星屑のエトランゼ
武田修一
第1話
星が散らばった海が目の前に広がる。
「きれいだね」
あなたが言う。私はそれに対してひとつ頷いた。あなたは、ばしゃりと音を立てて、その海を歩く。歩くたび、水面が揺れるたび、星がゆらいであなたを消しそうになる。そうならないように私はあなたを追いかけた。
追いかけても、さっさと進んでしまうあなたを私は必死で追いかける。どこまでも続く星の海は、ほんとうにあなたを消してしまいそうで、怖い。
声の出し方もしらない私は、あなたを声で引き留めることもできないのだ。だから、必死に走って手を伸ばす。その手があなたにたどり着く前に、すっと過ぎ去ってしまうのだけど。
「ああ………」
あなたが不意に止まる。そして、くるりとこちらを向いた。
「さあ、生存戦争しましょうか」
私はひとつ頷いた。
「ちゃんと帰ってきてね」
リン、と鈴の鳴る音と共にあなたの声が響いた。
星の海が、青く暗い空が、あなたが、私が。全部崩れていく。思わずあなたに手を伸ばしそうになるけれど、その手を必死に自分で止めた。これは私のため、あなたのためだったから。
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