異世界最序盤に闇の力を選んだら!
半兵阿
第1章 闇の力と少女
第1章 プロローグ
「おい! どうしてそんな簡単に目を開ける のを諦めてしまうんだ! もっと熱く起きろよ!!」
ベッドから少し離れた、テーブルの上にあるスマホからアラーム音が鳴り響く。
あぁ……もう朝か
「おい! どうしてそんな簡単に目を開ける のを諦めてしまうんだ! もっと熱く起きろよ!!」
うざっ。
自分で選んだアラーム音だが、リピートし続けると、思ったよりうざったい。仕方なくベッドから上半身を乗り出し、テーブルの方に手を伸ばす。しかし届かずにベッドから落ちてしまう。
いてて……あれ? 俺の部屋畳なんだけど床が硬ぇな。
「おい! どうしてそんな所で寝てるんだ! 大丈夫か!」
アラーム音とベッドから落ちた衝撃によってイライラがピークに達した。
「うっっっっさい!!!」
スマホの方に怒鳴り付けると1人の男が心配そうな顔をして立っていた。
誰っ!? そう驚いている間に男は
「そんな……なんかごめんなさい……」
と言って悲しそうに去っていった。
「あっ! 待っ、ごめんなさ」
戸惑いながらも罪悪感を感じて謝罪をしようするが、周囲の光景が目に入り絶句する。
レンガの街道に人や、犬っぽい顔をした全身毛だらけの二足歩行生物が行き交い、馬や見たことない生物が馬車を引いている。
「なっ、これって異世界!?」
ってことは俺は転生した……えっ待って俺ベッドから落ちて死んだのか!? いや流石にそんな感覚じゃなかったし、寝巻きのまんまだ。
それなら異世界召喚?まさかさっきのおっさんが召喚して!? ……いや流石にそれはないか。
ま、何はともあれ異世界!! バイト生活から抜け出して冒険! とりあえず冒険者ギルドみたいなとこ行って、装備整えて、モンスターのバトル、これから俺の物語が!!
異世界に来たという高揚感にかられ、街の探索をしながらその場を後にした。
〜〜〜〜〜
「詰んだ」
ボロボロな姿でギルド集会所内の隅に座り込み、ぽつりと呟く。
俺はあの後すぐに、冒険者ギルドという集会所を見つけ、冒険者として登録した。早速、モンスターの討伐依頼を受ける。内容は街の外に増えたスライムを減らしてくれとのこと。
意気揚々と出発しようとすると、ギルドの係員から、例え弱いモンスター退治といっても武器や防具を揃えたほうがいいと忠告される。しかし、装備を整えようにも財布はないし、そもそも通貨が違った。
ま、なんとかなるだろ
異世界に来たからといって、身体に目立った変化はなく、これといった特別な能力も感じない。それでもなんとなくモンスターには通じると思い、街の外へと向かった。
街の門から出ると、辺り一面の草原が広がり、奥の方に森が見えた。
あぁ、いいね大自然。これぞ異世界!
景色を堪能しながら草原地帯を歩いていると、1匹のスライムを発見。大きさはサッカーボール程度につぶらな瞳が2つ。とりあえず蹴っ飛ばしてみると、5m程吹っ飛び、ぽよんぽよんと音を立て留まり、ケロッとしてる。
全く効いてる気がしねぇ……
その後も暴行を加えるが、一向に倒せず。そうしてる間に、ゴブリンの群れに鉢合わせてボコボコにされ、命からがら逃げ切って来た後だった。
「少しくらい夢見させてくれって、ハァ」
この世界でどう生きてく? というかこの世界の通貨がないと今日の飯も宿も取れないし…ここでも何かバイトとしないといかんのかぁ
「あのすいません、もしかして駆け出しの冒険者さんですか?」
考え込んでいると誰かから声かけられた。
顔を上げるとそこには綺麗な白髪ショートに、フードが付いた清楚な白い服で、メガネをかけた美少女。膝に手をついて屈むようようにこちらの顔を覗いてる。
「あっはい、今しがたモンスターにボコられたところです。ハハ」
枯れた笑いしながら返答をすると、少女も苦笑いをする。
「それは災難でしたね。でもよくある話ですよ、初めての冒険だけどモンスターを倒せない。 倒せないから強くなれず、お金も増えず、装備も買えない。この悪循環で毎日生きていくのがやっと! っていう人も」
あぁ正にその通りだ。
「でもそんな初心者冒険さんに耳寄りな情報があるんです」
「へぇ……そりゃ聞きたいですね……今はもう藁にもすがる思いですから」
心身共にボロボロで、興味本位で適当に答えると、少女は顔をずいっと近づけ熱弁する。
「それなら朗報です! 誰でも簡単に強くなって、モンスターを倒せて、お金も増やせる方法があるんです!!」
「えっ!? あっ、そ、そんな方法が」
言葉よりも少女の変貌ぶりに驚く。
少女はニッと笑うと得意げに語った。
「えぇ、それは……闇 の 力 です」
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