二章 レブナント編
プロローグ
私は冒険者をやっている。
普段はこんな辺鄙な村ではなく、都市の住人からの依頼や迷宮探索をこなして金を稼いでいる。
仕事をほっぽかして村に来た理由は簡単だ。そこが私の故郷であり、数年ぶりに両親や妹の顔が見たくなったのだ。月に一度位の頻度で手紙のやり取りはしていたが、やはり家族の温もりは恋しいのだ。私がちゃんとうまく生きている所も見せてやりたかったし。
楽しみにしていた帰郷だが、村で私を待ち受けていたのは涙に濡れた母の顔だった。
何があったのかと尋ねてみると、今朝から妹の行方がわからないのだとか。数年前にもそんな事があった。妹は前に一度、森で迷子になっていた。偶然、怪我ひとつ無く帰って来たのだが、その時私は両親と妹には十分説教した筈だ。
今回は両親の注意不足ではなく、突然居なくなったらしい。朝起きたら姿が見えずそれっきりとのこと。
当然の事ながら、私は妹を探すことにした。今日一日探して見付からなかったら、冒険者ギルドに依頼して死体の調査をしてもらおう。金は惜しまないつもりだ。
「ああ、何を考えているんだ、私は」
勿論、妹は無事だと信じている。
今日何としても見付け出す。
私はまず、妹が一人で出歩いた可能性を考える。彼女はもう十二歳。流石に一人で危険を犯したりしない筈だ。人為的な介入があったと考えるべきか。誰が?
私は村中を聞き回った。小さな村だが、それでも千人以上の人々が暮らしている。
何人か目撃者がいると思っていたが、しかし、誰一人今朝に妹を見た者は居なかった。代わりに、皆一様にこう言うのだ。村の外れにある屋敷が怪しいと。あそこには悪魔が住んでいて、度々村人を拐っていくのだと。
私は、その信憑性の欠片もない話を幾度と無く耳にすることで、それが真実味を帯びている話の様に思えてきた。
その時私は焦っていた。
だからか決断は早く、浅慮だった。
早朝、私は村の片隅にある寂れた屋敷へと乗り込んだ。
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