あなたにパナケイアの祝福を
尾岡れき@猫部
1
それが夢であることにキサラは自覚があった。だからこそ、この時は意味など考えもしなかった。
――遺伝子は太古の記憶を保存するか?
――は?
――興味深いと思わないか?
――興味ないですね。
――仮にだ、遺伝子の情報の偶発の一致により、お前を再起動させることができたら、どうする?
――それはあなたじゃない。あなた以外に興味はない。
――私は予告するよ。お前を起こすのは私だ。
――それなら、その時は僕があなたの唇を奪ってあげるさ。
――楽しみだ。
曖昧として漠然として、意味も分からない。ぼやけた空間で人影だけの会話。おぼろげなイメージだけを消化不良に残し、キサラはそこで目を覚ました。
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