短編未満

プロローグ書き。

第1話

 なぜ、なぜ斃れないのか。


 意味がわからなかった。もう幾度となく魔術をぶつけている。うまく躱した物もあろうが、とはいえ。流れた血が傷の深さを物語っていた。


 なのに。震える脚で、剣を杖にしてまで立ち上がろうとする。否、立ち上がりつつあった。


 どうして─思わず漏れたつぶやきに、勇者は掠れた声で応えた。


「約束した、からな。それに、皆の、期待を背負っているから」


 ゾッと、背筋を冷たいものが駆け抜ける。勇者の背に、幾万もの幻影さえ見えた気がした。縛り、絡みつき、彼を立ち上がらせる操り糸の如き幻が。


「それでは、それではまるで─」

 ─願いのろいではないか。

 続く言葉は血反吐になって吐き出された。思考を飛ばした刹那に、剣で貫かれていたらしい。どこに力が残っていたのか、見事な一突きで。




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