いや、聞こえて、ないです、俺氏、いや俺には何も聞こえないです」


「あっ、スタジオの皆さん!突然霊が浄化されているかのような光景が!真っ白な煙が立ち上っていっています。そしてなぜか墓石に文字が。どれどれ、ジーユーアールオーオーティーエー エスエイチアイエヌイー? なんだこのメッセージは」


ジーユーアール……、guroota shine……? グロオタ、シネ……? グロオタ視ね……。日本語。こいつアニヲタじゃなく日本ヲタクか、ヲタ女なら俺氏に耐性くらいあるンゴ。幼少時にセーラームーンを見て日本文化に関心を持ったタイプンゴね


「guroota shine、グロータシャイン? 保田さん、このメッセージは一体どういう意味でしょうか。グロータという女性がシャイン、つまり輝く。もっと生前に輝きたかったというメッセージでしょうか保田さん。皆さん、今こうして保田さんの見事な霊能力が発揮され、今霊が無事浄化されたようです。今霊らしき白いモヤのようなものが登っていっています」


ほんとうだマジすごいンゴ、小生がガチンコ距離縮めただけで天に昇っていく何気にマックス。必死で天に登ろうしているあの形相鬼ワロタ。


「おめでとうございます。さすがですね。こうして無事魂を救いましたね。しかし保田さん、一体何をしたんですか、わたくしにはただ近づいただけに見えましたが」


「近づいただけです……ンゴ」


「ンゴンゴいってるということは、まだ憑依は続いているようですけれどね、えぇそうなんでしょうけれどもね、何かしたんですか? 特別な術とか。または意思と意思の戦いをわたくしたちの分からない水面下でおこなっていたとか」


「相手はそうだったかもしれません。俺は近づいただけですが……ンゴ」


「皆様、これが霊能者、保田吉男さんの霊能力です。うわさには聞いていましたが、実にお見事でした。いやー、しかし近づいただけで浄霊できるとは。無敵ですね」


「ある意味そうかもしれない」


俺氏、無敵説浮上、俺Tsueeeeee……。

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