第2話 サピエンス
稀な成長を遂げた種かも知れない。a銀河内でもだ。しかしそれが仇となった。自己複製できる物質として突出してしまったために、際限なく増殖し、また、o2元素をエネルギー源としたために活動性も高かった。大量のエネルギー摂取を必要とした種なのだ。過去の惑星eの画像を拡大して見てみよう。まるで細菌が巣食うように表面にひろがっている。これがホモS種だ。蠢いている彼らが惑星eのエネルギーを食っているのがよくわかる。
「確かに彼らを淘汰するものはもう惑星eには無くなってしまっている」
彼らは増殖をコントロールできなかった。増殖やエネルギー摂取をコントロールするには、惑星eは大きすぎた。物質維持をするために、惑星eの埋蔵エネルギーを搾取し続け、その限界から争奪による破壊行為、また負の連鎖として汚染物質の放出など、自滅に向かった記録がある。
「そのたぐいまれな想像力とは裏腹に、物質維持のために自らを追い込んだようだね。活動性が高すぎて調和がとれなかった?」
o2元素を活動エネルギーにしている物質によく見られるパターンだ。
「o2元素に関してはt恒星の核融合エネルギーとの関係データもあるようだね」
前に一端を報告したが、ここ数億(unv)年でt恒星の核融合エネルギー値の低下が見られる。それが、gグリーン種のエネルギー合成に影響を与えている。gグリーン種は、その核融合エネルギーからo2元素を合成することで活動してきた種なんだ。そのおかげで惑星eの流動層にo2元素の比率が高まり、そのo2元素をエネルギー源とする最終系がホモS種であったんだ。
「t恒星の核融合エネルギーが低下しているとすると」
当然gグリーン種のエネルギー合成も弱くなる。放出するo2元素の量も減る。gグリーン種は小型化しその種の数も絶対数も減らしていく。かつて惑星eを覆い尽くすほどに繁栄していた種の層は薄くなり、限られた箇所に偏在するだけとなった。
「o2元素濃度の低下は他にも深刻な影響をもたらしている?」
o2元素はo3元素層となり、宇宙放射線から自己複製物質のプログラムを守ってきたが、o3元素層も無くなりつつある。
「他の惑星同様に、惑星eも宇宙放射線の降り注ぐ星になりつつあるということか」
そうだ。残念だが。それは自己複製プログラムにダメージを与えることなるんだ。
「自己複製能力の低下?変質?ロス率の拡大?」
まだ、あるんだ。
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