第46話 咲化雌(サケメ)
「あぁぁぁあ…ア…サ…さぁぁク~ラ……ぁぁぁぁあ」
「あっ!? なんだオマエ喋るのか?」
「あぁ…さぁ~く…ラぁぁ」
「バァァァァァーーー」
右手の掌がバックリと避けて中から黒ずんだピンクの触手がズルッと飛び出す。
「なっ!!」
一瞬反応が遅れたユキの肩に触手が牙を立てて喰らいついた。
「ユキ!!」
キリコがリボルバーを構え速射する。
鱗を持たない触手は弾丸を浴びて、すぐに千切れたが、食いついたままの先端はビタンビタンとユキの肩で暴れたまま離れない。
カイトがユキに近寄り、村雨をゆっくりと触手の頭部に刺しこんでいく…
「霊気を送れば…いいんだろ、ゆっくりとよ」
間近で見るユキの顔、真っ赤な瞳に縦縞の文様が浮かんでいるが、ユキである。
「オマエ…ユキなんだよな?」
カイトが確認するように話しかける。
無言でカイトから視線を
「退がってろ…」
ボソリとユキが呟き、歩き出すと肩から触手がボトッと落ちてグズグズと崩れた。
「邪魔だ…」
「ユキ…」
カイトの声が届いたのか…聞こえないのか…ユキは真っ直ぐに
太刀の間合になると、迷いなく
「どうせ、こっちからも出るんだろ?」
ニタッと笑って
「ココからも出るのか?おい、よぉ!!」
その太刀をシュンッ…シュンッと左右に振り抜き、両足も斬り払った。
ゴトンッ…
足を失った
転がった手足の斬り口から小さなミミズのような触手がウゾウゾと無数に這い出して身体を探して蠢く。
「気持ち悪りぃな…ホントに嫌いだよ…オマエもミミズもさ」
転がった右足に太刀をズズッと刺し込み、一呼吸して霊気を送り込む。
ビクンと足が跳ねるように動き痙攣するようにピクピクと震え…すぐにグズグズと崩れた。
左手…左足…と同じように霊気で再生不可能な状態にしていく。
「その右手からは、まだ出るのか?イクトよぉ」
太刀の切っ先をアスクレーピオスにピシッと向け、タンッと床を蹴って右肩を突き刺す。
「これで、おあいこだよな…俺も肩をやられたんだから…クククッ…ん? あぁスマン…オマエは両の手足を捥がれたんだったな…忘れてた、おあいこじゃねぇや…」
堪えきれないといった込み上げる笑い。
愉悦に浸っているであろう表情こそ見えないが、その後ろ姿、
「まるで…デモンね」
ビクニがボソッと言葉を漏らした。
「黒い羽でも生えるんじゃないか…」
ケンが嫌悪の表情で答える。
ボンッとアスクレーピオスの右腕が肩から宙へ飛んでボトンと床に転がった。
「なっ? どうやった? 肩を太刀の背で吹き飛ばすほどの力があるのか」
カイトが信じられないと言った声をあげる。
「違うわ…あの太刀は両刃なのよ、斬り返す手間がいらないようにね腹はカミソリのように鋭く、背は
ビクニがロビーの階段に腰を下ろしタバコに火を点け、アゴと指で「退がれ」と皆に促す。
「後は…見てるだけしかできないわ…」
「ユキは…あの子は、アタシ達の仲間…味方なんだよね?」
キリコがビクニに尋ねる。
「さぁね…あの子に聞いてみなさいな」
ビクニが指さしたユキは、手足を捥がれたアスクレーピオスの顔面を踏みつけている。
「おい、後は口からだろ? それとも目からか? 早くだせよ!! 1か所ずつ
(そうさ、もう生き返らないように…)
ユキの真っ赤な目から涙が頬をつたっていた。
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