ハロウィン・メリー・クリスマス
(*'ω'*)五章終了後。
テリー14歳、ソフィア24歳、メニー11歳、リトルルビィ12歳、アリス15歳。
―――――――――――――――――――
雪の降る街。
この時期はクリスマスに向けて大盛り上がり。だって、赤い服を着た魔法使いがくるんだもの。
靴下を作って飾って、
もみの木に飾り付けをして、
きらきら光るランプをつけていく。
良い子はプレゼントが貰えるよ。
赤い服を着た魔法使いさん、来るかな?
きっと来るさ。
だって、みんな良い子だもの。
子供達は赤い服を着た魔法使いが来るのを楽しみに待っている。
一人を除いて。
「薄情ダ……」
夢の中に隠れた子鬼が呟いた。
「十月ハ、アレダケオイラヲ、求メテイタクセニ……」
怖がる顔は一つもない。みんなわくわくした顔で赤い服を着た魔法使いを待っている。
「ミンナ、悪夢ニ迷イコメバイインダ!!」
切り裂きジャックが闇を広げた。
( ˘ω˘ )
――テリーが目を覚ました。
(んあ……? 今何時……?)
ベッドにあるはずの時計を探す。しかし、手についたのはドロシーの肉球。ぷにぃ。
「……にゃー」
「ああ、悪いわね……。……あ?」
テリーが眉をひそめた。
「ドロシー、起きて」
「ふみゃあ……」
「ふみゃあじゃねえ。部屋が」
テリーが片目を痙攣させた。
「血だらけだわ」
ベッドがギロチン台と血で囲まれている。
「うわあ、何……? ふわあ……。どうしたの……? 君、生理の血、大量すぎない……?」
「ばか。あたしの血じゃないわよ。こんなに血を出したら大量出血で死んじゃう」
テリーとドロシーがベッドから下りた。
「一体どうなってるの?」
「テリー、ほっぺたをつねってごらん。まるで痛みを感じない」
「本当だ」
「これは夢だ」
「クリスマス前よ。幸せな夢がいいわ」
「確かにこれは夢というより、悪夢だな」
悪夢と言えば、奴しかいない。
「リオンが何かした?」
「さあね。会いに行かないと」
「いいわ。行きましょう」
裸足で血の水溜まりを踏んでいき、扉を開ける。そこにはベックス家の廊下ではなく、赤いじゅうたんが敷かれた廊下が永遠と続いている。
「ああ、最低」
「メニーがいなくてよかったよ。いたら、トラウマになる」
「あたしはならないって?」
「君は慣れてるだろ」
「失礼な。あたしだって怖いわよ。足なんてぶるぶる震えてるんだから」
テリーはぺたぺたと進んでいく。
「何かしらね。不気味なのにリオンが全部仕掛けてるって思った瞬間に、ミックスマックスのキャラでも出てくるんじゃないかって思うのよ」
「HEY!」
「ほら、いた」
可愛いウサギのキャラクターが、仲間になりたそうな目をしてこちらを見ている。
「センスのないキャラクターがこっちを見てるわ」
「僕でもわかるよ。あのウサギはセンスないね」
可愛いウサギが出刃包丁を持って、姿を現した。
「「……」」
ウサギが微笑んだ。
「HEY!」
全力で走ってくる姿に、ドロシーとテリーが踵を返して走り出した。
「ドロシーーーーーーー!!」
「浮かべ浮かべ! ふわふわ浮かべ! さあさあ! 三月ウサギはどこへ行く! さあさあ行こうよ! 待ってるよ! いかれた帽子屋、待ってるよ!」
あたしを抱え、ドロシーが箒に乗って全速力で逃亡を始める。しかし、可愛いウサギは追いかけてくる。
「ひええっ!! 箒に追いつくってのか!?」
「ドロシー! もう少し早く!!」
「HEY!」
「クリスマスで浮かれている中で出刃包丁を持ったウサギに追いかけられるなんて、なんて悪夢だ!」
――その瞬間、ドロシーがはっとした。
「テリー、……まずい」
「え!?」
「僕は気づいてしまった。これは、今すぐにでもリオンを止めないと、とんでもないことになる……!」
ハロウィンと、クリスマス。
「このままでは……」
