五章目あらすじ

『五章:おかしの国のハイ・ジャック』


 四章目から一年とちょっと。季節は9月。14歳になったテリーは反抗期を迎えていた。メニーとテリーの喧嘩に怒ったアーメンガードがテリーに『貴族ということを忘れて生活して、貴族の有難みを分かって戻ってきなさい』と10月いっぱい屋敷から出るように命令を下す。しかし、10月はハロウィン祭が開催され、その二日前には無差別大量殺人が城下町で行われるため、テリーが大反対。アーメンガードにすがりつくが、屋敷から追い出されてしまう。


 そこで、リトルルビィが働くお菓子屋『ドリーム・キャンディ』で働き、キッドの家で宿泊することが決まった。いやいや9月30日に屋敷から出るテリー。テリーは殺人事件を回避するため、犯人のアリーチェ・ラビッツ・クロックを探しながら日々を過ごすことになる。


 自分をニコラと名乗り、ドリーム・キャンディで働くリトルルビィとアリスと共に過ごしていく日々。様々な事件が起きていく。出張に出かけていたはずのキッドが帰ってきたり、メニーが仲直りをしに突撃してきたり、テリーを死刑にした張本人、リオンが現れたり。


 リオンは、とても重たい悩みを持っていた。

 キッドをコンプレックスに思っている彼は、キッドと同じことをして彼を見返そうと考えていた。そのためには、城下町に詳しい人物が必要であった。テリーを妹としてスカウトするリオン。テリーは上手くいけば死刑回避に繋がると思い、それを承諾。これにて、レオとニコラのコンビが結成された。


 次第に濃くなっていく悪夢の影。そんな中、アリーチェが見つかる。『Alice』はアリーチェ、アリスと読めるため、アリーチェは自分をアリスと呼んでいた。


 しかし、変な違和感を感じるテリー。本当にアリーチェのような子が事件を起こすのだろうかと疑問を抱いたところで前編が終了する。


 後編。


 アリーチェを見つけたテリー。なぜ彼女が事件を起こしてしまったのかを突き止めるため、さらに深みへ入っていくことになる。


 しかし、入れば入るほど悪夢が激しくなっていく。テリーはある晩、切り裂きジャックの悪夢に襲われてしまった。キッドが生きていない現実は、自分が死ぬ未来しかない。混乱と動揺に襲われてしまう。目を覚ますと、偶然、キッドがうなされたテリーを慰めに部屋に来ていたため、激しくキッドを求め始める。触れ合いをしているうちに、再び夢へ入ってしまうテリー。その中では、ジャックと、紫の魔法使いが待っていた。深みに入ろうとしたせいで、ジャックの姿を見た記憶を封印させられてしまう。


 その晩を忘れて目が覚めたテリー。目の前にはキッド。触れ合ったことを忘れていたテリーにキッドが怒るが、ジャックのせいだと知ると、優しく激しくテリーを愛でるのであった。


 リオンの嫉妬とキッドの嫉妬は、時が流れるごとにエスカレートしていく。ある日、テロ事件が起き、テリーとリオンも巻き込まれてしまう。何かをしようとしていたリオンの前に、キッドが事件を解決してしまった。悔しくて仕方ないリオンはとうとう爆発してしまう。テリーを連れさろうとした矢先、キッドと取っ組み合いになり、収まらない喧嘩が始まってしまう。二人のお目付け役のビリーが来たことによって収束されたが、怒りは収まらない。リオンは帰り、テリーはキッドの慰め役として側に置かれた。


 翌日から悪夢が激しくなっていく。

 追い詰められていく人々。

 テリーがリオンとの待ち合わせ場所に行くが、リオンはいない。アリスは部屋に引きこもってしまった。

 また翌日、待ち合わせ場所に行くと、不思議なことにとても寒くなり、とても眠くなる現象が起きた。身を委ねれば、テリーはリオンに会うことができた。リオンのアドバイスの元、動いていくと、どんどん謎が解かれていく。アリスにも会え、そして、リオンが心に病を抱えていることを知ってしまう。


 精神に異常をきたしている重症患者と、テリーは毎日を過ごしていた。


 事実を知ったテリー。そして、それだけではなく、ドロシーから貰い受けた魔法で記憶を思い出し、封印されていた記憶の一部だけを思い出すことができた。そこでは、リオンの発した言葉の中に、矛盾点が存在していた。リオンに付きつければ、リオンが発狂を始め、レオとニコラのかくれんぼが始まった。


 ニクスに励まされながらも、レオを探すニコラ。ようやく見つけたレオから、真実を教えてもらう。彼を助けるため、目を覚ました時に集合していたキッド達と共に病院へ向かう。


 レオとジャックが一つになる時、リオンとなる。レオとジャックが和解したことにより、毒は浄化されていった。


 悪夢はなくなり、城下町に人の気配が蘇った頃、ジャックが来なくなった不安から、アリスが自殺未遂をしてしまう。テリーがアリスを助けるべく、アリスの大好きだったキッドを呼び、彼女の死にたがりの考え方でどう生きていくかを相談した。その結果、50歳までは様子を見るということになり、アリスはあと35年生きていくことを決意した。これにて、アリスが事件を起こすことはなくなったと思われた。


 出勤日、ハロウィン祭の準備で盛り上がる中、事件は起きてしまった。無差別大量殺人が行われるのは、アリスを慰めた日ではなく、今日であったのだ。日付を間違えたことに焦るテリー。爆発が起こり、死んでいく人々。さらなる中毒者が現れ、テリーを襲う。


 しかし、キッドとリオン、リトルルビィ、ソフィア、アリス、テリーが助けた者たちがテリーを助け出す。ジャックにお別れを伝えるアリス。あと35回会えることを伝えれば、ジャックはアリスに手を振った。さようなら。また来年。の言葉を残して、悪夢は消えた。


 ボロボロの城下町を兵士やリオンやキッド、そして、住民たちの力により持ち直し、無事にハロウィン祭は迎えられた。

 忙しいお菓子屋の前に色んな客が訪れる。働くテリーに安心するベックス家の者たち。レオとニコラの間に知り合った者たち。そして、ニクスまでも訪れ、テリーは幸せに包まれていく。


 しかし、キッドとの大事な思い出が思い出せない。切なく、もどかしい気持ちを抱えたまま、打ち上げられる花火を見て、ハロウィン祭は幕を閉じる。


 後日、城でパーティーが開かれた。アリスを連れて参加するテリー。そこでリオンとの踊ることになる。


 踊っていくうちに彼のことを兄として見つめる自分がいることを感じる。恋心には穴が空いたが、その穴は友情という形で塞がれた。


 パーティーから消えたアリスを追っていくと、不思議な塔にやってくる。そこで、謎の姫に襲われてしまう。無事に逃げることは出来たが、足にはゴムのような銃弾が当たったあとが残された。


 後日、テリーはニクスに手紙を送った。そこには、その後の皆の様子。そして、トラウマでやっていなかったヴァイオリンを、テリーが始めたとの文字があった。


 この世界はいかれている。

 まともな人なんて存在しない。


 テリーがヴァイオリンを構えて、物語は終わる。


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