あなたにパナケイアの祝福を

尾岡れき

 それが夢であることにキサラは自覚があった。だからこそ、この時は意味など考えもしなかった。


――遺伝子は太古の記憶を保存するか?


――は?


――興味深いと思わないか?


――興味ないですね。


――仮にだ、遺伝子の情報の偶発の一致により、お前を再起動させることができたら、どうする?


――それはあなたじゃない。あなた以外に興味はない。


――私は予告するよ。お前を起こすのは私だ。


――それなら、その時は僕があなたの唇を奪ってあげるさ。


――楽しみだ。


 曖昧として漠然として、意味も分からない。ぼやけた空間で人影だけの会話。おぼろげなイメージだけを消化不良に残し、キサラはそこで目を覚ました。

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