チュー。
「著作権侵害にかかわってくる!!」
ドロシーが全速力で箒を走らせた。
「規約違反だけじゃなくて、著作権侵害まで関わってくるなんて! この作品は呪われてるよ!」
「あんた、何わけのわからないこと言ってるの!?」
「クリスマスにハロウィンはまずいんだ! 本当にまずいんだ! 冗談抜きでやばいんだ!」
可愛いウサギが歌った。ヤドリギだぞ。キスだ。ユニークだね。
「やめろおおおおお!!」
ドロシーがテリーを抱えたまま高く飛べば、ウサギがその場で愉快に踊り始めた。
「テリー、こうなったら何としてもリオンを見つけ出すんだ!」
「リオンというより……」
いたるところから悲鳴が聞こえる。
「切り裂きジャックね」
「とにかく、メニーがいなくてよかった。ジャックの奴め。すぐに見つけ出してあの小さな尻を叩いてやる!」
「きゃああああああああああああ!!」
「今度はなんだ!?」
「はっ!!!」
ドロシーとテリーが振り向くと、リトルルビィが偽物のテリーに囲まれていた。
「リトルルビィ!」
「テリー! 暴れるんじゃないよ!」
「大変! あたしのルビィが!!」
「ちょっと、リトルルビィに触らないで!」
「何言ってるのよ! あたしのリトルルビィよ!」
「違う! あたしのよ!」
「あたしがリトルルビィを抱っこするの!」
「やめてえええ!」
リトルルビィが悲鳴を上げた。
「私を、奪い合いっこしないで!」
テリー同士で私を奪い合ってるなんて……!
「なんて悪夢なの!!」
じゅるり。
「わかった! 順番ね! まずはこっちのテリーから抱っこして!」
「ああ、あたしのリトルルビィ」
「きゃー! ……次はこっちのテリー!」
「ああ、リトルルビィ。可愛い」
「きゃー! ……次はこっちのテリー!」
「大好きよ。リトルルビィ」
「はぁあん! こんなにテリーに愛をささやかれちゃうなんて……!」
リトルルビィがくたりと脱力した。
「私、もう目覚めなくていい……」
「あああああああああああ!!! あたしの可愛いリトルルビィがやられたーーーー!!」
テリーがぎりっ! と歯を食いしばった。
「いいわ! あんたの仇はあたしが取る!! よくもリトルルビィを!」
「テリーに囲まれる悪夢を見るなんて、可哀想に!!」
「ドロシー、急ぐわよ! これは、ハロウィン史上最高に最低で最悪なまずい悪夢だわ!」
「言われなくても!!」
「ひゃああああああ!!!」
「今度はなんだ!?」
ドロシーとテリーが振り向くと、ソフィアがコスプレテリーに囲まれていた。
「別に、写真を撮ってくれてもよくってよ」
「撮らないの?」
「早くしてよ」
「ソフィー!」
「早く撮って!」
「ま、待って! はあ! 心臓が激しい! テリーがこんなにも積極的だったなんて!」
ソフィアがカメラを構えた。
「遠慮なく、盗んでみせよう。君のコスプレ姿を」
シャッターを切る。
「素敵素敵素敵素敵! そのポーズ可愛い!!」
「べ、別に、好きでやってるわけじゃないもん……」
「はあ! じゃないもん! もんですか! そうですか! 可愛いですね!! ぱしゃぱしゃぱしゃ!」
「そっちばっかり撮らないで! あ、あたしだって……腹チラくらいなら……いいもん」
「ぱしゃ」
「……パンチラも、よくってよ……?」
「ぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃ」
「ずるい! あたし、まだ撮ってもらってない!」
「次はあたしなのに!」
「あたしよ!」
「違うもん! ソフィーに撮ってもらうのは、あたしよ!」
「喧嘩しないで。テリー達」
鼻血を出したソフィアが輝かしく微笑んだ。
「全員撮り終わるまで、私は盗み続けよう」
「「ソフィー! もっと撮って!」」
