第8話

「佐々木さん!」


 橘が佐々木にかけよった。だが抱き起してみても、佐々木はぐったりとして反応がなかった。


「遅いよ」


 首だけ持ち上げて、朝倉涼子が不満げに喜緑江美里を睨みつけた。


「お前ら…佐々木がお前らに何をした!何でこんなことをしやがる!」


 宇宙人二人は目を合わせ、曖昧に笑うだけだった。



「佐々木さん!佐々木さん!目を開けて!佐々木さん!」


 橘は泣きながら佐々木を揺すり続けていた。だが橘がどんなに声をかけても佐々木は苦しそうに呻くだけだった。


「手を出せ」


 振り返ると藤原が左手で佐々木の手を掴み右手をこっちに差し出していた。何をするつもりだ。


「逃げるんだよ」


 俺はとっさに藤原の手を掴んで目を瞑った。その後、飛行機の離陸した瞬間みたいな軽い浮遊感とめまいがした。

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