「仕方ないな。ぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃ」
ソフィアがつぶやいた。
「くすす……。もう目覚めなくていい……」
「あのでかぱい女ああああ!! なんつー夢見てるのよ! あの役立たず!! あたしはあんな破廉恥な恰好しないわよ!」
「頼れる笛吹きも駄目だったか」
ドロシーがくるんと回って、違う方向へと進んだ。
「テリー、こうなったらキッドを探そう。彼ならこの悪夢を何とかしてくれるかも」
「そうよ! キッドがいるじゃない! 探せ! あいつを探すのよ!!」
「きゃー!!」
「ん?」
「今度はなんだ!? はっ!!!!!!」
ドロシーの目がくわっと開かれた。そこにいたのは、
「僕のメニー!」
「俺のメニー!」
「彼女になってくれー!」
「愛してるんだ!」
「いやー! 誰か助けてー!」
「しまった! テリー! メニーがいる!」
「ああ、男に追いかけられてるわね」
「助けに行かないと!」
「はっ。悪夢の中までモテてるなんて、うらやましいわね。メニーちゃん。……あいつは放っておけば?」
「つべこべ言わず、行ってこい!」
「え?」
「ふんぬ!」
ドロシーがテリーをぶん投げた。
「ドロシー! てめえええええええええ!!!!」
ひゅーん! どかーん! クリティカルヒット!!
「いだい!」
「「ぐは!!」」
足音がしなくなったことに気づき、メニーが胸を押さえながら振り返ると、男達が白目で気絶した上に、テリーが倒れていた。
「お姉ちゃん!」
「ぐ……ドロシー……お前だけは……許さない……」
「お姉ちゃん? テリーお姉ちゃんだよね?」
「はあ……。大丈夫? メニー」
「お姉ちゃん!」
メニーがテリーに抱き着いた。
「怖かった!」
「無事でよかったわ」
優しく受け止めて頭をなでる。すると、とことこと猫のふりをしたドロシーがつぶらな瞳でメニーの足元にやってきた。
「にゃん」
「あ、ドロシーも!」
(……てめえ、まじで許さねえからな……)
「お姉ちゃん、どうなってるの?」
「メニー、これはただの夢よ。これはあんたの夢で起きてることなの」
「夢?」
「そう。夢なの。だから、ハロウィンのお化けの切り裂きジャックが現れたって驚くことはないわ。夢なんだから」
「……そっか。……そうだよね。じゃないと、お姉ちゃんが空から落ちてきて、私を助けることなんてないもんね」
その手はメニーによってしっかり握られている。
「夢の中でも守ってくれるなんて、お姉ちゃんは私のヒーローだね」
「……キッドを探すわよ。きっとあいつを見つけたら、この夢から解放されるはずよ」
「キッドさん? いるのかな?」
「いるでしょ」
「だって、お姉ちゃん、切り裂きジャックってキッドさん嫌いなんでしょう? 悪夢の中に入れるかな?」
「……」
ドロシーを見る。あいつの場所まで連れて行ってよ。
「にゃー」
ドロシーが気配をたどり、とことこと歩き出す。
「メニー、ドロシーが歩いたわ。何かあるかも。ついていきましょう」
「うん」
とことこ。
「なんだか神殿みたいな場所についたわね」
「うん。なんだか神々しいね」
とことこ。
「あ、扉だわ」
「開けてみようよ」
テリーが扉を開けた。そこには大量のゾンビが並んで跪いていた。
「キッド殿下万歳!!」
テリーが扉を閉めた。
「ここじゃないみたい」
「でもお姉ちゃん、キッドさんいたよ?」
「いない。あいつはここにはいないのよ」
「……でも……」
メニーが扉を開けた。
「玉座に座ってる」
「キッド殿下万歳!!」
「キッド様万歳!!」
ゾンビ達が万歳をする先の神々しい玉座。足を組むキッドと、膝の上にはテリー人形。
「キッド様、あなたのためならば、我々はなんでもお持ちしましょう!」
「何をお求めですか!?」
「人肉ですか!?」
「それとも我々の血!?」
「決まっている」
キッドがふっと笑って、ゾンビ達に扉を開けさせた。テリーとメニーがぎょっと後ずさった。
「ごきげんよう。美しい姉妹よ。そして俺の愛しのテリー、早くそばにおいで。優しく抱きしめてあげる」
「あんた、ここで何やってるのよ」
「つまらない奴だな。せっかくの悪夢なんだぞ。楽しまないと」
「何が楽しまないとよ。言っておくけどね、これが終わらないとあんたの誕生日も来ないんだからね」
「永遠に今の年齢は嫌だな。テリーも大人になれないまま。ま、そろそろ飽きてきたし、行くか」
キッドが玉座から立ち、マントを翻した。
「出かけてくるよ」
「キッド殿下万歳!!」
ゾンビ達が感極まって泣き始めた。
「リオンは?」
「どうせお菓子の山だろ」
見上げた先にはキャンディの山。その上にもう一つ玉座があった。そこに、リオンの姿をしたお菓子の王様、切り裂きジャックが座っていた。
「おい、ジャック、そろそろお開きだ」
「ヤダ!」
ジャックがむすっとむくれた。
「コノママ悪夢ヲ彷徨ウガイイ!」
「ジャック、いい加減にして」
「ニコラマデ言ウノ!?」
ジャックがもっとむくれた。
「なんでこんなことしたの。せっかくのクリスマス気分が台無しだわ」
「クリスマスナンテ大嫌イ! ミンナ、オイラヲ忘レテ、赤イ服ヲ着タ魔法使イヲ求メテルンダ! 前マデハオイラノコトヲ求メテタノニ!」
「嫉妬か」
「嫉妬ね」
「困ったなあ」
「にゃー」
「ダカラ、忘レナイヨウニ刻ミ付ケテヤル!」
ジャックが玉座に座った。
「絶対ニ、目覚メサセナインダカラナ!」
「ああ、全く。困ったもんだ」
キッドがため息をついた。リオンを止めるには、俺やテリーがいればいい。
「でも、ジャックを止められるのは一人だけだ」
そっと、玉座の後ろに現れた。
「ジャック」
その声を聞いたジャックがはっとした。
「こら」
アリスがジャックを睨んでいた。
「何やってるのよ」
「ア、アリーチェ……」
ジャックが急に小さくなった。
「ハロウィンはもう終わったわよ? 何やってるの?」
「ダ、ダッテ……」
ジャックが俯いた。
「ミンナガ、オイラノコト、忘レルカラ……」
「あなたは十月のおばけじゃない」
「ダッテ……」
「来年まで、恐ろしい悪夢を考えるんじゃないの?」
「ダッテ……」
「せっかくジャックにプレゼント用意してあげたのに!」
ジャックがきょとんとして、アリスを見上げた。
「でも、残念。プレゼントはクリスマスになった瞬間に渡せるものよ」
アリスが微笑む。
「このまま悪夢が続くなら、クリスマスは一生来ない。私もジャックに、プレゼントを一生渡せないわ」
「……プレゼント、何?」
「何が?」
「ナニ、用意シテルノ?」
「それはクリスマスのお楽しみよ」
「教エロ」
「嫌よ」
「アリーチェ、怖ガラセルゾ」
「あら、やれるもんならやってみなさいよ」
アリスが玉座に座った。
「怖がらせたところで、プレゼントは渡さないわよ。だってクリスマスじゃないんだもん」
「……」
「ジャック」
「……」
「ねえ、こんなこと良くないってわかってるでしょ? ハロウィンは終わったのよ?」
「……」
「ね。クリスマスになったら、私に会いに来てくれる?」
とっておきの悪夢を用意して。
「そしたら、プレゼントをあげる。クリスマスはね、友達同士でプレゼント交換をするものなのよ」
ジャックは私に恐ろしい悪夢を。
私はジャックに最高のプレゼントを。
「ね? いいでしょう?」
アリスが言えば、ジャックがこくりと頷いた。
「いい子ね。ジャック」
アリスがジャックの頭を撫でた。
「それじゃあ、私達をこの悪夢から覚ましてくれる?」
「……アリーチェ」
「ん?」
「オイラノコト、嫌イニナッタ?」
「何言ってるのよ」
アリスはヒマワリのような笑顔を見せる。
「大好きよ。ジャック」
それを聞いたジャックは、へにゃりと頬を緩ませて、悪夢を吸収した。
黒が白に。赤が白に。まるで悪夢の世界から白い雪の世界へ。
アリーチェにあげる。この悪夢。
「ちゃんといい子にしてね」
アリスがプレゼントの包みを見せた。
「悪い子には、あげないからね」
白くなる。
(*'ω'*)
リオンがはっと目覚めた。目玉を動かせば――うつろな目をした姉が、そこに立っていた。
「……」
姉は無言で睨んでくる。リオンは目をそらした。
「……いつから……いた……?」
「さあな。無意識のうちにここまで来ていたようだ」
「夢遊病かよ……」
「黙れ」
注射を乱暴に刺される。
「痛い!」
「毒の暴走を抑えられんとは、我が弟にして情けない」
針を抜く。
「諸々の関係者に謝っておくんだな。あたくしは塔に戻る」
「……閉鎖病棟までご苦労なこった」
「悪夢を見せたのはお前の毒だ」
チッ。
「この愚か者」
「わかったよ。悪かったよ。ジャックにはちゃんと言い聞かせておく」
「コントロールできる力を身に着けるまで、退院は無しだ」
クリスタルがゆっくりと下がっていく。
「そういえば、今日は我が弟の誕生日パーティーをやるそうだ」
「退院は無しなんだろ?」
「ああ。来るな。……だが、キッドも夢の中までは文句は言わないだろう」
「……はあ」
「プレゼントを忘れないように。……あたくしの分も」
「わかったよ……」
「よろしい」
美しく微笑んだクリスタルが、闇に溶けるように消えていった。
人々が悪夢から目覚めた。
なんて清々しい朝だろう。
それにしても変な悪夢だったな。なんというか、願望が願いすぎて逆に困っちゃう。そんな変な悪夢だった。
さて、ハロウィンは終わった。
皆に待ち受けているのは、楽しい愉快なクリスマス。
赤い服の魔法使いがやってくるよ。
プレゼントを渡しにやってくるよ。
でも悪い子は気をつけて。
赤い服の魔法使いは良い子にしかプレゼントを渡さないの。
だって、悪いことして良い思いをするなんて不公平だもの。
だから赤い服の魔法使いは選別するよ。
プレゼントを持って、あなたの元へ。
トナカイが引くソリに乗って、夜空に飛びながらこう歌うの。
ハッピーメリークリスマス!
ハロウィン・メリー・クリスマス END
『ってことがあって、去年は大変だったね』
「あったわねー」
やはり去年のジャックは国全体で暴走していたようだ。なんて恐ろしい毒なのだろう。ニクスにまで被害が及んでいたなんて。
『あの時はおじさんとおばさんの悲鳴で目を覚ましたよ』
「ニクス、どんな夢を見たか覚えてる?」
『もちろん。でも何ていうのかな。あの時の悪夢はちょっと不思議だったの。お父さんと、おじさんが、あたしの目の前で、あたしの自慢話してた』
「……」
『恥ずかしくて、やめてって言ってるのに、全然やめてくれないの。お互い、胸を張って、ニクスの親になれて誇らしいって……』
ニクスがくすくす笑う。
『なんか、方向性が間違ってる悪夢だった』
「……」
『テリーはどんな夢見たか覚えてる?』
「……さあ? どうだったかしら。忘れちゃったわ」
『怖くなかった?』
「……大丈夫よ。ありがとう」
テリーが小さくため息をついた。
「今年はどんなクリスマスになるかしら」
『クリスマスか』
ニクスが訊いてきた。
『テリー、今年のクリスマスはどうやって過ごすの?』
「……んー。そうね……」
『今年もやるんでしょ? キッドさんのお誕生日パーティー』
「あー……」
去年は大変だったわ。
「今年はどうなるかしらね」
去年を思い出す→ほしいのは王冠と君(キッド)12/24公開予定
今年を過ごす→ ホリデイはあなたとワルツを(ニクス)12/22公開予定
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